Novel2 months ago · 4.2k chars · 1 pages

ご褒美争奪戦

oyakata1680oyakata1680

超かぐや姫!に脳を焼かれて生まれたSS。 はー、ヤチヨと一緒に仕事してーなー俺モナー。って気持ちで書きました。最後の感想は私の素直な気持ちです。

前提

 超かぐや姫!の本編後の二次創作。かぐやとヤチヨの二人にボディがあるIF設定です。一応続きですが、この話だけでも楽しめます。

 ◆

 出勤の準備を終えて玄関に向かおうとした私の前で、かぐやとヤチヨが二人並んで立っていた。
かぐやは部屋着のままだったが、ヤチヨは外に出る用に用意しておいたワンピースを着ている。

「あれ、どうしたの二人とも」
「あ、彩葉。それがさ、料理もしたいし、配信もしたいけど……彩葉とも一緒にいたいなぁって」

かぐやがそう言いながら腕を組んだまま眉に皺を寄せる。隣でヤチヨも同じポーズをした。

「そうそうー。で、せっかく体が二つあるんだから、役割分担しよーって話になって。今日はヤッチョが彩葉と一緒に研究所へ行くことにしたんだー」

二人のボディは常に同期している。いたるところに電波の飛んでいる、常にオンライン状態を保てるような都市部であれば、特に移動に制限が掛かるようなことはない。特に研究所なんかは専用の回線があるため安心だ。

「そうしたいなら、そうしていいよ。恰好からして、今日はかぐやがお留守番?」
「うんっ! ヤチヨの目で彩葉のことずっと見てるからね~!」
「はいはい。じゃあ、かぐやは家のことよろしくね。行こう、ヤチヨ」
「うん。かぐや、行ってきまーす」

ヤチヨは満面の笑みで私に並び立ち、玄関を出た。背後で「無駄にニヤつきやがってBBA」とか聞こえたし「ガキ嫉妬乙」とか聞こえたけど聞こえない振りをした。

 ◆

 「あ、所長、おはようございま……おっ、ヤチヨちゃん一緒に来たんですね!」

研究所の中に入った瞬間、研究員の一人がぱあっと顔を輝かせた。

「ヤチヨちゃん、おはよう! 今日も可愛いねぇ」
「お洋服可愛い~! 所長に買って貰ったの?」

次々に研究員が寄ってきて、ヤチヨに話しかけている。
この研究所の皆は、かぐやとヤチヨの体を作る研究に携わった人たち。私と一緒にアバターボディ完成まで一緒にやってきた仲間だ。彼らにとっても、ヤチヨは我が子のように可愛いだろう。

「あ、あのあの、流石にそろそろお仕事したいなーって……」
「そうか、もうお客さんじゃなくて、研究員だもんね。分からないことがあったら何でも聞くんだよ」

かぐやとヤチヨ、二人は研究所の研究成果でありながら研究員としても登録している。最初は、研究所へ自由に出入りするための措置だった。
だが、何かしらの用事で各部署に二人がお邪魔すると、その先々で天才的な頭脳を持っていることが知られて行き、登録したほうが研究所の利益に繋がると結論付けられ、ついに今日から本格的に研究員として稼働することになった。

「当面は今まで通り私の助手をやってもらって、何かやりたい研究とか興味のある研究があったらやってみていいから」
「うん。でも、しばらくは彩葉の隣がいいかな~……なんて」

ヤチヨのために用意した、私の席の隣の椅子に腰掛けながらそういうヤチヨ。
嬉しいこと言ってくれる。
そこへ、最近新しく入った若い女性研究員が資料の束を抱えて通りかかった。

「あ、所長。おはようございます。こちらお願いされていた分析データです」
「あ、ありがとう。机に置いておいて……」
「……うっ……ひぐっ」

不意に、隣に座っていたヤチヨが小さな嗚咽を漏らした。

「え!? ヤチヨ、どうしたの!?」
「ヤチヨちゃん!? どこか痛い!?」

ラボの空気が一気に凍りつき、周りの研究員たちが慌てて集まってくる。 ヤチヨはポロポロと大粒の涙をこぼしながら、その若い女性研究員を見ていた。

「ごめ、ごめんねぇ……あなたを見たら、昔、伊勢の呉服屋にいた子にそっくりで……うぅっ、思い出しちゃって~」
「ええっ!? い、伊勢の呉服屋、ですか……!?」

困惑する若い研究員を見て、自分の感情がコントロールできていないヤチヨは泣き崩れてしまった。
ヤチヨはアバターボディに入ってから、こうして急に泣き出すことがある。
どうやら、人間であれば忘れてしまうような昔のことや、些細なやり取りを鮮明に覚えているようで、何かトラウマのようなものに触れると泣き出してしまう。
頻度は段々減ってきているので、おそらく八千年の記憶が人間サイズの体に適用しようとしている途中なのだろう。
どのくらい掛かるかわからないが、この状態の経過観察も研究対象だ。

「ふむふむ。人の顔がトリガーになるということはかなり鮮明な記憶力を持っているな……」
「脳波の数値は取ったな。いつも通りラベリングしておけ」
「あ、ヤチヨちゃーん、そのティッシュで鼻水拭かないで~、こっち、こっちの厚手のやつ使って~」

あやす係と研究する係に分かれ、ヤチヨは研究される。研究所一同で甘やかしまくっているのだ。

「うえぇ、神々のみんなみたいに優しい~!」

ツクヨミだけでなく研究所でもアイドル扱いのヤチヨ。私はその光景を、少し呆れつつも見守っていた。

「ちょっと所長! ヤチヨちゃん泣いてるんだから手ぇ握ってあげてください!」
「えっ、みんながついてるからいいじゃ……」
「所長」
「あ。はいごめんなさい。や、ヤチヨ~……ほら、手握るから泣き止んで~……」

なんだか教育に参加しないことを怒られた父親みたいな気分になりながら、ヤチヨのあやしに参加するのだった。

 ◆

 ひとしきり泣いてスッキリしたヤチヨは、研究の補佐の域を越えて働いてくれた。機械のように正確な計算(いや機械なんだけど)の速度は凄まじく、優秀な研究者が揃っているこの研究所の職員でも辟易するような膨大なデータの整理をあっという間に片付けてしまった。

「彩葉、頼まれてた今日のタスクは全部終わったよ。あとついでに、溜まってた郵便物の仕分けもしておいたから」

ヤチヨが、誇らしげな報告とともに胸を張る。
夕方あたりから会議が続いて席を外していた私は、終業時間間際に席に戻ってきたところだ。

「お疲れ様。助かったよ、ヤチヨ」

会議で疲れていた私は、無意識にヤチヨの頭に手を置いて、撫でた。

「ふぇ」
「あ」

しまった。かぐやによくやる仕草を、手癖でやってしまった。
だってヤチヨの表情が、褒め待ちのかぐやそっくりだったから。

「……えへへ、なぁに彩葉、まるでかぐやにやるみたいに……」
「……ごめん、嫌だった?」
「ううん。泣くくらい嬉しい」

ヤチヨの目に涙が溜まっていた。いつもの発作的な号泣ではなく、静かな感情の発露。
たぶん、これは普通の嬉し涙。この涙なら、いくらでも流して欲しいと思う。

「あれ、所長。なに、またヤチヨちゃん泣かせたんですか?」
「ちょっと、女の子は丁寧に扱わないとダメですよ! みんな所長みたいに頑丈じゃないんだから!」
「ヤチヨちゃーん、甘露舐める? あ、キャンディーのほうがいいかな?」

さっきまで一緒に会議していた研究員も部屋に戻ってきて、これだ。
私はどうやら女の扱いが雑な男みたいなイメージがついているらしい。
私も女なんだが?いや優しくして欲しいとかはないけど。

「あーもー、終業時間です! みんな帰った帰った! 私はこれからヤチヨと退勤デートだから!」

研究員の皆がブーイングを飛ばす中、ヤチヨの腕と、ヤチヨがまとめてくれた鞄を引っ掴んで、逃げるように研究所を後にした。
去り際に止んだブーイングに、優しそうな笑い声が混じっていたのが、若干恥ずかしかった。

 ◆

 ヤチヨとの退勤デートを終えて、自宅へ戻る。

「ただいま」
「おかえりなさーい!」

玄関を開けると、エプロン姿のかぐやがパタパタと小走りで出迎えてくれた。

「彩葉、おかえり! すっごくいい匂いするでしょ? 早く手洗ってリビングにおいでよ!」

言われるがままに手を洗いリビングに向かった私は、その光景に言葉を失った。

「……なんだこれ」

テーブルの上が、とんでもないことになっていた。ツヤツヤに輝く飴色の北京ダック。グツグツと湯気を立てるフカヒレの姿煮。大皿に盛られた伊勢海老のチリソース炒めに、美しく飾り切りされた点心の数々。
高級中華料理店も顔負けというレベルの、満漢全席だった。

「ふふん! 驚いた? 私の最高傑作だよ!」

かぐやが両手を腰に当てて、ドヤ顔で胸を張る。
ヤチヨも横に立ってそれに倣う。どうやら情報同期でこのことは知っていたらしい。

「驚いたなんてもんじゃないけど……なんで急にこんな凄いもの作ったの? 何かのお祝い?」

私が尋ねると、かぐやはえへへと照れくさそうに笑った。

「あのね、ヤチヨが研究所でみんなに可愛いって褒められたり、彩葉に頭撫でてもらったりするたびに、私まで嬉しくなっちゃって」
「うん」
「それで、嬉しくなるたびにテンション上がって、よーし、もう一品作っちゃおー!って追加してたら、いつの間にかこうなってた」
「短絡的だよねー」
「いちいち情報同期してくるヤチヨも大概だけどねー」
「小まめな同期は大事なんだよ~☆」

かぐやとヤチヨの会話に、私は頬が緩むのを止められなかった。
研究所でヤチヨが褒められると、家にいるかぐやのテンションが上がり、夕飯が最高級のフルコースになる。
世の夫が聞いたらうらやましがって発狂するシステムじゃないだろうか。
私は上機嫌になって、二人の肩を抱いた。

「いやー、私ってば果報者だなぁ。世の旦那衆に自慢して回りたいくらいだよ」

私がそう言った瞬間。

「……彩葉。それはやめた方がいいと思う」

かぐやとヤチヨが、ジト目で私を見てきた。

「え、え? なんで?」
「だって、普通の人から見たら、職場の女を可愛がったら、家の妻が喜んで豪華な飯を作ったって聞こえるよ?」
「たぶん、自慢したと同時に刺されるよ」

二人のあまりにも的確で冷静なツッコミに、私は真顔に戻った。
研究所のみんなの、嫉妬に染まる顔が目に浮かぶ。

「……絶対言わないことに、今した」
「そんなことより早く食べてよー! フカヒレ冷めちゃうよー!」

かぐやの勧めで着席し、三人で食事を楽しんだ。
美味しい。冗談抜きで美味だった。
けど食べてる間、配信とかでバレても刺されるかなとか考えていたらちょっと怖くなった。
美味しくて寒気を感じたのは初めてだった。

— End —

Comments 12

18 天前

彩葉はほんとにそのうち多方向から刺されそう笑(surprise)

かぐいろヤチしか勝たん21 天前
Sticker
26 天前

2人とも口わっるw

バルブァン2 个月前

だって、普通の人から見たら、職場の女を可愛がったら、家の妻が喜んで豪華な飯を作ったって聞こえるよ? 妻公認の浮気かなとか疑われるな・・・文字にしてみると意味不明すぎる・・・

かちょん2 个月前

くそぉ……今回は取り合いが少なかったぜ……

放課後延長戦2 个月前
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Sakuria
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