前提
超かぐや姫!の本編後の二次創作。かぐやとヤチヨの二人にボディがあるIF設定です。一応続きですが、この話だけでも楽しめます。
◆
夜。
寝る前の歯磨きを終えてリビングに戻ると、かぐやとヤチヨが何やら揉めていた。
「明日はかぐやが添い寝当番でしょ! ヤチヨが朝ごはん!」
「先週耐久配信した日に変わってあげたでしょー。明日は私に添い寝当番譲ってよ~」
あ、当番制まだ続いてたんだ……
以前言っていたことだが、二人は片方が朝食を作って、片方が私の添い寝をして起床時間まで寝かせる、というのを当番制で持ち回りしているらしい。
思考が同期しているから平等に割り振れているのかと思ったらそういうわけでもなさそう。
平行線を辿る言い争いの末、二人は同時に携帯ゲーム機を取り出した。
「決着をつけるしかないね!」
「望むところだよ〜!」
二人が起動したのは、流行っているモンスター育成対戦ゲーム。
育てたモンスターで編成を組み、対戦で勝敗を決めるというもの。
二人はそれぞれ端末を操作し、対戦の準備を整える。
だが、互いに対戦メンバーの画面で見せ合ったその段階で、かぐやが大きなため息をついた。
「……うわー、負けたかー」
「やったー!」
かぐやは対戦開始のボタンを押す前に端末を置き、負けを宣言した。
「え、まだ始まって無かったんじゃ……?」
私が思わず口を挟むと、二人が説明してくれた。
「このゲーム、対戦始まる前の段階で対戦の勝敗はほぼ決まるんだよ」
「最適解がほぼ決まっているゲームだからね~。プレイミスが無い限り、使う技とか交代の有無とかも含めて勝てるか考えると~」
「乱数次第なところもあるけど、今の対戦はどんな乱数引いても無理な組み合わせがあったから、まぁかぐやの負けかなーって」
今の一瞬で互いに計算して勝敗が決まったってこと?
どんな乱数を引いたとしてもって……どういう思考速度なの。
「えー、なんかもったいないなぁ。実際にやってみたら変わるかもよ?」
私が促すと、二人は顔を見合わせて肩をすくめた。
なんだその態度腹立つな。
これだから素人は、みたいな顔すんな。
「彩葉がそういうなら、やってあげるけど〜」
「結果は変わらないよ〜?」
二人は再び端末を手に取り、対戦を開始した。
そして数十分後。
「あーあ、やっぱり負けたー」
「急所が二回発動したから想定よりも圧勝しちゃった~」
二人の予想通り、かぐやがヤチヨに敗北するという結果に終わった。
横で見ていたが、二人は迷うことなくコマンドを選択し、互いの手を読み合っていたとしか思えないような動きをしていた。
そして事前の計算通り、ヤチヨが勝利を収めたのだった。
「……いや、普通に凄い」
二人が記憶や思考をリアルタイムで同期しているからこそ見られた神業みたいな対戦だったが、人間離れした演算処理能力に驚くしか無い。
改めて、ツクヨミを作ったその頭脳に驚くことになった。
「じゃあ約束通り、明日はかぐやが朝ごはん担当ね~。和食でいいかな」
「え~、ヤッチョはパンの気分だな~。トーストとー、ベーコンと~」
「えー、それこそ先週ヤチヨがそれ作ったじゃん。和食がいい~」
今度は朝食のジャンルで揉め始めた。
そして二人はまたゲームを手に取り、対戦の準備を始めようとする。
「いや、そこまでゲームで決める? じゃんけんとかでパパッと決めれば?」
私が提案すると、二人はまた顔を見合わせて肩をすくめた。
なんだその態度腹立つな。
これだから素人は、みたいな顔すんな。
「「それだと決まらないんだよ〜」」
ハモった二人は端末を置いて互いに向き直り、右手を振り上げた。
「「じゃーん、けーん、ぽん!」」
かぐやがグー、ヤチヨがグー。
「「あいこで、しょ!」」
かぐやがチョキ、ヤチヨがチョキ。
「「しょ! しょ! しょ!」」
パー、パー。
グー、グー。
チョキ、チョキ。
ハイスピードで繰り返されるじゃんけんは、何度やっても見事に同じ手が飛び出し、一生あいこになり続けていた。
「「……ね?」」
数十回連続であいこを出した後、二人は同時に言った。
同期していれば当然、同期を切ったとしても、相手が何を出すのか予想できるということか。
「……なるほど。そりゃ決まらないわ」
私が納得すると、二人は再び端末を手に取って対戦を再開した。
さっきのような無言の秒殺劇が始まるんだと思って待っていると、今度は普通に対戦が始まった。
あ、普通に戦うこともあるんだ、と思って何気なく二人のゲーム画面を眺める。
だが、一向に対戦が終わる気配がない。
「……なんか凄い長引いてない?」
画面のモンスターは互いに攻撃を当てず、ひたすら回避、強化、防御、自己回復を繰り返していた。
「いや~、何か彩葉がせっかく見てくれてるからカッコ良く勝とうと思って!」
「最大火力で一発で決める魅せプをしようとしたら、なかなか終わらなくってぇ~」
どうやら私が興味を持ったことに気を良くして、私にアピールしているらしかった。
しかし、その「魅せプレイ」をしようとする動きすら互いに読んでいるためか、対戦は泥沼化している。
あまり詳しくない私が見ても分かる。今、一連のコマンドが一周した。千日手だ。
「「……あー」」
二人も気が付いたようだ。さっきまで楽しそうにしていた顔が虚無になっている。
さっさと止めれば良いものを、この二人は既に意地になっていた。
「や、ヤチヨ、そろそろ攻撃してよ〜! このままだと終わらないじゃん!」
「かぐやから仕掛けてよ〜! ヤチヨはカウンターでカッコよく勝ちたいんだから!」
「絶対ヤダ〜! 動いた方が負けるの目に見えてるし!」
互いに引き際を見失っている。
画面の中では限界まで強化されたモンスターがずっと睨み合っている。
「……ふぁ」
私は小さく欠伸をした。
「私、もう寝るね」
「え、えぇっ!? ちょっと待って彩葉〜!」
「せ、せめてヤッチョの華麗なプレイングを~……」
「おやすみ。ほどほどにね」
私が立ち上がって寝室へ向かうと、背後から悲痛な叫び声が聞こえてきた。
「あーっ! ヤチヨ今のずる! ずるでしょ! 汚い忍者さすが汚い!」
「かぐやが余所見したのが悪い! ってことでヤッチョの勝ちで終了~!」
「駄目! リベンジ! 今度は瞬殺してやる!」
結局、熱くなった二人は私が寝るまで布団に来ることはなく、久しぶりに大の字で眠ることができた。
翌朝、目にクマを作った二人にトーストに焼き魚を挟んだ謎朝食を差し出された時は、止めとけばよかったと後悔した。





















