坂餅先生の書いて下さったこもりひっきのイラスト作品のショートショート集です🌸 本当にありがとうございます😊!
「ようこそ、魔女のお茶会へ」 夏の潮風が吹き抜け、帽子を押さえた魔女が言った。 魔女と共に席に着いているのはあひるの貴婦人。今日はちょっとしたサマーパーティーだ。 テーブルの上には湯気が立つ紅茶にマカロン。花瓶に活けている花は魔女の髪と同じピンクの花。 「早く始めましょう、せっかくの紅茶が冷めてしまうわ。暑い夏でも、紅茶は温かい方が美味しいもの」 その魔女の言葉で、広い空の下、夏の長いパーティーは始まる。
慌ただしく過ぎていく日常の中、今日も魔女は空から降り注ぐ光を当てに夜道を歩く。 現実から目を逸らそうと、魔女は不意に空を見上げた。 すると満点の星空が広がっており、思わず足を止めてしまう。 下を向いていると気づくことができない星々の煌めきに優しく照らされ、魔女は思い出す。 ――星の魔女。 自分がそう呼ばれている意味を。 煌めく星々のように、暗く俯いた人々を優しく照らし、笑顔を咲かせる。 いつも人々にそうしているように、今魔女は星々に照らされ、笑顔を咲かせるのだった。
「鏡よ鏡――」 そう言って手に持った魔法のドレスを合わせる。 誰もが憧れる、煌びやかなドレス。一人のメイドが、鏡に現れた誰かを見る。 光り輝く者を支えるメイドではなく、自ら光り輝くプリンセス。 夢見る理想の姿。 軽くお辞儀、鏡に映るプリンセスがふわりと微笑む。 理想の自分になれた。もう少しだけ、メイドは夢を叶える。 だけど魔法はいつか解けるもの。 「いつか、私も――」 そうして、プリンセスは日常へと戻っていく。
今まで隠れていた時間を取り戻そうとするかのように、茜色の日差しが世界を照らす。 傘を下ろした魔女は、雨が上がったことを確かめた。 魔女の周りには、雫を纏った紫陽花が煌めいている。それは、日が暮れるまでの数十分しか見られない景色だ。 紫陽花は自らの存在を知らせるように、雫を一滴、魔女の手に落とすのだった。
「こっちへおいで」 そう言って微笑みかける魔女。 「暑いでしょ?」 夏の太陽を反射する髪にセーラーワンピース、そして魔女の大きなとんがり帽子 真夏の青空を思わせるリボンが髪と共に潮風に揺られる。 「ほら、靴を脱いで」 帽子から覗く瞳は遠くに見える海のようだ。 近くで見れば透き通っている海、でも遠くに見える海は空と一体で青く、どこまでも広がっていて果てが無い。 魔女の瞳も、そんな青色をしている。どこまでも、いつまでも眺めていられる。 「海は冷たくて気持ちいいわよ」 でも魔女は近くにいる。触れることのできない遠くの海に、手を伸ばせば触れることができる。そんなとても魅力的で幻想的なものに触れたいから、冷たい海に足を浸ける。