SIDE:ゲオルギーネ
叔父様と連絡が取れなくなったことをジルヴェスターに確認したところ、叔父様が処刑され、お母様は白の塔に幽閉されたと知らされました。
叔父様には魔力の横流しを依頼しておりましたし、お母様と組んで数々の悪事に手を染めていることも知っておりましたので、いつかは悪事が露呈するかもしれないとは考えておりましたが、ジルヴェスターにしては早かったですね…。側近もお母様の息のかかった者ばかりで固められていましたが、誰か優秀な者でも入ったのかしら?
叔父様のことは残念ですが、お母様のことは良い気味です。わたくしを蔑ろにした罰なのだと思うと、白の塔でお会いするのが楽しみでなりません。
エーレンフェストに到着し、歓迎の宴が催された後、ジルヴェスターから話があると別室に呼び出されました。
「ゲオルギーネ姉上、姉上はギーベ・ゲルラッハ夫妻、ダールドルフ子爵夫人……計12名の名捧げ石を未だお持ちですよね?
既に確証を得ておりますので、否定しても無駄ですよ」
ジルヴェスターが口にした情報は確証を得ているというだけあって全て正確でした。叔父様の記憶を見たのでしょうか?叔父様ですらご存知なかったはずの情報までジルヴェスターが正確に把握しているとは驚きです。
「ええ、領地が別れたとしても生涯わたくしの側近でありたいと願われましたので…」
「そうですか……たとえ姉上を慕う元側近達の希望だったとしても他領の者の名を受けるのは厳罰の対象とされている違法行為です。アウブとして知ってしまったからには、姉上だからといって見逃すことはできません。名捧げしている者達には明日城に来るよう命じていますので、アーレンスバッハにお帰りになるまでに全ての名捧げ石を返すというこの契約魔術にサインしてください。
その代わり、どうしても姉上に一生涯の忠誠を誓いたいと希望する元側近がいる場合は、名捧げしている本人に限り、アーレンスバッハに連れていき、アーレンスバッハで改めて名を受けることを認めます。ただし、ただでさえエーレンフェストの貴族は少ないですから、その家族等はエーレンフェストに残すことが条件です」
「わかりました。そのようにいたしましょう」
__ここは素直に従うふりをするのが正解でしょう。とりあえず一旦名は返しますが、できる限り多くの者をアーレンスバッハに連れ帰って改めて名を受けるべきかしら?
本当はエーレンフェスト内にも手駒を残しておきたかったのですが…。
今後のことも考えると、むしろグラオザム達忠臣はエーレンフェストに残すべきかしら?
翌日、今度はフェルディナンドからジルヴェスターに関する相談があると面会依頼が届きました。
わたくしの婚姻後にお父様が引き取られたため、先日の領主会議でジルヴェスターの隣にいるのを見かけた程度で、異母弟ですが先日の歓迎の宴までほぼ面識はありませんでした。
貴族院時代は6年間最優秀を取り続けるなど、ジルヴェスターとは比べ物にならないほど優秀な弟だと聞いておりましたし、婚姻相手が見つからないほど魔力量が多いらしいという噂も耳にしております。
しかし、お母様の虐待から逃れるために神殿に逃れ、還俗した今も神殿に引きこもっていて、今は見る影もないと言います。
__叔父様も嫌っていらっしゃったようでしたし、そんな弟がわたくしに何の用なのでしょうか?
人払いをし、盗聴防止の魔術具を起動させるなり、フェルディナンドは本題を話し始めました。
「ゲオルギーネ姉上、姉上もお気付きかと思いますが、ヴェローニカの傀儡アウブであったジルヴェスターは現状アウブとして機能しておりません。
このままではエーレンフェストが崩壊してしまいます」
__わたくしのゲドゥルリーヒはエーレンフェストです。そんな簡単に崩壊などされては堪りません。
「崩壊するとは?」
「そのままの意味です。
ジルヴェスターは未だに学生の頃のように執務から逃げ出すことがよくあります。
さらに周りが第二夫人・第三夫人を娶るように言っても、一切耳を貸さず、唯一の成人女性領主一族であるフロレンツィア様は微笑んでいるだけ。
ジルヴェスターが隣に居てくれさえすれば良いなどと求婚の際に言ったのだろうことは想像にかたくありませんが、第一夫人の職務も第二夫人の職務も放棄されています。
そんなお飾りでしかないアウブ夫妻に領政を任せていてはエーレンフェストがいつ崩壊してもおかしくないという意味です。
どうかエーレンフェストを崩壊させないために力を貸していただけないでしょうか?」
「力を貸すとは?」
__ジルヴェスターは学生時代から何も成長していないのですね。長男だからとそんな者をアウブに据えるなどお父様もお母様もなんと愚かなのでしょうか…。
ジルヴェスターはアウブに相応しくない、アウブになるべきはわたくしだと前々から思っていたのは事実ですが、いきなりこの男は何を言い出すのでしょうか…?
「ジルヴェスターはこれ以上の成長が期待できないため、名ばかりの傀儡アウブのままにしておくのが妥当だと考えております。
アウブとなって5年ほど経つにもかかわらず、未だ自身の派閥と呼べる勢力はなく、ジルヴェスターが次期アウブと指名していた長男のヴィルフリートは教育不足により既に廃嫡になっています。
領主一族は二大派閥である旧ヴェローニカ派の貴族にもライゼガング派の貴族にも侮られ、城の文官達はやりたい放題で、内部から崩壊する未来しか見えません。
そこで、能力も求心力もジルヴェスターの比ではない姉上にジルヴェスターの裏でエーレンフェストの実権を握っていただいた方が良いのではと考えたまでです」
「そんなことできるのかしら?」
__とても魅力的な話に感じてしまい、率直な疑問が口に出してしまいました。
「ジルヴェスターもフロレンツィア様もアウブという地位さえ保証されて、面倒な執務から解放されるなら、アウブの実権など簡単に渡してしまうと思います。
アウブにならないという契約魔術にサインでもすれば、喜んで姉上を城の要職につけると思いますよ」
__仕事が減ると喜んでサインするジルヴェスターの姿は容易に想像できますが、フェルディナンドの言葉には絶対に裏があるとわたくしの第六感が言っております。本当にこの男の考えていることは理解ができませんし。
「……意味がわかりません。なぜそのような話をわたくしにするのでしょう?」
「第三夫人から第二夫人になられたとはいえ、アーレンスバッハでの待遇が未だ宜しくないという噂を耳にしましたので…。
あとこれもまた噂ですが、今年はランツェナーヴェからの船が来ておらず砂糖や香辛料が入ってきていないらしいとも…。
ですから、姉上のアーレンスバッハへの未練や執着は多くないのではと考えた次第です。
もしそうであれば戻ってきていただきたいと…」
「……」
__わたくしの待遇のこともランツェナーヴェのことも事実ですが……
「姉上が非常に優秀で、アウブになるべく弛まぬ努力をされていたことは、リヒャルダ等から聞いておりますので、大領地のアウブの第二夫人相手に不躾なお誘いであることは重々承知しておりますが、適任なのは姉上だと考えた次第です」
「あら、ジルヴェスターの補佐ならエーレンフェストにはカルステッドも貴方いるでしょう?」
「カルステッドは騎士としては優秀ですが、書類仕事などには向きませんし、何より領主候補生コースを履修していませんからできない業務が多すぎます。
私もアウブという肩書きにも権力にも全く興味がございません。むしろ面倒だとさえ感じております。
領主候補生としての義務は果たすべきと考えておりますので、汚職が蔓延していると思われる城の財務改善、城の文官の鍛え倒しくらいはしようと思っていますが、それ以外は研究など好きなことに時間を使いたいというのか正直なところです。
ですから、もし元々アウブを目指されていた姉上がアーレンスバッハで力を持て余していらっしゃるのであれば、エーレンフェストで遺憾無くその手腕を奮っていただきたいと考えたのです」
「そう……。確かにわたくしは成人頃までアウブを目指していましたし、あのジルヴェスターをアウブにするというお父様やお母様には憤りを覚えたのは事実ですが……何か裏があるのではなくて?」
「裏と言いますか……ゲオルギーネ姉上はアーレンスバッハではなくエーレンフェストで実権を握ることをお望みなのではと愚行したまでです。
裏があるとすれば、領政に頭を悩ませることなく研究などに没頭するために、安心して領政を任せられる誰かにエーレンフェストのことを任せたいといったところでしょうか…」





















ジルフロからの集りを、ロゼマや自分が背負いたくないってのも有るんだろうなぁ…。面倒事は、ゲオ様へ!ww フェル様が好きに研究したいってのも本音でしょうが…その他の条件に、ロゼマとの婚姻は絶対!って言いそう。www