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ガチ天女ムーブ天女12

ラドリカラドリカ

いいね、ブックマーク、スタンプ、コメント、マシュマロいつも励みになっております!!!まだまだリクエストは受け付けておりますので前作のページにお願いします! チャットGPTに誤字脱字を頼んでもらってみました。今度はないことを願う……!!!いつものことですが今回捏造多めです。 白玉を豆乳と水で作ってみましたが豆乳は味がしっかりしてますね。コクや深みより苦みが勝ちました。 次回予告:月曜から勘右衛門 またもや2つのランキング入りさせていただきました!!!こんな長いシリーズなのに見てくださってありがとうございます!!! あなたの作品が2026/06/04の[小説] デイリーランキングに入りました! 53 位 あなたの作品が2026/06/04の[小説] 女性に人気ランキングに入りました! 26 位 またもやランキング入り!!!そしてデイリーが高い!!!びっくりしました!!!皆様ありがとうございました!!! あなたの作品が2026/06/05の[小説] デイリーランキングに入りました! 22 位 あなたの作品が2026/06/05の[小説] 女性に人気ランキングに入りました! 42 位

孫平くんの件から数日。孫平くんは謹慎となり新野先生と金楽寺の和尚様によるセラピーを受けることとなったらしい。竹谷くんは孫平くんの元に通い対話をしているらしい。孫平くんのことで寛大な処置をお願いしたことを感謝された。いい委員長だ。孫平くんの精神状態が心配だったがその三人がいるならきっと大丈夫だろう。

 そして私も新野先生によるカウンセリングを受けた。特に問題ないはずだがきっと念のためだろう。あと孫平くんの処置についても相談があった。それ私にしていい話か???って思ったけど寛大な処置をお願いした。めっちゃ怖かったし死を覚悟したけど彼も被害者だ。負の連鎖をなくすためにも寛大な処置をするべきだろう。

 仙蔵くんのことも気になったが私と同じパニックを起こしていたならきっと聞かない方がいいのだろう。仙蔵くんの傷をえぐることになりかねない。

 小松田さんにはまた泣かれてしまった。申し訳がない。吉野先生にも心配されて、「なにかあったら仕事でも私生活でも何でも言うように」と言われてしまった。そして大変申し訳ないことにそれを少し喜んでしまっている自分がいる。だって心配なんて感情とは無縁だと思って居たから。どうやら私は天女兼事務員として思った以上に受け入れられているらしい。とっても嬉しいことだ。

 私の無害が証明されたわけではないが受け入れられるのは純粋に嬉しい。私も一日だけ新野先生の医師権限でお休みが出た。そのおやすみのときに雑渡さんが「大変そうだったね、命狙われる趣味でもあるの?」ってデリカシーもへったくれもないことを言われた。お団子はくれたけど。あまりにむかついたので「雑渡さんもその一人でしたね」って言ったら「そうだね」ってあっけらかんと言われてしまった。むかつき度が増した。もっとなんか申し訳なさとかあってもいいだろ!!!首絞められたりしたの怖かったんだからな!!!だがそれが雑渡昆奈門のいいところでもある。オタクの癖は変えられないのである。

 あとお給料もらったんですよ!!!金!!!金貰ったんです!!!これがとっても嬉しかった!!!天女だから微々たるものだと思ってたのに意外としっかり量がある!!!物価がわからないから何とも言えないがこれは多い方なのでは!!!???ありがとう学園長先生!!!

 そして今日の私はというと。

「では夢乃さん、外回りの掃除をお願いしますね。何かあったら言うことを徹底してください」
「お気遣いありがとうございます。行ってきます」

 一人業務をしている!!!なぜ今!!!もっと書類作業の勉強したかったのに!!!どうやらやれる書類仕事があらかた片付いてしまって外掃除に出されたらしい。足も杖つかなくてよくなったからね!!!やったね!!!ちくしょう!!!
 えーん孫平くんの影響でちょっと忍たま怖いんだよ!!!何もなければいいけど。

 そう思いながら掃き掃除をしていく。手に持つ箒は用具委員会が直してくれたものだ。本当に使いやすい。本当に用具委員会には感謝しかない。
 小松田さん一人で学園が回りきるなんてことはなく辺りを見渡すと落ち葉が溜まっていた。これはやりがいがあるな!!!

 そして昼餉の時間になり一旦戻ったら、小松田さんと吉野先生が待っていた。

「お疲れ様です。どうかされましたか」
「言い忘れてしまいすみません。本日より食堂の利用が可能になったのでよければご一緒にどうですか?」

 しょ、食堂!!!???いいんですか入って!!!???こんな怪しいガチ天女ムーブしてる奴が!!!???食堂のおばちゃんに何言うか考えないと!!!ちゃんとお礼言わないと!!!

「もちろんです。ご一緒させていただきます」
「教職員の給料から食堂の利用代は天引きされているので1日3食までなら追加料金がかかりません」
「そう言ったシステムなんですね」

 へーーー!!!知らなかった!!!確かに先生方が食券持ってるとこ見たことないけどそういう理由だったのか!!!納得!!!
 あ、食堂に入れるということは!!!AランチとBランチが選べるってこと!!!???やば、感動すぎる……こんなことがあってええんか……ありがとう地道にガチ天女ムーブし続けながら頑張ってきた私……

 食堂に入るとご飯のいい香りが香ってくる。
 あ~~~!!!ここだ~~~!!!私が求めていた桃源郷はここだったんだ~~~!!!映画やアニメで見た光景!!!そしてそれを遥かに凌駕する美味しい香りの圧!!!
 ここに来れてよかった……!!!

「今日のランチはあそこに書いてある通りになります。時間が遅くなると片方だけになってしまう日があるので気を付けてください」
「かしこまりました」
「注文はこちらからです。おばちゃん、Bランチをお願いします」
「僕はAランチで!」
「BランチとAランチね。そちらのお嬢さんは?」

 おっ、お嬢さんだなんて、やだなぁ。もうとっくに花の盛りは終えていますとも。やばい。緊張してきた。嫌悪感の少しでもあれば咄嗟に防御本能が働いて喋れるんだけどこうも普通の対応をされるとわからなくなる。とりあえず初手は丁寧すぎるくらいに丁寧に行こう!!! 

「初めまして、夢乃と申します。貴女様のお料理はいつも頂いておりました。とても美味しいお料理をありがとうございます」
「礼儀正しい子ね。私のことはおばちゃんでいいわよ。ランチどっちにする?」
「ではお言葉に甘えて、おばちゃん、Aランチでお願いします」

 夢子はそう言い、にこやかに微笑んだ
 今日のAランチはハンバーグだったからね!!!体仕事をしてきたんだから肉でしょ肉!!!あと個人的にハンバーグが好きっていうのもあるんだけどね!!!胃もたれしずらい肉料理!!!オカラや豆腐なんか入れたらヘルシーにさっぱり食べられるハンバーグが私は大好きだ!!!ご飯にも合うところがいい!!!
 頼んだし横にずれるべきかと隣を見たら吉野先生と小松田さんがなんかびっくりしてた。

「どうされましたか?」
「いや……その……そんな顔もされるんだと」
「変な顔してましたかね」
「ううん。でもなんて言ったらいいんだろう……」

 吉野と小松田は悩んでいた。食堂のおばちゃんに対してだけ距離が近くないか、と。自分たちだって夢乃さんが笑っているところなんかたまにしか見ないのに食堂のおばちゃんにはそう簡単に笑うのかと。 
 端的に言ってしまえば嫉妬だった。自分たちの方がずっと一緒に居たのに!という。だが成人女性に対して言うにはあまりにも恥ずかしすぎる内容だったので黙ってしまった。

「言葉が見つかってからでいいですよ。見つかったら教えてくださいね」
「うん!」

 そうこうしてるうちにご飯ができる。

「はい!おまたせ、Aランチ二つにBランチだよ」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます!おばちゃん!」

 夢子は受け取るとにこやかにおばちゃんに微笑み返した。
 吉野と小松田が再び固まると、一つの結論を出した。

「もしかして夢乃さんって、ご飯好き?」
「そうですね。好きだと思います」

 そっか~~~!!!と、二人は安堵した。食堂のおばちゃんに負けるよりも食事に負けた方が悔しくなかったからだ。

 三人は授業をしてる面々が来る前に食事を済ませる。その間に夢子は生徒のいない時間帯や食堂の利用時間や食券の購入の仕方について説明を受けた。出ていく前に食器を持って行っておばちゃんに礼を言う。

「おばちゃん、ごちそうさまでした」
「よかった。夢乃ちゃん、またおいでね」

 夢子は現代の時の食事を抜く癖を絶対に直してやるんだと決意した。
 誰かと同じ場所で、同じご飯を食べる。そんな当たり前だったことが、少し前の私には想像もできなかった。それだけができただけで今日の私は幸せだった。

 そのまま掃き掃除をして、放課後の鐘が鳴り次第あがらせてもらう。
 ゆったりとした歩きで部屋に戻って文机の前に座る。
 今日は食堂でご飯食べたから気合は十分!!!文字の練習やるぞ!!!

 そう意気込んだ時、廊下からどたどたと言う音と声が聞こえる。

「天女様のお部屋はこっちだー!」
「天女様のお部屋はあっちだー!」
「お前らそっちじゃねえ!目の前にあるだろ!藤内、左門の紐の紐持っててくれ!数馬!数馬はどこ行った!?」
「ここにいるよ……」
「うおっ!よかった。このまま引っ張っていくぞ」
「よし行くぞ!」
「うん!」

 な、なんかすごいのが来そうなんですけど……3年生かぁ。孫平くんのことで文句言いに来たのかな……
 いや!よくないぞ!こういう思考よくないって新野先生に言われたばっかだし!!!でも不安材料しかないんだよな。みんな大丈夫かな。心配になる。
 でも数馬くんがいるってことは少なくともあんまり嫌なこと言われないと信じよう!!!
 ようやくばたばたとした足音が部屋の前で落ち着き、夢子は居住まいを正す。

「すみません。天女……様、いらっしゃいますか」

 うーん作兵衛くんだねぇ。天女に対する警戒心が伝わってきますね。
 夢子は腹をくくり襖を開けた。

「はい。居ります。何もない所ですがこちらにどうぞ」

 冷静を保て冷静を!!!というか左門くんと藤内くん初エンカウントでは?ご挨拶しないと。

「こんにちは。初めましての方は初めまして。私、夢乃と申す者です」
「初めまして!神崎左門です!」
「浦風藤内です!」
「……富松作兵衛だ」

 え~~~!!!どうしたんだ作兵衛くん!!!何かあったの!!!???やっぱ孫平くんので思うとこがあったから来たのかな?でも私なにしたかな。寛大な処置?それか!え!!!???それでみんな引き連れてお礼しにきたかもしれないってこと!!!???
 いやいや待てまず話を聞こう。

「ありがとうございます。神崎様に浦風様に富松様ですね。本日はどうされましたか」

 そう聞くと3年生たちは顔を見合わせて一斉に頭を下げた。

「孫平の件、寛大な処置をと天女様が仰ったと聞きました。危うく殺してしまうところでしたのに、そのような処置を貰えたことに我ら3年生!天女様にお礼に参りました!」

 まじだった~~~!!!殺人未遂がこの学校でどれくらい重いことなのかわからないけどめっちゃ重いんだろうな。んで作兵衛くんはめっちゃ頑張って今の言葉考えたんだろうな。天女嫌いなのに。もうその気持ちだけでお腹いっぱいだよ。

「頭を上げてください。伊賀崎様の件は彼も過去の天女から来る恐怖に染まってしまった被害者です。むしろ寛大な処置は当然でしょう」
「天女様……」
「ありがとうございます。よし、お前ら帰るぞ」

 早い!!!感動が今新幹線に乗って通り過ぎてった!!!そうだよね!!!天女のところには来たくないよね!!!でも頑張って来てくれたんだもんね!!!ありがとう!!!

「えー天女様の話聞きたいのに」
「作兵衛の意地悪」
「えーじゃない!」
「俺!天女様と会う予習をしてきたんです」
「ははは……ではまた、天女様」
「ほらほら散った散った!」

 3年生を見る見るうちに追い返してしまい、部屋には私と作兵衛くんだけが残った。
 なんでだ。寛大な処置もっと寛大にできただろって詰められるんですかね……私孫平くんの動機聞いて情状酌量の余地がある点は新野先生にあげて寛大な処置お願いしてきたんですけど……
 まーじで何言われるかわかったもんじゃないな。まじ怖い。手裏剣とか投げられないだけましかもしれないけど。
 そんなことを思っていたら、作兵衛くんが口を開いた。

「……悪く言ったのは、すみませんでした。それじゃあ」

 そう言って襖も閉めずに去っていった。
 あ、謝りに来たんか~~~い!!!最初にそう言わんかい!!!びっくりするでしょうが!!!気にしてませんよくらい言わせな!!!言い逃げが多いんだよ伝七くんといい!!!人の話は最後まで聞きなさい!!!
 あーでも良かった。これでちょっとは怖くなくなるかも。まじで今まで麻痺してたからあれだけど自分って日々殺されるかもしれないって恐怖でいっぱいで生きてたんだな。あの時は日々を過ごすだけでいっぱいで、気付かなかった。
 新野先生が”今まで見えなかった自覚を大事にしなさい”って言ってたの、こういうことだったのかな。

 夢子は文机に直り、文字の練習に励んだ。
 夕餉は時間を忘れ食べ損ねそうになったのを廊下を走って回避した。今日の夕餉はおうどん。もちろん美味しく食べた。
 それから風呂に入り布団に入り、だじゃれを考える。そろそろ守一郎くんに会いたいなぁ。

「このつくね超熱くね」

 よし。おやすみ、世界。

「立花先輩、夕餉後に集まれってどうしたんですか」
「みんなが来たら話す」
「すみません。笹山兵太夫、今来ました」
「よし、揃ったな。すまない。どうしてもみんなに聞いてほしいんだ。その……私の罪について___」

「……ということがあった」
「おやまぁ大変でしたね」
「というわけで……すまない伝七、大丈夫か」
「ぼ、僕も天女に酷いことしたんです」
「伝七……」
「大丈夫だ、伝七。聞くぞ」
「実は、天女に手裏剣を投げちゃったんです。小松田さんを虐めてると思って守ろうとしたんですけど、僕の勘違いで……!」
「伝七!そんなことしたの!?」
「落ち着け兵太夫、それで天女には謝ったのか?」
「謝りました。怒られるの怖くて逃げちゃいましたけど……」
「そうか、偉いな。私はまだ謝れてないんだ。近日中に、この一週間のうちにちゃんと謝りたいと思っている。私の行動で傷つけたのは事実だからな」

 仙蔵は咳払いをすると作法委員会のメンバーを見渡した。

「作法委員会は、天女に対して危害を加えないことを宣言したいと思う。異論があるものはいるか!」
「ないです!」
「ないです」
「いません!」
「まあ、先輩がそういうなら」
「ありがとう。天女に会う時にこのことも伝えておく。では解散にしよう」

 今日も今日とて同じ時間に起きて、朝早くに食堂に向かう。今日は土井先生に会った。朝餉をいただいて、ちょっと自室で本を読んでから事務室に向かう。
 今日の仕事は空き教室の掃除らしい。小松田さんが来るまで事務室の書類の勉強をしてほしいって言われたのでありがたく勉強させてもらう。
 そして空き教室のお掃除。てっきり小松田さんが一緒なのかと思ったがそうじゃないらしい。でも小松田さんに「夢乃さんがいるから門番の仕事に専念できるんだ!ありがとうねぇ」って言われちゃしょうがない!やってやりますとも!!!ちょっと寂しいけどね!!!
 空き教室の掃除をしている最中に移動教室だったらしい1年は組に会った。みんな「おはようございます!」って言ってくれて超嬉しかったんだ。まじで癒しでしかない。暫定無害で本当によかったと心の底から思ったよ。ありがとうねぇ……
 昼餉の時間になり、おばちゃんのご飯を食べ、また作業に戻る。斜堂先生にも会ったが「いつもありがとうございます」って言われちゃた。斜堂先生よくわからない人だったが良い人なのかもしれない。
 そして掃除の報告をしたら外の掃除をする。落とし穴の目印が多いからここは慎重に行かなければ。印がない端っこを歩きながら掃き掃除をしていく。
 だが、

「あっ!」

 なんで!!!なにもなかったじゃん!!!綾部喜八郎~~~!!!ちくしょう!!!深いし全く登れない。幸か不幸かおしりから着地したおかげで足を痛めなくて済んだ。おしりは痛いがな!!!

「あの~誰かいませんか~」

 まだおらんか。放課後の鐘がなるまで待機かな。また喜八郎くんに嫌なこと言われたりしたら嫌だから別の人来ないかな。というか監視の人助けてくれないかな。
 そう思い体育座りをして30分。ようやく鐘が鳴った。

「すみません!誰かいませんか!」

 うーんいない。鐘がなった直後じゃいないのは当然か。ってか監視の人いないのなんで!!!???人手不足???監視が緩くなった……?んなわけないか!
 体内時計で10分間隔で呼びかけ続ける。すると二回目で反応があった。

「僕のターコちゃん17号でなにしてるんですか」
「こんちには。掃除中に穴に落ちてしまいまして。穴から出たいのでどなたか呼んでもらえると助かるのですけど」
「……はぁ、しょうがない」

 そう言うと喜八郎くんは手を差し伸べてきた。

「え?」
「出たいんでしょう?出たくないならいいですけど」
「待ってください!出たいです!」

 喜八郎くんの手を取り、あがらせてもらう。喜八郎くんって筋肉あるんだなぁ……穴掘ってりゃ当然か。

「ありがとうございます。……どうして助けてくださったのですか」
「立花先輩の意向です。では」
「あっ!お名前だけ聞いてもよろしいですか!」
「立花先輩に聞いてください~」

 喜八郎くんに助けられただと!!!???マジでなんで???来ないで欲しい人ランキング堂々たる1位だったのに。2位は七松小平太くんです。
 仙蔵くんの意向って言ってたけど何があったんだろう。伝七くんが謝ってくれたのもそのせいかな。

 とりあえず報告に行かなければ。
 事務室で掃除の終了の報告をする。落とし穴に落ちて報告が遅れたことを詫びたら「足は大丈夫なんですか!!!足は!!!」ってめっちゃ言われた。大丈夫だよ、そんなに驚愕したら血圧上がっちゃうよ吉野先生。そして医務室にドナドナしようとする小松田さんを止め、なんとか自室に帰る。

 落とし穴に落ちちゃったけど喜八郎くんが助けてくれたのまじでがあったんだろう。
 まあいい。今日も文字の練習しないとな~~~まだまだ吉野先生のレベルにはほど遠い。あの人きっと今で言う教科書みたいな字をしている。私は決められた文章以外は、まだまだ画数の多い字だけ大きくぐにゃぐにゃになることが多いし、書いた後の文章全体がやっぱりなんか変だからまだまだ勉強しなきゃな!

 自室に戻り、炭を擦る。本を開けたところで部屋の前で立ち止まる影が見えた。
 すまない墨、君たちを作っておいて使わないのは申し訳なく思ってる。だが優先されるべきは人間関係!!!すまない!!!あとで水で溶いて使うからね!!!

 どうなやら影の人物は悩んでいるようだ。このパターンだと謝罪か?でも誰にも謝られるようなことしてないんだよね。石も投げられてないし。まさか尊奈門くんとか!!!???い、嫌だ!!!???会いたくない!!!???ただでさえ男性と一対一が怖いというのに!!!???
 いやでも流石に雑渡さんからこってり絞られてるだろう。きっと。そうだと信じたい。いきなり切りかかったりしないはずだ。きっとちょっと謝罪してそのまま土井先生のとこに行くだろう。よし!!!かかってこい!!!諸泉尊奈門!!!

「あの、どうかされましたか?」

 襖を開けた先に居たのは、立花仙蔵だった。

 仙蔵くん!!!???なんで!!!???あっ色仕掛けの件か???でも仙蔵くんも結構パニックになったって聞くし謝る必要は……せ、責められるのか?
 い、いや、仙蔵くんに限ってそんなことは……しないと限らない。でも!作法委員会ならもっと陰湿な感じでやってくると思うし!!!ソースは喜八郎くん。でもその喜八郎くんに助けられてしまった今作法委員会の行動が読めない。

「あっ、いや。その……なにもしないので、少し貴女とお話がしたいです」
「かしこまりました。なにもないところですがどうぞ」

 促すと仙蔵くんは座ってくれた。何の話かは知らないがめっちゃ怖いので!!!めっちゃ怖いので!!!襖は気持ち大きめに開けさせてもらうぞ!!!

「あの、申し訳ないのですがあまり人に聞かせたくない話なのでもう少し襖を閉めていただけますか?」
「かしこまりました」

 いい感じに隙間を作りつつ、仙蔵くんに直る。この隙間なら手をかけてすぐに逃げることが可能!!!いいぞ私!!!
 色仕掛けの件で男性と一対一がだめになってしまったが退路があれば何とか!!!動悸と不安と体の緊張に打ち勝て!!!
 仙蔵くんは深呼吸をすると、手をつき、頭を下げ、話し始めた。

「先日の件について、正式に謝罪をしたく参りました。大変申し訳ございませんでした」

 た、立花仙蔵の土下座!!!???私が見ていいもんじゃないだろう!!!頭を上げてくれ!!!にしても髪がサラサラだなおい!!!

「頭を上げてください!お気持ちは伝わりましたから!」
「いえ。私はあの日、貴女に対して色仕掛けに値する行為を行いました。理由としては、貴女が本当に過去の天女と同質の存在なのか、自分自身で確認したかったからです。
 しかし結果として、私は貴女に強い恐怖を与えた。実際、貴女は逃げ出し、助けを求めた。つまり私の行為は“確認”の範囲を越え、明確に貴女を傷つける行為だったと言えます」

 そこまで話して、苦い面持ちになりながらも、仙蔵は続ける。声は少し震えていた。

「そして何より、私は過去の天女による被害を知っていた側の人間です。恐怖を与えられる側の苦痛を理解していたはずなのに、同じことを繰り返した。その点に関して、私は自分自身を大変恥じています」
「立花様……」

 自分も驚いたって、恐らくパニックになったのにこの日のことを何度も考えて反省した文章なのだと聞いててよくわかる。もう顔が辛そうだよ。特に天女のことを話したあたりから。きっと被害者だった自分が加害者になってしまったように見えてパニックになったのかな?それはなるわ。安心してほしい。とりあえず、だ。

「まず襖を閉めましょうか。他の生徒様に聞かせるには酷ですものね」
「えっ!ですが貴女は!」
「ええ、怖いです。とっても怖いし動悸も止まりませんが、立花様が見せてくださった誠意に、そして学園の方への配慮に、なにより立花様がお辛い顔をしているのでそれに答えたくなっただけです」
「そんな!無理をなさらなくても!」
「無理をしているのは私たち二人とも、ですよ。立花様」

 信じられなかったが、この天女は本当に噂通りの人だった。勤勉で真面目で優しく。自己犠牲的で、生徒想いな人だと。先生から聞いた当初はそんな世迷言と、先生も天女に毒されているのではと思っていたが、今の天女を見てわかった。
 この人は正しい評価を先生方から受けていたのだと。
 震える声で仙蔵は続ける。

「私の話を、聞いていただけますか……」
「もちろん。いくらでも」
「色仕掛けをした際、無論、私にも恐怖はありました。過去の天女を知る者として、貴女に対して警戒心があったことは事実です。ですが、それは貴女を試し、追い詰めていい理由にはならない。恐怖を理由に他者を傷つけたのであれば、それは加害です」
「……でも全ての人がそうできるわけではありません。きっと怖くて辛かったことでしょう」
「……辛さが免罪符になるとは、私は思いたくありません」

 そう言い切ると、また深呼吸をする。今度はしっかりとした目で夢子のことを見た。

「ですから、だからこそ今後は態度で示したいと思っています。作法委員会には既に、“天女に危害を加えない”ことを通達しました」
「そんな!無理なさらなくとも」
「いいえ、これは作法委員会のけじめです。私を筆頭に、伝七が貴女に取ったことは許されることではありません。ですが重ねてここに謝罪申し上げたいと思います」

 仙蔵くんは真面目だなぁ、と思った。伝七くんは謝ってくれたのに。こんな誠実なことをされたら許したいって、心が軽くなってくれればいいって思ってしまうじゃないか。
 こう言うのは野暮かもしれないが、あえて言わせてもらおう。

「立花様のお言葉お受け取り致しました。私は作法委員会の皆さまのことを許します」
「そんな簡単にっ!?もっとよく考えてください!!!私たちは貴女に危害を加えたのですよ!!!???」
「もちろん考えましたよ。皆さま覚悟を持って謝ってくださいました。謝ればいいや、などの簡単な気持ちではなく。その気持ちに答えたくなっただけです」

 喜八郎くんには謝られてないがな!!!ことあるごとに言わせて貰うぞ!!!でもここで謝る綾部喜八郎は解釈違い?それはそう。

「貴女は……」

 自己軽視、自己犠牲の塊じゃないか。どうしたらあそこまで怯えさせた人間を許したいと。謝ってくれた心に答えたいと言えるのだ。
 伊作の顔が浮かぶ。きっと早くからこの天女の危うさについて気が付いていたのだろう。じゃないと天女に対してこのような反応はしない。

「私からも、いいですか?」
「あっ、はい」

 夢子からの問いからに仙蔵は居住まいを正す。
 正直聞いたら気を悪くすると思うがこれだけは確認しなければ。

「あの件のあとに伊賀崎様から『立花先輩があんな様子になって』と言われたのですが体調は大丈夫でしたか?」
「は?」
「もし話したくないようならスルーしていただいて構いませんので」

 違う違う!!!なんでこの天女は危害を加えた人間の心配をするんだ!!!なんだか腹が立ってきた。もっと自分を大事にしろ大事に!!!
 ……いや、それができなかったからこそ、天女の被害に晒されたこの学園に馴染むことができたのかもしれない。危害を加えられ、監視をされても動じない精神性。自分を大事にできなかったからなんじゃないのか。そんな人間に私は……
 頭が痛い……

「いえ、少しパニックになってしまっただけです。その、前のことを思い出しまして」
「そうでしたか。お辛いことを聞いて申し訳ございません。ですが、それなら私たちはおあいこ、ですね」
「おあいこ、ですか?」
「私も立花様も互いにびっくりしただけ。そういたしましょう。そうしたら少しだけ心が軽くなりませんか?」
「……軽くは、なりません。確かに、私も貴女も傷つきました。ですから“互いに被害を受けた”という意味では、間違ってはいないのかもしれません。ですが。“おあいこ”にしてしまえば、貴女が怖かったことまで、極端に矮小化してしまうでしょう」
「……」
「私は、それを望んでいません」

 参ったなぁ、仙蔵くんの気持ちを軽くするためだったんだけどな。気遣われちゃった。
 夢子は少し困ったように笑った。

「気遣ったつもりが気遣われてしまいましたね。お恥ずかしいです」
「そんなことありませんよ……もし、良かったら。作法委員会に遊びに来てくださいますか?」
「えっ?」
「一週間後でも一か月後でも、どれほど遠くなってもいいので、貴女の気持ちが落ち着いたときでいいので遊びに来てください。伝七も待っていますから」

 夢子は目を丸くした。
 伝七くんが会いたいと思ってくれているとは思わなかったからだ。そうだ!伝七くんと言えば伝言頼んじゃおう!

「黒門様といえば立花様、少し伝言を頼まれてはくれませんか?」
「伝言、ですか」
「はい。黒門様に『謝ってくれてありがとう』と、お願いします。」
「……確かにお預かりします」

 仙蔵は思った。本当に根っからの善人なんだと。頭が痛い。壺でも売られたら買いそうだ。こいつは今までどうやって生きてきたんだ。
 もういい。まだ酷い顔をしているだろうが自室に戻ろう。天女もストレスがかかった酷い顔をしている。これ以上居たら天女の精神も心配だしな。
 いや、この人は天女なんて極悪なものじゃないだろう。

「では私はこれで長居してはいけませんので」
「まだお顔が優れないようですが……もしよろしければ少しお話でもしませんか?」

 仙蔵くんは先の天女の話からずっと顔色が悪い。この状態で返すのは少々不安だ。保健委員に見つかったらドナドナされてしまう!

「ですが貴女の負担になってしまいます」
「大丈夫ですよ。保健委員会の皆さまに見つかったら強制連行されてしまいそうなお顔ですよ?」

 仙蔵は迷った末、先ほどの位置に座った。仙蔵とて保健委員会の強制連行は嫌だからである。あの日見た俵担ぎなんてされてみたら……!!!
 見世物になるより夢子と話すことを選んだ。

「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて」
「いいえ。何を話しましょうか。引き留めたはいいんですけど何も考えていなくて……」
「では作法委員会のメンバーのことで。なにか困ったことはありませんか?」
「いつも穴掘りしてらっしゃる巻き髪の方は作法委員会の方ですかね?お名前を伺ったら『立花先輩に聞いてほしい』と言われたので」
「ああ。そいつなら綾部喜八郎と言って___」

 一時間ほどであっただろうか。二人は互いの顔色がよくなるまで話し込んだ。仙蔵にとっては久しぶりに女性と恐怖の感情もなく話せた時間だった。
 夢子の顔色を見て、仙蔵は立った。先ほどよりも足元がしっかりとしていた。

「では夢乃さん、今回はありがとうございました」
「いいえ。顔色が良くなってよかったです。では」

 そう言って仙蔵は襖を閉めた。

 ねえ待って?仙蔵くん私のこと夢乃さんって呼ばなかった???バグ???バグだよね???委員会のメンバーは委員長に似ることを考えると、仲良くなるまでは遅いけど仲良くなったら距離が近くなる系なんですか???
 いや自分がそんなに仲良くなったなんて思ってはいないがでも世間話が出来る程度には仲良くなったはずだ。
 仙蔵くんが帰った後は字の練習をして、人の少ない時間帯に食堂にご飯を食べに行き、風呂に入った。
 なんか今日は疲れたな。なんでだろう。知らないうちに疲れがたまってることってあるよね。
 よし、だじゃれは置いておいて寝よう。おやすみ、世界。

「勘右衛門、相談したいことがあるんだが」
「1年いないけど天女関連?委員会の部屋で?こんな真昼間から?」
「ああ。土井先生の色仕掛けの件は知っているな?」
「知ってるけど。どうしたの」
「天女、あの後過呼吸になって気絶してたんだ」
「はっ!?なんで!?」
「わからん。だが保健室に運ばれた後も混乱して妖術をかけたなら死ぬべきだと、殺さないなんて生徒に被害が及んだらどうすると言っていた」
「へぇ~なんか武士か尼みたいな人だな。それで、三郎はどう思ったんだよ」
「少なくとも演技ではないことはわかった。それ以外は自分に害があることを前提に動いてる、よくわからんやつとしか」
「ふうん。にしても面白そうな天女じゃん」
「何言ってるかわかってるのか」
「もちろん。三郎こそいい加減天女に名前教えてあげたら」
「嫌だ。天女に名前なんぞ呼ばれたくない」
「まあいいけど。あ、そのうち豆腐地獄開催されるかも。最近ずっと兵助が豆腐小屋籠もってんだよね」
「はぁ。でも久しぶりだな。豆腐地獄なんて」
「天女騒動でそんな暇なかったし学園がぴりぴりしてたからな」
「ああ。あれは酷かった」
「天女と言えば今回の天女豆腐好きらしいぞ。今度の豆腐地獄に来たりして」
「地獄は豆腐だけで十分だ!私は行かないからな」
「え、嫌だけど。今回の豆腐地獄でどんだけ兵助が豆腐作ってると思ってんだ!強制参加だからな!」
「絶対嫌だ!」

 今日も今日とて同じ時間に起きる。朝餉を食べて、土佐日記を読んでから事務室に向かう。食堂に行くと勉強する時間がなくなっちゃうけど美味しいご飯には勝てない。 
 あと吉野先生の最低ラインを越したからちょっとくらい休んでもいいかなって。でも最近全然勉強してない気がする。なんかほぼ毎日誰かしら来てるな。今日も誰か来るのかな?来るのはいいんだけど炭擦った直後に来るから硯がかっちかちになっちゃうんだよね。来るのはいいけど緊急時以外事前になんか欲しいな。

「おはようございます。吉野様」
「おはようございます。夢乃さん」

 うーん挨拶って体に沁みるんだよね。健康に良い。
 今日のお仕事は外回り!喜八郎くんの落とし穴に落ちませんように!
 小松田さんが来るまで書類仕事をして、外回りの掃除をする。落とし穴の目印が少ない所だから良かった。本当に落とし穴対策を考えないと。縄梯子って買えるのかな?だって助けてくれる人いなかったし!!!今考えると放課後だったから監視を生徒に引き継いでたのかなとも考えられるけど助けてもらえないのは悲しくなる。これも助けて貰えるのが当たり前だったからだが。
 落とし穴の時くらい助けてもらえて当たり前でありたいな。あっててほしい。まあ今のところ助けてくれなさそうな人は数名しか居ないが。あ、でも関わってない委員会の子はわからないかも。
 昼餉の時間になったら事務室に帰り、昼餉を食べ、ちょっと吉野先生たちとお喋りをした。こういう時間って大事だよね~~~精神安定になる。吉野先生に「気持ちの落ち込みはないですか」とか「最近困ったことはありませんか?」って聞かれたのできっと新野先生は吉野先生に言ったんだろう。だが特にない!!!ちょっと学園のみんなが怖くなった時期はあったけど誤差誤差。今は結構緩和してきてるしね!!!
 外回りの掃除に夢中になっていたらいつの間にか放課後の鐘が鳴る。仕事をあがらせてもらって自室に入った時。

「やぁ」

 雑渡昆奈門だ。夢子は襖を閉めてなかったことにした。
 伊作くんにでも報告するかと踵を返したところで襖からにゅっと手が伸びてきて、引っ張られる。倒れたのは雑渡の膝の上だった。

「一名様ご案内~」
「ここ私の部屋なんですけど!?」
「お喋りしようよ」
「保健委員会の皆さんとしたらいかがでしょう」
「みんなとはまた今度話すからいいの」
「雑渡さんは、どうして私に構うんですか?」
「うーん……珍しいから?」

 夢子は膝の上から這い出し、距離を取って座る。
 ざ、雑渡さんのお膝の上に座ってしまった!!!???でもそれ以上に体の緊張がやばい。えぐい。土井先生の色仕掛けの弊害が出まくってるんですけど労災下ります???

「そう言えば聞いたよ孫平くんのこと、君、自分が死ぬかもしれない状況に慣れすぎじゃない?」
「そうですか?全力で抵抗してますけど」
「うわ。抵抗って言葉知ってる?謝った方がいいよ」
「なにがですか。伊賀崎様のことは私が許して終わりました。これでよろしいでしょう」
「私だったら、自分を殺しかけた相手なんて容赦しないけど。君は許すんだ?」
「許すの前に許さないという感情になったことはありませんね」
「……嘘でしょ?」

 バレたか。ちょっと盛ったわ。

「ちょっと誇張しました。根に持つことはありますが許さない、というほどの激情がありませんので」
「……嘘」
「本当ですよ。雑渡様だってわかってるでしょう」
「はー嫌になる。どうも君のことがわからない」

 雑渡は畳に寝っ転がる。タソガレドキ忍軍忍組頭雑渡昆奈門の威厳はどうした威厳は。雑渡さんお団子くれるから好きだけど。でもお団子のない雑渡さんはただの首絞めて来た人で、いきなり切りかかってくる部下がいる要注意人物なのだ。

「……本当に、人を操れないの?」

 雑渡さんが寝っ転がりながら言う。

「はい」
「“今は”?」
「そうですね。今のところ妖術がある自覚もなければ無自覚で事故も起こしていませんので」
「まあでも、少なくとも。色仕掛けで倒れる妖怪は初めて聞いたよ」
「人が倒れたっていうのに最低ですね。デリカシーがないです。元からそんな人でしたけど。では私はここで失礼します。」
「あーあ。最後まで答えてくれたらお団子あげようと思ったのに」
「……」
「君、そう言うところだよ。壺とか買わされないようにね」

 しょうがないじゃないか!!!お団子美味しいんだもん!!!
 いつの間にか緊張が解れていた。推しの前だからかな。なんか怖いけど雑渡さんは雑渡さんだから少しだけ予測しやすい。ちょっと安心感?とは違うけどそれっぽいものはあるかも。なんか気が抜けるというか。
 雑渡さんから差し出されたお団子をありがたく受け取り食べる。二串入っていたから一串勧めたら「食べな」って言われた。うん!今日もおいしい!

「君ってさ、食べてる時だけ普通だよね」
「……何を持って普通とするかわかりませんが普通なんですか?」
「うん。お団子って聞くとそわそわして、お団子を美味しそうに食べて、最後の団子の串を置くときはちょっと悲しそうになるの」
「そんな顔してたんですか私!?」
「可愛かったよ」
「そういう問題じゃありません!!!表情筋を鍛えなくては……!」
「だめだよ。私が見てて面白くない」
「ひ、酷い人だ……」
「お団子持ってきたのに?」
「すみません大変素晴らしい聖人のような方です。お団子を持っているときは」
「くくっ、ははははは!!!」

 うわ怖。なに、笑いのツボどこ???結構な確率で爆笑してるけど何???あとなんかくつろぎすぎでは???
 あ、ちゃんと座った。

「はあ、面白かった。ねえ天女様。そのお団子毒あるって言ったらどうする?」

 毒!?あるんですか!?ま???なにしてくれてんの???団子に毒って仕込めるの???豆腐は難しいって聞いたことあるけど。
 そうじゃないんだよ。今更なんのために。いや、私が気付いてなかっただけで天女が憎いのでは。それくらいじゃないと説明できない。
 まずはあれをやらなくては、とっても苦手だけど。

「吐いてきますね。失礼します」
「ふうんそういう行動も取れるんだ。あ、毒はないから安心していいよ」
「それでも吐きます。失礼します」
「待って待って!お団子好きなんじゃないの!?吐きたくなくない?」

 腕を掴まれる。とっとと離して欲しい。怖い!なにより毒なんて時間勝負じゃないか!それに雑渡さんのことを信用したわけではないからね!!!お前が毒があるって言ったんだろ!!!私は吐く!!!

「吐かせるように仕向けたのは雑渡様ではありませんか。では」
「ではじゃないよ!君の意思硬すぎないかい!?」

 その時、天井裏から緑色の服の忍たまが降りてくる。よかった。2人きりじゃなくなった。

「雑渡さん、やりすぎです」
「善法寺様……!」
「そうだね伊作くん。天女様、ごめんね」

 けっ、それより毒の入ってない証明をしろ。ちょっとやさぐれちゃったけどお団子が絡んでいるんだ。私も冷静でいられない。ついていい嘘とだめな嘘もわからないのかこの雑渡さんは。忍軍のことで私生活のあれこれに頭が回ってないのかも。可哀そうに。

「それはどうでもいいので毒の入っていない証明などはできますか」
「……それは受け取る意思がないということかい?」
「お好きにご解釈してください。すみません善法寺様、……善法寺様?」
「……ゆ、夢乃さんが怒った!!!」

 えっ!!!???そこ!!!???確かに怒っている。怒っているけども!!!そんなびっくりされることではないよ。

「食べ物の恨みは恐ろしいので、証明ができないのなら吐きに行きますので早急に離してください」
「あっ、待って!雑渡さん!雑渡さんの責任なんですからね!」
「そうだね。天女様、ちゃんと聞いてね。これには毒は入っていない。これは忍術学園の麓の町の奥から三軒目の左側にあるお団子屋さんで買ってきたんだよ。伊作くんは子の名前見覚えあるかな?」
「あっ知っています!美味しいですよねここのお団子。ぜんざいも有名ですよね」
「よかった。買った団子だから毒を入れることは不可能なんだよ?これで大丈夫かな?」
「わかりました。ですが雑渡様なら購入した後、毒を団子に塗ったり、毒を塗った串に差し替えたりなんかもできそうなのでもう吐いたほうがいいと思うんですけど」
「君凄い疑うね」
「どなたかが出会い頭に首を絞めてくるからです」
「あっ」

 あっ、ってなんだよ。自分の罪をちゃんと数えておけ???まあ忍者なんて数えきれないほどの罪を抱えることのほうが多いだろうけど。

「雑渡さん……?夢乃さんの首絞めたんですか……」

 あっ!!!ごめん雑渡さん!!!これは私が悪い!!!ごめんね!!!一緒にお説教受けようか!!!頑張ろうね!!!雑渡さん!!!

「ごめんなさい伊作くん今の発言を取り消してもよろしいでしょうか」
「だめです。というか貴女被害者なのに何加害者を庇ってるんですか!!!」
「流されてはくれませんか」
「無理です」
「……雑渡様と保健委員会の方々は仲がよろしいので雑渡様が私の首を絞めたら悲しまれるかと」
「僕は確かに悲しいです!夢乃さんがちゃんと自分の被害を申告しなかったからです!あなたはいつも自己犠牲的な行動しか取らずに僕たちがどれだけ心配してると____」
「私はお仕事があるから帰るね。本当に毒は入ってないから。天女様の件については御免」
「あっ!逃げた!」
「一緒にお説教受けてから帰ってください!!!」

 雑渡さーん!!!仲間だと思ってたのに!!!一緒にしょぼくれながらお説教受ける仲だと思ってたのに!!!やっぱ雑渡昆奈門なんよ。ちくしょう。解釈一致だ。この野郎。一回だけお前が持ってきてくれたお団子拒否してやるからな!!!一回だけ!!!
 しかしまずい。2人っきりになってしまった。伊作くんは危害を加えないとは知ってるけどそれでも動悸がする。原因はわかってるのに対処法がわからない。何故だ。法則性も見えない。それが怖くてたまらなかった。

「行っちゃいましたね……」
「そうですね。で、夢乃さん。雑渡さんにはいつ絞められたんですか」

 逃げ道をください!!!逃げる余裕ないじゃない!!!逃げ道がどこかにあるはずなんです!!!逃げ道をください!!!

「あの、善法寺様に首の赤みを指摘された時に……」
「随分前じゃないですか!?それで、前雑渡さんが来た時もなにかあったんでしょう。もしかして、泣くようなことがあったのですか?」

 す、鋭い……!!!雑渡さん絶対お説教受けてくんないかな。私だけが叱られるなんて悲しすぎるだろう。

「妖術を使えると誤認して……させられてのほうが正しいですかね。それで妖術を学園で無意識にでも使ったのならそれは死あるのみと思い、お恥ずかしいですが泣いてしまいました」
「雑渡さん……!!!そんなことしてたなんて……!!!というか夢乃さんも!死あるのみじゃないんですよ」

 何言ってるんだ。死しかなかっただろう。じゃあなんで軟禁のような真似をしたんだ。なぜ私に見張りが付いたんだ。なぜ雑渡さんに首を絞められたり、石や手裏剣を投げられたとき、止めなかったんだ。そういうことだろう。

「本当に?本当にそうでしたか?」
「え?」
「妖術を使えるということは先の天女と同じ学園をめちゃくちゃにすることも可能です。それをわかっていっているんですか?確かに私は先の天女とは違います。ですが同一視できる部分はそこかしこにあるんです。その存在を恨みを持っている人があんなに居たのに……無理ですよ」
「あっ……」

 伊作くんは大変傷ついた顔をしているがこれが私の見ている世界だ。申し訳ないな。話すつもりはなかったけど雑渡さんとの話し合いで口が緩くなっちゃった。反省。

「僕が、夢乃さんの立場をわかってなかったです。すみませんでした……」

 待て待て謝って欲しいとは言ってないぞ!!!まずいな、ちょっと怒りすぎちゃったかな?それは申し訳がない。過ぎたことなので気にしないで欲しい?いや、伊作くんのセンサーに触れそうだ。うーん。言いすぎましたね、大丈夫ですよ?それ一番大丈夫じゃない人が言うやつじゃん。いいや、センサーに引っかかったら引っかかったでその時だ!

「いえ、お気になさらず。もう過ぎたことなので気にしないようにしています」
「過ぎたことって……あなたは……!」

 ああもう伊作くんの顔が言いようのない感情でしわしわだよ。誰だこんな顔させたやつ!!!私だね!!!ごめんね!!!
 でもそう思うしかないじゃないか。恨みは引き継がない。そのためには許し受け入れる必要があるのだから。

「いえ、僕が貴女のことをわかっていませんでした。では、失礼します」

 そう言って伊作くんはどこかへ行ってしまった。
 怒っちゃったかな。それだったら申し訳ないな。謝りに行く?でも私が悪い……?最初に伊作くんにきついこと言っちゃったのは私だから私が悪いか。
 伊作くん前みたいに話してくれるかな。伊作くんと喧嘩とか寂しくなっちゃうからなにもないといいな。
 あ、動悸収まんない。どうしよ。

 一方伊作、保健室へと走っていた。目指すは新野先生の元へ。

「失礼します!新野先生、夢乃さんのことで話があります」
「わかりました。とりあえず座ってください」
「はい。実は___」

「そうでしたか。でも良い傾向ですね」
「そうなんですか?」
「今までなら大丈夫です、や、問題ありません、だったのが、今回『気にしないようにしています』と言えました。それは気にしてることがある人の発言です」
「あっ!」
「カウンセリングの効果だといいのですが。ですが確実にいい方向に向かっているのは確かです。あの子は自認していても言うまでもないと隠してしまうことがよくありますからね。隠しているという自覚が薄いと言ってもいいでしょう。伊作くん、報告ありがとうございます」
「いえ!こちらこそありがとうございました!」

 伊作は軽い足取りで自室へと戻る。他者優先、自己犠牲の塊みたいな人だと思っていたが、どうやら少しは自分の内面と向き合ってるみたいだ。
 今度会ったら何を話そうか。伊作はそんなことをかんがえながら自室の襖を開けた。

 夢子は伊作のことが気にかかりつつも、文字の練習をしていた。夕餉を食べて、風呂に入り、一息つく。
 お風呂から帰る時に見えた月が満月だったからそろそろここに来て4か月目か。早いな。忘れないうちにだじゃれ言っておくか。

「月にくっつき虫」

 いたら面白いよね。宇宙服破れちゃいそうだけど。
 そう思っていたら、天井裏から変な声が聞こえる。これって……!!!まさか……!!!

「だーっはっはっはっはっはっは!!!」

 守一郎くんだーーー!!!わーーーい!!!久しぶり!!!相変わらず派手に落ちてきたね!!!怪我してないかな?

「浜様!お久しぶりですね。怪我はされてませんか」
「大丈夫ですっ、くくっ、月にくっ”つき”虫なんてっ!あはははは!!!」
「笑っていただけて何よりです」

 守一郎くんが癒しだ。まじでこんなしょうもないだじゃれに笑ってくれるの守一郎くんと安藤先生だけだからね!!!ありがとうね!!!
 そういえば2人っきりだけど動悸も緊張も全然しないな。うーん線引きがわからん。

「はっ!今思いつきました!月を見て思いつきましたなんてどうでしょう!月だけに!」
「ふふっ、あはははは!」

 くだらねーーー!!!しょうもねえ!!!笑いが止まらん!!!月を見て思い”つき”ましたなんて!!!くそっ!!!

「はははっ、天女様も結構笑うんですね」
「ええ。楽しくなったり動物たちと触れ合ったり美味しいものを見たらつい。ふふっ」
「ははっ。いいですね。夢乃さ、天女様ってもっとお堅い人なのかと思ってました!仲良くなれて嬉しいです」

わ、私もだよーーー!!!仲良くなれたなんて!!!んな光栄な!!!ありがとう守一郎くん!!!君のおかげで救われてる命がある!!!今まさにここにな!!!

「ふふっ、それはこちらこそ。浜様さえよければ夢乃、とお呼びください」
「え!?いいんですか!?」
「もちろんです」
「じゃあ俺のことも守一郎でいいです!」

 おーっとそれは行き過ぎてないか……?でも妖術使えそうにないしな。よし!!!ちょっとだけ自分のために行動しちゃお!!!先生方はごめんね!!!でもなんか思った以上に受け入れられているらしいし!!!呼びやすい方がいいしね!!!でも一応危険性については話しておこう!

「いいのですか?私は害の可能性がある存在なのですよ?」
「いいんです!もしそうなったら、その時考えます!」

 が、ガンギマリ過ぎてる!!!???覚悟やば!!!???そんな覚悟で居てくれたの!!!???なら、その覚悟を返すしかないよなぁ!!!

「かしこまりました。守一郎様」
「ありがとうございます!名前で呼んでもらえるのって嬉しいなぁ!俺、ずっと城に籠城してたから人との関わりがなくて、でも忍術学園に来て思ったんです。人との関わりって人の人生を変えるんだなって」
「そうでしたか。よかったです。ちなみにお名前で呼ぶのはシナ先生と守一郎様二人だけなんですよ」

 そうなんだぞ~~~!!!小松田さんや伊作くんでさえ持ってないものを君は持ってるんだぞ~~~!!!ちょっとだけプレミア付きだぞ~~~!!!

「え、ええ!そんな!善法寺先輩とかは?」
「名前呼びを許可されたことも、呼ぼうと思ったこともありませんね。変に特別視してはよくないかと思ってご本人が許可をくださるまで呼ばないようにしています」
「そうだったんですね。ちょっと嬉しいです。特別みたいで」

 みたいじゃないんだよ!!!特別なの!!!言わないけど!!!そんなガンギマリの覚悟を見せてくれたからこそ仲良くなりたいって思ったからやっぱり特別だよ、守一郎くんは。なんか、安心する。最初っから敵意が見えなかったし憎悪もなかったから過ごしやすいんだ。
 空を見ると月が高い。まずい!祈らないと!

「ありがとうございます。守一郎様、そろそろ月に祈る時間なので失礼しますね」
「それ!隣で見ててもいいですか!」
「いいですけど、面白いものではないですよ?」
「大丈夫です!」
「かしこまりました。では失礼しますね」

 そう言うと夢子は月に向かって正座をし、祈る。体内時計で約十分祈りきると周囲を確認して、いつもの言葉を呟いた。

「また、帰れませんでしたね」
「……夢乃さんは、帰りたいんですか?」
「はい。私の父と母が、職場の皆さまが、私の生活が待っておりますので」
「そうですか!」
「では私はそろそろ寝ます。おやすみなさい、守一郎様」
「おやすみなさい!夢乃さん!」

 そう言って布団を敷き、眠る。おやすみなさいって誰かに言ったの初めてかもしれない。
 おやすみ、世界。おやすみ、守一郎くん。

— End —

Comments 31

華柊6 天前

一話から連続で読みました、大変面白かったです! 夢乃さんのぽそりを呟かれる駄洒落に笑ってしまう守一郎と安藤先生に癒されています、夢乃さんの心身ともに健康であることを祈ります!

蓮華の蜂蜜7 天前

コメント失礼します! 一話から読み始めたら面白すぎて止まらず一気読みしてしまいました。素敵なお話をありがとうございます! 季節の変わり目ですのでお体ご自愛ください

ぐみを7 天前

おやすみダジャレの度に登場を楽しみにしておりました!浜君とのやり取り癒やしです✨名前呼びの特別感良いですねぇ💘過保護伊作君連発でニッコリ😄次はいよいよ5年生オールとご対面…!?夢主にひどいことしちゃ駄目よゴネンセッ😠🫵

林檎7 天前
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龍龍7 天前
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桜徒8 天前
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ハル8 天前
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ゆでだこ9 天前

更新ありがとうございます!!!守一郎ともっと関わって欲しいなぁと思っていたので本当に嬉しいです!!悪意のないキラキラした守一郎だからこそ夢乃ちゃんと仲が良く特別になれるのかなと思いました!もっともっと仲良くなれぇ〜!あとダジャレも面白いです!更新待ってます!

忍乃崎9 天前

食堂解禁にニッコリな天女ちゃんに私もニッコリです☺ 作法委員会とほぼ和解出来て本当に良かった!少し怒った様子を見せる天女ちゃんにツンとした猫ちゃんっぽさを感じたのは私だけでしょうか?可愛いです! 色んなリクエストでどんなお話が読めるか今から楽しみです!

まめ9 天前
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ラストサマー9 天前

更新ありがとうございます😊 確かに前より和解して生徒、先生達も落ち着いてきたけどやっぱり帰してあげて欲しいかも

芳野秋生@戻ったー!!9 天前

雑渡さん、推しだから多少のあれは見逃してもらってるんで程々に。 でも怒れるようになってよかった、けど男性恐怖症が残ってるぽいのが心配です。

Sakuria
Where every work blooms
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