SIDE:フェルディナンド
今回もまたローゼマインが言っていた通りの場所で、礎について暗号で書かれた手紙が見つかった。
__この筆跡は確かに前神殿長とゲオルギーネのものだ…。これでもうローゼマインが未来の情報を知っているということを、疑いようがなくなったな…。
たまたまこの手紙が見つかり、暗号を解読できたことをきっかけに、礎について情報の真偽を調べてみたら、手紙にあった通りの場所で礎への入り口が見つかったとジルヴェスターに話せば良いだろうか?
だが、ローゼマインはジルヴェスターをあまり信用していないように思える。礎の話など本来はアウブに一番にするべき話だ。何かまだ話していない理由があるのだろうか?
__ローゼマイン、君はどう考え、どう動く?君の意見が聞きたい……。
「例の手紙は見つかりましたか?」
「ああ、暗号も解読できた」
「それは良かったです。流石フェルディナンド様ですね」
「ゲオルギーネの話の続きが聞きたい」
「承知しました。お話したのは沢山の名捧げ石を持ったまま嫁がれているというところまでですよね?」
「ああ」
「ゲオルギーネ様に名捧げしている複数の貴族にわたくしは過去と未来で何度も襲われました。先日許可証を偽造して神殿に押し入ったビンデバルト伯爵も祈念式での襲撃の犯人とされるゲルラッハ子爵も、ゲオルギーネ様の手先です」
「やはりか……だがなぜ我が身に降りかかる災難だというのに、君はそんなにも落ち着いていて、しかもゲオルギーネの擁護までするのだ?」
「そうですね……わたくしも最初は怖かったですが、あくまでもマインの記憶、小説で読んで知っているだけの情報として捉えることで、何とか心を落ち着かせることができました。あとはフェルディナンド様ならお伝えした内容を元に対策を一緒に考えてくださると信じているからでしょうか」
「……」
「次の大きな襲撃は、来年のシャルロッテの洗礼式の日に起こります。わたくしはその襲撃の際に毒を喰らい2年間ユレーヴェで眠ることになります。その犯人として捕縛されたのはローゼマリーの親族でしたが、こちらもゲルラッハ子爵が身食い兵を提供するなど裏で動いていた形跡がありました。でも明確な証拠がなくゲルラッハ子爵の捕縛には至らなかったそうです」
「……なるほど……」
「ちなみに毒を受けた際に、体内の毒を洗い流すイメージでヴァッシェンすると効果がありますので、万が一わたくしが毒を受けてしまった場合にはそのように対処願います」
「……それは物凄い発見ではないか!」
「麗乃がたまたま発見したんです。トルークの除去や食品の毒抜きにも使えてとても便利なのですよ。ユストクスなど自ら毒を摂取して実験していたらしいですね」
「ユストクスならそうするだろうな……」
「こうして客観的な物語としてとらえて俯瞰的に考察すると、ゲオルギーネ様の執念のようなものを感じますよね。何度も何度も手を替え品を替え、何としてでもエーレンフェストを乗っ取ってやろうという…」
「うむ……」
「フェルディナンド様はわたくしが貴族院2年生の時の領主会議で王命が出て、アーレンスバッハに婿入りされるのですが……」
「私がアーレンスバッハに婿入りなどありえない!」
「それが有り得るのです。フェルディナンド様の生まれをご存知の方からの密告により、王位剥奪の意思がないことを示すために、エーレンフェストのアウブになるか、アーレンスバッハのアウブに婿入りするか選べと迫られ、お父様との約束を理由に、アーレンスバッハへの婿入りを決断されるのです」
「……」
「その婿入りも裏で手を回していたのはゲオルギーネ様でした。フェルディナンド様がエーレンフェストにいると侵略の障害になるため、ツェントをもトルークで操って王命を出させたんです。例の選択肢もお父様との約束からフェルディナンド様はジルヴェスター様を裏切れないから婿入りを選ぶはずだと考えられていたようです」
「……なるほど……。確かにその2つの選択肢なら、私は婿入りを選ぶであろうな…」
「フェルディナンド様がアーレンスバッハに行ってしまうと、エーレンフェストは崩壊寸前になりますので、次は選択を誤らないでくださいませ」
「ああ」
「ゲオルギーネ派の多くは貴族院3年時の粛清で処分されますが、一部自身の安否を偽装して、処分を逃れ、その一年後のゲオルギーネのエーレンフェスト侵攻の際にゲオルギーネに手を貸す者もいます。とにかくゲオルギーネ様は既に礎を奪うために動き始めています。一刻を争い早めに対処しなければ大問題に発展する事態なのです」
「そうだな。至急対処を考えよう。君も知恵を貸してほしい」
「フェルディナンド様は今のままが最善だとお考えですか?」
「どういう意味だ?」
「ジルヴェスター様がアウブであること、ジルヴェスター様に夫人が1人しかいらっしゃらないことなどでしょうか」
「私は父上からエーレンフェストとジルヴェスターのことを任されている」
「ええ、存じております。ただ、支えるのと甘やかすのは別物ですよ」
「……」
「フェルディナンド様はアウブであるジルヴェスター様が行うべき城の業務を半分程度も肩代わりされていますよね?フレーベルタークの小聖杯に見返りなく魔力を満たすよう言われてますよね?それを受け入れるのは甘やかしです。ジルヴェスター様のためにもなりません。フェルディナンド様の甘やかしによって未来のわたくしも被害に遭うので、もうやめていただきたいというのがわたくしの正直な気持ちです」
「君が受ける被害とは何だ?」
「一番わたくしが辛い思いをするのは、フェルディナンド様がアーレンスバッハに行かれた後です。アウブ・アーレンスバッハが亡くなり、王命から半年足らずでフェルディナンド様はアーレンスバッハに向かわれるのですが、その冬にはヴェローニカ派、ゲオルギーネ派の粛清が行われ城の文官が不足します。領主夫妻が側近を共有しなければいけないほどにです。そして、フロレンツィア様がご懐妊なさいます。最悪のタイミングですね」
「……」
「その際にジルヴェスター様はわたくしに神殿の業務全般、領地の事業の全てに加えて、夫人が行うべき女性の社交、フェルディナンド様が行っていた城の業務まで全てわたくしに押し付けてきたのです。ただでさえ虚弱なわたくしにフェルディナンド様の代わりとなる医師を用意することもなくです。客観的に見てもわたしを殺したいのかと感じるほどでした」
「それは……すまなかった」
「すまないと感じるなら、ジルヴェスター様を甘やかすのは金輪際やめてください。そして城の文官を入れ替えて、フェルディナンド様自ら鍛えるなりしてくださいませ。そうすれば最悪の未来は回避できます」
__こうなる未来を知っているから、君はジルヴェスターを信用しないのだな。兄上、何故ここまで愚かなのだ…。























聞く耳をもっていたのは僥倖