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最強少年フェルディナンド~5

柏木しおん柏木しおん

イタズラ好きな女神リーベスクヒルフェの思い付きで、洗礼式直前の7歳のフェルディナントは20年先までの記憶と知識、そしてシュタープと完全版メス書まで与えられました。これはその後のお話です。 フェルディナンドはジルヴェスターに纏わり付かれ、もううんざり。勉強は嫌い、執務の手伝いはした事ないしする気も無い。このままアウブになって大丈夫とは思えません。それで、フェルディナンドは女神の力を借りて策を施します。 いろいろ捏造あり、原作との違いもあると存じますが、どうかお見逃し下さいm(_ _)m。

<フェルディナンド>
私が北の離れに移り住んでからというもの、毎日の様に私の部屋を訪れ、私を邪魔する輩がいる。ああ、今日もやって来た。

「フェルディナンド、今日も来てやったぞ!」

そう、兄、ジルヴェスターだ。別に来て欲しいと頼んだ訳ではないのだが。というか、来なくて良いのだが。そういう私の気持ちを一切汲み取らない、いや汲み取れないだな。さすがはジルヴェスターだ。彼は私を気に入ったというよりも、弟という存在が出来た事が嬉しくて仕方ないらしい。とにかく私を弄りたがる。当初、ジルヴェスターの側近達が私に構うのを止めた様だが彼はそれを完全無視、側近達もジルヴェスターの性格を熟知しており、一旦こうなったら絶対に言う事を聞かないはずなので、止めるのは諦め、仕方なく放置している、という状態だ。私とすればがんばって止めて欲しかったのだが……。ジルヴェスターは私に好意を持っているので、扉に仕掛けたシュツェーリアの盾を問題無く通り抜けてくる。彼の側近達も多くの場合、通り抜けて来る。どうやら私に害意を持っていない様だ。たまに飛ばされる時は、おそらくヴェローニカから良からぬ指示を受けている場合だろう。
ジルヴェスターの自由時間は、四の鐘が鳴ってから五の鐘まで。昼食を摂る時間もあるので、実質鐘3分の2程度だ。この自由時間を利用し、ジルヴェスターは私の部屋にやって来る。
最初彼は映像の魔術具目当てに私の部屋に来た。

「あの、ほら、記録の魔術具だったか?あれを見せてくれ!」

最初はそこに記録されている映像を見るだけだったが、だんだんそれだけでは満足出来なくなり、ついに、

「私を撮ってくれ!」

という事になった。それも、歌を歌ったり、おかしな運動をしたり……。それにも飽きると、今度は自分の側近達に寸劇の様なものをさせたりまでした。側近達は皆、完全にげっそりだ。そんな彼らを私は哀れに思ったが、当のジルヴェスターはお構い無しだ。おそらく側近の気持ちなど考えてもいないのだろう。
記録の魔術具で遊び尽くすと、今度は

「外に出よう!」

と、無理矢理外に連れ出された。といってもまあ、城内の庭だが。城内の池に向かって石を飛ばしたり、木登りや壁登りをしたり、使われていない区画を探検したり。これで私が見た目通りの少年なら楽しかったに違いない。ところが私は大人の記憶を持たされており、実質30年近く生きている訳で、この様な事に何の楽しさも見出せるはずがない。とにかく面倒だ。それに、我々に付いて回る側近達がうんざりしているのがわかる。年配の筆頭側仕えの男性などは、疲労困憊状態だ。見兼ねて、

「兄上、そろそろお部屋に戻りましょう。」

と、帰室を促すも、

「何?もう疲れたか?この程度で疲れてはだめだぞ!次はあちらに行くぞ!」

と、こちらの意図など読み取ろうともせず、欲求の赴くままに行動する。そして五の鐘が鳴っても遊びを止めようとしない。結局カルステッドが捕まえに来て、

「ジルヴェスター、いい加減にしろ!」

と、ジルヴェスターの首根っこを捕まえ部屋に引きずっていく。その際、カルステッドが

「其方も災難だな。」

と優しく声を掛けてくれるのが少し嬉しかった。ヴィルフリートと違いジルヴェスターが少しはましな成長を見せたのは、ジルヴェスターを叱るのに頓着しなかったカルステッドのおかげなのだ、ともしみじみ思った。

ある雨の日。外に出られないジルヴェスターは、何する訳でもなく私の部屋に来て、だらだらしている。

「兄上は、父上の執務のお手伝いはなさらないのですか?」

兄はもうすぐ貴族院3年生だ。ローゼマインは既に執務を支えていた。というか、彼女は貴族院入学前から神殿の執務を執り行っていたがな。ヴィルフリートでさえ(強制ではあるが)、貴族院前に執務の見学をさせていた。

「執務?そんなのした事は無いぞ。成人してからでよかろう?子供の内は遊ばねばな!」

私の記憶通りなら、この兄はあと10年でアウブエーレンフェストになる訳だが、こんな状態で良いのか?

「兄上は、貴族院で最優秀を取られたことはあるのですか?」
「ある訳なかろう?最優秀を取っても何も良いことはない。それならば出来るだけ遊んで、ぎりぎりで合格した方が、無駄の無い賢いやり方だと思わないか?第一、勉強など面白くもないからな!」

だめだ、この兄は……。このままだと結局私の記憶通りの、私、そしてローゼマインに迷惑を掛けまくるアウブになる。何とかしなければ。

「ゲオルギーネ姉上がいらした頃は、勉強を強制されずいぶん苛められた。ここだけの話だが、姉上が嫁がれてこの城からいなくなって下さって、本当に良かった。」

なるほど、ゲオルギーネか。そうかそうか、良い案が思い浮かんだぞ。

夜。寝台のカーテンを閉めた後、私は頭の中で女神に呼び掛けた。

『女神リーベスクヒルフェよ、私の声が聞こえるか?』

しばらくすると、

『こんばんは、クインタ。何かあった?』

と軽い調子で答えが返って来た。女神の威厳はどうしたのだ……。

『このままではエーレンフェストは最低な領地になる。それで活を入れたい。』
『活?』
『使えない現アウブ、やる気の無い次期アウブをどうにかしたい。』
『で、何か良い案があるの?』
『現アウブの長女、次期アウブの姉にあたるゲオルギーネという女性がいる。現在は闇の領地アーレンスバッハの第三夫人だが、彼女をこの領地に戻したい。』
『あ、もしかして、将来ここの礎を奪いに来る苛烈な女じゃない?』
『そうだ。彼女はアウブエーレンフェストになるべく努力していたが、その地位を、男に生まれたというだけで他に能力の無い弟に奪われたのだ。それで、20年後に礎を奪いに来る訳だが……今なら嫁いでまだ数年、恨みをそれほど拗らせていないはずだ。それに今ここに戻せば、だめな父親と弟を叱咤激励するに違いない。それでも上手くいかないのなら、彼女がアウブになれば良い。』
『なるほど~、面白そうねぇ!で、私の役割は?』
『其方は縁結びの女神であろう?ゲオルギーネの夫アウブアーレンスバッハに、別の女性を縁付け、ゲオルギーネとは離縁、というのはどうだろう?』
『そんなのお安い御用よ!ゲオルギーネよりももっと若くて……きゃぴきゃぴした、第三夫人にぴったりの娘が良いかしらね?』
『きゃぴきゃぴ?』
『ちょっと落ち着きの無いくらい元気で明るいって意味よ。あ、ユーゲライゼにも協力を頼むわ。あと腐れなく、ゲオちゃんがここに戻ってこられる様にね。』
『ゲオちゃん……。』
『それじゃ、また何か思いついたら呼んでね!!』

大丈夫か、この女神……。

冬になった。ジルヴェスターは貴族院に旅立ち、やっと静かになった。まだアーレンスバッハからの連絡は無い様だ。
私は子供部屋に顔を出した。記憶通り、私を転ばせたり、まだ背の小さい私の上に物を落としたりしようとする子供が何人もいたが、今の私がそんなものに引っ掛かる訳が無い。反撃の魔法陣を身に纏っているので、私に仕掛けたはずの事が、仕掛けた子供にすべて降りかかる。子供達は最初それを理解出来ず何度か試すも、尽く失敗する上自分が痛い思いをするので、諦めてしまった様だ。その内私にちょっかいを出そうとすると、痛い目に遭う、という認識が子供部屋中に広がり、私のそばに誰も近寄らなくなった。

「貴族院もこの調子で行けば、良いかもしれんな。」

などとふと思ったりもした。む?あれは……ラザファムではないか?そうだった、ラザファムは私の一つ年上、まだ貴族院に上がる前だった。ユストクスに頼み、彼を呼んで貰った。ラザファムは私に呼ばれた事に驚き、可哀想になるくらい脅えて私の前に跪いた。

「フェ、フェルディナンド様、い、命の神エーヴィリーベの厳しき選別を受けた、た、類稀なる出会いに、しゅ、祝福を祈ることをお許しください。」
「無理に長い挨拶などせずとも良い。其方、ラザファムだな。」
「は、はい。」

ここで、範囲内盗聴防止の魔術具を展開させた。

「其方、私の側近にならないか?」
「は?あ、あの私、下級貴族なのですが。」
「私は身分ではなく、人となりで判断する。下級・上級など関係無い。」
「で、でも……。」
「急ぐことではない。考えておいてくれ。貴族院に入学した頃、また話し合おう。それと、これを読めるか?目だけで読め。声を出さなくてもよろしい。」
「は、はい……、これは?」
「この羊皮紙は渡せない。だから暗記しろ。……どうだ、覚えたか?これを時々行え。すると、其方の魔力が増える。」
「え!?そうなのですか?」
「誰にも言うな。其方と私の間だけの秘密だ。」
「わかりました!」
「それと、今私に呼ばれた理由は……そうだな、其方に似た子を以前見かけたが人違いだった事にしろ。」
「はい。」

ラザファムは魔力が少なく、苦労していた。それで、私の考え出した魔力圧縮法を彼に教えた。なおローゼマインの魔力圧縮は、彼女に許可を貰う前に世に出すつもりはない。

とりあえず、ラザファムに会えた。もうこれ以上子供部屋に通っても得るものは無さそうだ、ということで、冬の間はほとんど自室で過ごした。もちろん、漫然と過ごしていた訳ではない。ヴェローニカに対する、次の手を考えていたのだ。この後ゲオルギーネがエーレンフェストに戻ってくれば、女性二人の衝突は必至だ。ヴェローニカは現在、通常の10倍以上の速さで老化進行中だ。老化で働きの鈍くなった脳で、ヴェローニカが何をしでかすかわからない。特に心配なのは名捧げ石の扱い。最悪、後先考えず自爆を命じる可能性がある。そうならない内に、名捧げ石対策を取りたい。そのため、メスティオノーラの書を日々調べているのだ。
私が毎日読んでいる分厚い本が何かわかっているのはユストクスだけだ。側近ABCは、図書室から借りてきた本だと思っている。

「フェルディナンド様は、もうそんなに難しい本をお読みなのですか?」

と言って覗き込んでくるも、メスティオノーラの書は古語で書かれているので、彼らには全く理解出来ない。だから隠し部屋に籠る必要もない。また、ABCの私に対する評価も、

「ジルヴェスター様と違い、たいへんなお勉強好き。」

に固まった様だ。それに私が大人しく本を読んでばかりいるので、面倒な指示も出されないし、仕事が楽で助かる、と、喜んでいる。愚かな奴らだ……。

やっと発見した。”名捧げ無効”の魔法陣。当初は名捧げ解除の魔法陣を探したが、それだと、解除後に再び名を奪われたら意味が無い。それよりも、名捧げという行為自体を無効にする方が良い。しかも、既存の名捧げも無効になるはずなので、これが上手く行けば、名捧げ無しの状態に出来るのだ。問題はこの魔法陣をどうやってヴェローニカの手に渡る様にするか、そして恒久的に身に付けさせるかだ。
私はさらにメスティオノーラの書を読み込んだ。すると……今回の目的に適う格好の魔術具の作り方を発見した。魔法陣を5年間ほど身体に植えつける魔術具。5年あればヴェローニカは老化が進み、まともに動けない状態か……もしくは高みに上るかするだろう。それだけ保てば問題無い。この魔術具と、先の”名捧げ無効”の魔法陣を組み合わせ、それを半日ほど身に付けたままにすると、植え付け効果が発揮される。

「必ずヴェローニカが奪い取り、自身の身に付けたくなる様なものとは……?」

これについては、ユストクスに意見を聞いた。

「装飾品が良いでしょうね。ヴェローニカ様のお姿を拝見するに、派手な装飾品がお好きな様です。そうですね……たとえば魔石を使ったブローチはいかがでしょう?私の在庫にそれなりの魔石がありますので、よろしければご用意致しますよ!」

さすがにユストクスの集めた価値ある魔石を貰うのは躊躇われたので、くず魔石を数個貰い、それをローゼマインが行った様に”こねて”一つに纏めた。

「何ですか、その技は!?」

これを見たユストクスが食い付いた。

「これはローゼマインが幼い頃に考え出した技だ。初めて見せられた時はなんて非常識な、と思ったが、実際使ってみるとかなり便利な技だな。」
「ローゼマイン様は凄い方ですねぇ。」
「いろいろな意味で破格な子だったな……。」
「お会いする日が待ち切れません!!」
「同時に面倒ごともしょっちゅう起こすから、覚悟せよ……。」

そんな話もしつつ、魔石を使ったブローチを完成させた。

「フェルディナンド様はご趣味がよろしいですねぇ。これならば、ヴェローニカ様も身に付けてみたくなられるはずです!」

もちろん私の魔力は抜いておき、見えない所に例の魔法陣付き魔術具を組み込んだ。これを側仕えAに渡し、

「これをヴェローニカに献上しろ。私の母の形見で、先頃私の部屋から盗んだことにしておけ。」

と命じた。

<ヴェローニカ>
わたくしの筆頭側仕えZ夫人の娘Y嬢が、ライゼガング派の貴族の第二夫人として嫁ぐ事が決まったわ!これからお家乗っ取りするべく、がんばっていただかなくては!それに際し、わたくしの指示を確実に実行するため、名捧げして貰う事に。Y嬢から小箱に入った石を渡され、それにわたくしの魔力を………あら?魔力を込められないわ?

「ごめんなさい、今日はわたくし、調子が悪いみたいなの。後日にさせていただける?」

今日の体調は悪くはないと思っていましたが……どうしてしまったのでしょう?こんな事、初めてですわ。

その後もY嬢の名捧げは失敗続き。もしかすると魔石に問題があるのでは、と変えていただいたけれど、それでもだめだったわ。するとZ夫人が、

「そういえば奥様、実は近頃奥様の魔力が感じられなくなったのです。わたくしの名捧げ石に何か問題はございません?」

と。わたくし、急いで隠し部屋に入り、名捧げ石を取り出してみたら……なんてこと!?全部名捧げが解除されているではありませんか!!

「どういうこと!?」

わたくし、何もしておりませんのに……。仕方ありません、もう一度わたくしの魔力を込め…………

「そんな!!」

どの魔石にも、わたくしの魔力は込められません。どうしたら良いのでしょう!?

— End —

Comments 31

いんこ1 年前
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A
asa1231 年前

ウェルナー症候群?を発症する毒薬、恐ろしい。ロゼマなら直ぐに気付きそうw

I
ikira1 年前

周回中に気付いた💡 ゲオ姐召還💡の原因はジル自身の発言…うわぁ😆

柏木しおん1 年前

コメント・スタンプありがとうございました!リーベ女神様は、今後もいろいろと活躍する予定ですので、お楽しみに!

R
rkira1 年前

キッチュ女神にチート魔王(仮)➕カリスマ・ゲオ エーレン魔境伝説の予感😝

Σ
Σლ(゚Д゚ლ)ヨマセテェ~1 年前
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まおむ1 年前
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1 年前
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ハル1 年前
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柏木しおん1 年前

コメント・スタンプありがとうございます!女神様は、フェル様の関知しないところでもいたずらしますので、お楽しみに!ゲオ様、これから良い(?)働きをしていただくつもりです(^_^)。

こまり1 年前

ゲオちゃん!wwwww ゲイバーのお姉さん達がお客さんを◯◯ちゃんと呼んでるのが頭に浮かんで笑ってしまった。女神なのに(笑) ゲオ様参入バトル楽しみです!

フラグ1 年前
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Sakuria
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