青い空!白い雲!!知らない土地!!!
……はい。というわけで夏休みに入ってすぐの金曜日、私は福岡旅行にやって来ました。テンション上げようとしたけど暑さで普通に無理でした。
旅の発案者、ホークスの交通手配は恐ろしい程早かった。登録したチケットアプリには直ぐに搭乗券が送られてきたし、空港への交通賃の名目で電子マネーも送金されてきた。あの、桁が多いんですが。というかそれくらい自分のお金(バイトしてないから両親の仕送りではあるけども)で行きますけど……と抗議したら『今回の旅は高校祝いも兼ねとるばい!一銭も出させるつもりないけん!!』と押し切られた。祝いの規模デカイのよ。もう、諦めていいか(大の字)。今までの積み立ても考えて、私が働くようになって月数万ずつホークスに送るようにしたらいつ釣り合いが取れるんだろう。仕送り2年分もあるからな。
キャリーケースには2泊分の荷物とホークスに渡す静岡土産が入っている。手荷物受取所でキャリーを回収しタクシー乗り場のある外へ出た。
「3番?の乗り場らしいんだけど…………あ、いた」
キョロキョロ辺りを見回せば、停止したタクシーとその傍に立つ人影が目に付いた。被っているキャップの下にはブロンドカラーの髪が覗き、肩甲骨のあたりは穴こそ無いものの不自然に膨らんでいる。
「ホークスさん」
「お!無依ちゃーん!よう来たね!」
名前を呼ぶと彼はキャップのバイザーを上げ満面の笑みで駆け寄ってきた。
「長旅お疲れ」
「最短のプラン過ぎて長旅感ないですよ。空港までお迎えありがとうございます」
「いやいや!観光案内人兼保護者やけん、当たり前ばい。それよりお忍び仕様になってる?」
「パッと見はバレなそうですよ。顔見られたら一瞬ですけど、プライベートの雰囲気出てますし騒がれるリスクは低そうです」
「そう?なら良かった」
ホークスはそう言ってナチュラルに私のキャリーを取りタクシーへ向かう。事前の旅計画で私は目立ちたくないし、ホークスはせっかくの休暇だしということで、無理のない変装をしてもらうことになったのだ。まじまじ見られたり声に反応されたら一発アウトだけど、トレードマークの赤い羽根が無いだけ目眩ましにはなっていると思う。剛翼を全部置いてくるのは怖くないのかなと思っていたけど、たぶん肩掛けしてる大きめのリュックに入れてきたのかな。どれくらい入れてきたんだろう。よく入ったな。
「無依ちゃーん!いくよー?それともエスコートをお望みかな?」
「ご遠慮します。今行くので少々お待ちを」
「通常運転の塩対応」
そうは言いつつ差し伸べられた手を払うほど人でなしじゃないのでタクシーの上座へ大人しく連れられた。私この旅の終わりとかに砂糖吐かないかな。あなたがやるおふざけの威力凄まじいのよ。
シートベルトを締め、ホークスも準備が整うと目的地を伝えたタクシーが走り出す。当たり前だけど見慣れない景色が窓から見えて落ち着かない。不意に隣へ視線を移したら、じっと凝視してくる双眼とかち合った。
「えっ、なに、怖いです」
「あっ、ごめん。いや、いつも制服やったりラフな服の印象やったんけど、今日は雰囲気が違うなと思って。ていうかメイクしとーよね?ばりあいらしか」
「あ、ありがとうございます。そうなんです。せっかくの旅行ですし……あとJKと歩くプロヒーローって事案かなと思い、少しは大人っぽく見せようかと……」
「無依ちゃんの気遣いがかえって俺ん心ば抉る。ばってん正論でなんも言えん……」
いやホークスのことは全然若いと思ってますけどね。でも血縁でも地縁もある訳じゃないのに地元土産とか旅行とか貢がれてるの、パパ活と変わんなくない?今言語化したらめちゃくちゃ変な関係を再認識してしまった。 チベスナ顔になってしまうな。
普段は高校生らしくいるけど言うて中身は大人なので久しぶりのメイクはなんだかんだ手が覚えていた。プチプラで揃えたコスメを使ってメイクを施した顔は多分ギリ高校生には見えないくらいだと信じたい。アイラインは目尻をゆるく跳ね上げて、その上に赤のアイシャドウを細く重ねた。せっかくホークスと出かけるから推し活らしく色を取り入れた結果だ。これが本人にバレるとまた面倒臭いのだけど、ホークスはメイクのコンセプトまで気づいていないみたいだった。セーフ。
服はノースリーブニットにシアーシャツを羽織り、ミモレ丈のタックスカートの下にヒールの盛ったサンダルだ。特別トレンド感のある着こなしではないけれど、良いように言えば洗練されていると言うのだろう。というかラフな服って貴方来る時がいつも突然なんだから適当な服を着る以外のことできないのよ。『今仕事で無依ちゃんの地元来てるんだけど寄ってよか?』で30分後とかに来るからじゃん。仕事を早く終わらせるのは偉いから一旦仕事が決まったら来る連絡挟んで?
「初日は何するんでしたっけ」
「買い物と、お腹空いとったら博多ラーメン食べん?」
「おぉ、福岡っぽいですね」
20分ほど乗っていただろうか。気づけば外には派手な建築構造のショッピングセンターが見えていた。道端にタクシーが停車し後部座席のドアが開く。先程の宣言通り彼は私に払わせる気がない事を踏まえ、それはそれとして会計してる所を見てるのも気まずいかなと車を降りた。ら、同時にホークスも「じゃあ後連絡するんで!」と降りていた。
「あれ、お支払いは?それにキャリーも」
「ん?あぁ、貸切頼んどーけん。キャリーはこん後泊まるホテルに持ってってくれるばい」
「さすがホークスさん。やることが違いますね。怖」
「褒めと怯えが同時に来んことあるったい?」
怖いよ。効率も考えた惜しみない出費。この後も別にあっちこっち移動する訳じゃないだろうに。もう考えたら負け。考えたら負けだから(遠い目)。
ショッピングセンターに近づいていくと敷地内に噴水があるらしく、穏やかなせせらぎが聞こえてくる。じっとりとした暑さが幾分か和らぐような気がした。
平日だけど学生が夏休みだからか、親子連れも多いような印象だ。「思ってるより混んでました」と小さく零すと「いつもよりは多いけどこんなもんだよ」と教えてくれた。そうなんだ。さすが地元ヒーロー、何でも知ってる。
「……こんな中で『ホークスさん』なんて呼んだら変装の意味無さそうですよね」
「たしかに!よう気づいたね」
「声がわざとらしいんですが。普通にホークスさんも気づいてたでしょ」
「バレた?いやー、どう呼んでもらおうか考えとったら、そもそも俺んことさん付けで呼ぶん無依ちゃんくらいだなーって思考が脱線してね」
「そりゃ私より大人ですし。でもそう言われたら、世間もヒーロー同士も呼び捨てが多いイメージですね」
ヒーローは一種タレントのような扱いを受ける側面から、インタビューじゃ形式的にさん付けで呼ばれることもあるだろうけど、基本的に呼び捨てのイメージかも。それにホークスはヒーローの中じゃ若いからさん付けで呼ばれることも少ないだろう。ましてやプライベートでホークスより年下の子の付き合いって私や常闇くんくらいなんじゃないか?
「んー……今日の私が大人っぽく見えるなら、いっそさん付けじゃない方がいいですかね?撮られた時用のブラフになるかはわかりませんが」
「え!?無依ちゃんのタメ口!?2年間ずっと固かガードがここで!?」
「なんですかその評価。そもそも割と崩れがちだと思いますけど」
主に貴方に振り回されてるせいで。にしても仮名かぁ。まあねー、彼にはヒーロー名しか無いからな。鷹見啓悟の名前好きなんだけどな。今は捨てた名だから呼べないし。ホークス→鷹→たかくん、で安直に行けるけど嫌かなぁ?なんて、薄ぼんやり思っていた瞬間だった。
「――ケイくん」
「……え?」
「今回だけ、ケイくんはどげん?」
どう、なんて聞いてくるホークスの顔はお得意の営業スマイルが貼り付けられていて本心が窺えない。公安に拾われた時捨てた名前じゃないの?私がその名を呼んでもいいの?正直、彼がその名前を気に入っているかは分からなくて。『鷹見』を捨てることは母親との繋がりを捨てることだと言った思考は彼のヒーロー像のあり方を彼自身に問うもので、その名前を気に入っているかどうかは別問題。
「……じゃあ、それで。啓くん、暑いから早く行こ」
でも、他ならない貴方が提案してくれるなら、是非呼ばせてもらおうか。名前を呼んだホークスは三白眼をきゅうっと細めて柔らかな笑みを浮かべた。
「行こ!迷子にならんよーに手繋ぐ?」
「嫌です」
「ふはっ、辛辣たい」
それはそれ、これはこれ。振り回されないように必死なんです。
◇
まずは腹拵えとしてレストラン街でイチオシの博多ラーメンをいただいた。本場の博多ラーメンは麺が細め固めでめーちゃくちゃ美味かったんだけど、それより驚いてしまったのはホークスの食べる早さが桁違いだったこと。
ヒーローは緊急招集がかかったり休憩の時間があんまり取れないだろうから早食い気味になるだろうなと思っていたけど、私が半分食べた頃に替え玉してて怖かった。その上私が食べ終わるまでの5分ぐらいを完食して暇だからって眺めてきて余計怖かった。この人餃子も頼んでたのに。ひとつ貰ったけど普通に私の倍食べてる。なんかあれかな。フォアグラにでもなるつもりかな。脂肪肝のリスクあるから今のうち気をつけた方がいいよ。
お腹いっぱいで一息ついた後はあちこちで着せ替え人形にされてしまった。端から端まで店を回ったんじゃないか。ちょっと気になる店は「遠慮せんと!」と全力で連れられるし普段着ないタイプのブランドも「挑戦挑戦!」とコーデを組まれて試着室へポイだ。悔しいことにセンスはいいので意外にしっくり来てしまうことが何より腹立った。そしてすぐ財布を出すな。半分くらい阻止できたけど、逆を言えば阻止できなかった紙袋がホークスの腕にたんまり。百歩譲ってありがたく使わせていただきますけど、パーティードレスと水着はどこで着るんだよ。こちとら学生、まだ呼ばれて行く機会も無ければ、焼けたくないから海も行かないぞ。
「そげんむくれんで。どれも似合うとったばい」
「現役JKよりパワフルなのやめてよ。啓くんは買わなくていいの?私ばっかりじゃん」
「俺は個性の分加工が必要やけん。それに服買うたっちゃ日頃着るんはほぼヒロスだしね。ま、俺も必要なもんは買うたけんよかろ?」
「必要って、水着1着だけ……。んー、じゃあ雑貨屋さんとか……あ、ゲーセンある。ちょっと見たい」
プンスカ文句を言いながら(全部買ってもらってるので別に言える立場ではないが。この保護者ほんとに怖い)歩いていると、大型のゲーム機が並ぶエリアの前まで来ていた。リズムゲームの爆音やUFOキャッチャーのピコピコしたBGMが響くそこに足を運ぶ。
「……啓くんってUFOキャッチャー得意そう」
「やったことなか。でも取れるんやない?」
「やってやって。ド失敗してもいいから」
「いいけど今カメラ回し始めた?」
さあなんのことかな?成功するにしても失敗するにしても見たいものは見たいしあわよくばカメラに収めたい。
欲しいものある?と聞かれていくつかの台を見回すと『ヒーローころころマスコットver.3』という名前の丸いぬいぐるみが転がっていた。数種類ある中にホークスもいる。
「これがいい」
「おっけー。あれ、でもこれあげんかったっけ?」
「あるけど、鞄に付ける用」
他のヒーローでも全然嬉しいけど、折角本人が取ってくれると言うのでね。私がなんだかんだヒーロー『ホークス』が好きなところを見せるとニヤニヤされるのが気恥ずかしくて癪だけど。
ちょっとだけぶっきらぼうにそう言うと、ホークスはにんまり笑って台にコインを入れる。他のぬいにちょっと埋もれているような気もしたけど、そんなことは杞憂だったらしい。なんと3回で取ってしまった。最初はアームの力とぬいぐるみの重さの兼ね合いを見て、2回目にはボールチェーンに上手いことひっかけて埋もれてるところから引き揚げていた。3回目で見事アームに掴まれたホークスのぬいが取り出し口からコロンと落ちてきた。
「はい、どーぞ」
「ありがとう……やっぱり空間認知能力が高いね」
「そうかも。さ、次は無依ちゃんの番ばい」
「えっ、私やらない」
「俺にやらせといてやらんつもり?」
ほらほら、どれやる?と小銭を今にも入れようと構えるホークスに結局押し負けて同じ台にお金が投入された。ほんとにやったことないんだけどこれどうしたらいいの。沼る自信しかない。
とりあえずいくつかあるうちのエンデヴァーぬいに狙いを定めてアームを動かしてみるが、掘り出すどころか埋めにかかってる。ホークスには私の狙いが伝わっているだろうけどそれはそれとして埋もれていくエンデヴァーぬいと、落ちていく私の表情。それがホークスに大ウケで、堪えきれない大爆笑の彼の顔がガラスに反射して。
「啓くん……怒っていい……?」
「っはっはっは!はーっ、おもろ。手伝うよ、ほらボタン押して」
「最初から手伝ってくれれば1000円無駄にしないで済んだのに……」
「無依ちゃんの百面相に1000円以上の価値あるけん大丈夫」
何も大丈夫じゃないよ。操り人形として指示された通りにアームを動かすと2手で取れてしまい、余計にチベスナ顔になった。でもUFOキャッチャーで何かを取ったのは初めてだ。取り出し口から落ちたエンデヴァーを掬い上げ、ホークスに主張する。
「……人生で初めて取れた」
「ほんと?やったじゃん」
「うん。ありがとう。もしよかったらあげる」
「いいん?」
「啓くんのおかげだし、私は私で貰ったし。……まぁ、要らないなら家のホークスと並べるからいいけど」
「も、もらう!ありがと無依ちゃん」
実はヒーローの中じゃエンデヴァーが好きなんだ、とぽわぽわの表情でエンデヴァーぬいをつつくホークスの表情は幼少期の無垢な彼が重なっているような気がした。知ってるよ。真実を知っても憧れを憧れのままに、助けに行く貴方はかっこよかったもの。
遊び倒したしちょっと疲れたかも。時間も夕方に差し掛かっていて、いい頃合いかなと思っていたらホークスも「ホテルに行ってみる?」と提案してくれた。呼んですぐ来てくれたタクシーに乗り込み、まだ私は知らない宿泊地へ向かっていく。
まさか、まだ事件が待ち構えてるなんて思わないじゃないか。
バッッッッカ高ぇホテル!!!!(二重の意味で)落ち着けよパトラッシュ……なんて言ってられないほど脊髄反射で冷や汗が溢れている。見上げた雰囲気から高級なのが伝わるもんな。ロビーの入り口から違うもんな。
「……ほんとに?ドッキリじゃないの?」
「ちなみに夕飯はディナー予約しとーよ」
「もうやだ常識外……」
「服はそんままでも大丈夫。でも買ったワンピース着んなら合わせるばい」
さらりと落とされた発言であのパーティードレスが意図されて買われたものであると気づいた。こんなすぐドレスの出番があってたまるかよ。ホークスは頭を抱えて目がキマってる私の絶望顔をけらけら笑いながら追加の爆弾を落とした。
「ここ屋上にプールもあるけん、ご飯ん後行かん?」
「!?!?確信犯!!」
「疲れたろーし無理して行かんでも大丈夫ばってんね?」
「ここで行かない選択ができるのは石油王の娘くらいです」
でも一旦休ませてもらってもいいですか?チェックインをして案内された部屋は高層階のダブルベッドのゲストルーム。ここでスイートルームまで取ったら気絶するかと思って、とはホークスの供述である。うん、普通に寝込むかと思った。というかディナーの時間まで余裕があったのでお部屋で1時間ほど仮眠(というキャパオーバーの気絶)を取った。体力なさすぎかも。ホークスはこの体力のなさまで織り込み済みなのかな。ちなみに隣の部屋はホークスがいる。
ディナーの時間が近づいてきたので購入品の中からパーティードレスを取り出した。シフォン地のワンピースは裾の広がりが上品な華やかさを演習していてかわいい。ライムカラーが落ち着いた印象でも重たすぎなくて、私のこの歳でもびっくりするほど馴染んでいる。
合わせて買ってくれたパンプスを履き部屋を出ると、ジャケットを着て羽は元通りのホークスが待っていた。
「やっぱり似合う」
「ありがとうございます。羽はもういいんですか?」
「もう人目につかんけんね。予約は個室やけん無依ちゃんも気張らんでよかよ」
「あ、そうですか……はい……」
まあ、個室の方がホークスも人目気にしなくていいんだろうし。なら呼び方も口調も戻していいか。
エスコートに渋々従い会場へ着くと絶景の個室へ通され目眩がした。やっぱりさ、原作よりネジ何本か飛んでるよね?知らぬ恋人への予行練習とかにされてる?ディナーは言わずもがな、めちゃくちゃ美味しかったです。
食事を終えひと休みした後、再び時間を合わせて今度はプールへ向かった。更衣室で水着に着替えてプールサイドへ出るとホークスも今日買った水着を着てビーチチェアに座っていた。
「見てほら、ジュース持ってきてもらったよ」
「かわいいです。トロピカルな色してますね」
カクテルグラスに注がれた黄色と青の炭酸がシュワシュワと水面を揺らしている。これがSNS映えと言うやつか。人生で有るか無いかくらいのナイトプールを記念としてひとしきり写真を撮る。普通に綺麗とは思うのよ。キラキラ陽キャイベントに縁がないだけで。
少し湧いた好奇心に従って揺れる水面に足先をつける。パシャ、パシャと遊ばせるとライトアップを反射して水滴が瞬いた。綺麗だな、と顔を上げて一望できる街並みを眺めていると、視界にチラチラと赤い羽根が飛んできた。
「どげん?気に入った?」
「縁遠いものと思っていたので想像よりとても。連れてきてくださって本当にありがとうございます」
「俺も無依ちゃんと楽しめて良かった。それよりさ、まだ教えてくれんと?」
「何をですか?」
「個性の話!詳しい内容お預けなんやけど?」
あ、忘れてた。実際に見せるタイミングを図ってたとも言えるか。身体が安全を確保できなきゃ危ないだろうし。
チェアに座っているホークスの近くまで行き、ドリンクが乗ってる机を挟んで並ぶ隣のチェアに腰をかけた。元々見せるつもりだったけど、今日はサプライズばかり仕掛けられてるし、演出でも足そうかな。
「そもそも私が個性を自覚してなかったのは、発動の感覚が眠って『夢を見る』現象と一緒で気付けなかったんです」
「無依ちゃん的には寝てるだけだと思ってたけど、個性のトリガーにもなっとーってこと?」
そうです、と相槌を打ちながらグラスをもうひとつ近くにあったテーブルへ避難させ、空いたテーブルにはタオルを敷いて場を整える。
「私がいいって言うまで目閉じてくれますか?」
「ん?うん」
ホークスが目を閉じたことを確認して私も背もたれに体を預けた。彼の背中の剛翼が感覚を研ぎ澄まされてることに気づきつつも、目を閉じて個性を発動させる。1度自分の膝の上にいる猫をイメージし無事実体化できたことを確認してから、タオルを敷いた机の上へ飛び乗った。
「はい、いいですよ」
「……?開けるよ?……え、猫?もしかして無依ちゃんと?」
「そうです。なりたいものを夢で描くと実体化できるのが私の個性だったみたいです。なので本体の体はすやすや寝てます」
「ほんとだ。知らんかったらただ寝とーだけに見える」
宙を彷徨うホークスの手にすり、と顔を擦り寄せる。鷹って猫の天敵だから触り慣れて無さそうだなと思って。中身が良くも悪くも私なので触られるのは抵抗ないし、お腹あたりの感覚はそんなにないから触られたところでセクハラとも何とも思わないのです。
「やば……ふわふわ……これって無依ちゃんが頭ん中で猫を描いたけんこうなったって事?」
「理解力が高いですね。そういうことです」
「…………ふうん?それってさ、犬も鳥もなれると?」
「なれます。無生物でもお手の物です」
「見てみたか、無依ちゃんのカラス」
「いいですよ、カラスで、すね………………」
一度個性を解除しようと瞼を落としかけた瞬間、(なんでピンポイントでカラスなんだ?)と過ぎった疑問のまま閉じかけた目を開けてしまった。目の前の開いた瞳孔が怖すぎてヒュッと息を飲む。テーブルに乗って目線を揃えるんじゃ無かった。
ギュッと目を瞑り個性を解除する。元の体に戻ると私はすぐに立ち上がって更衣室の方へ足を向けた。
「……すみませんちょっと悪寒がするので戻りまっ、ギャッ!」
「ここまで来たら逃がさんばい。何度か見ようバイカラーのカラス、あれ無依ちゃんやったと?夢に見てまで俺に会いに来てくれたと~?」
早足になった瞬間剛翼が行く手を阻んできて逃げられなくなった。後ろから聞こえる声が酷く愉しげで後悔が押し寄せる。なんでそんな記憶力あるんだ。公安だからか??公安だからなのか??
白状をすると、ヒーロー活動をしてるホークスと並んで飛んでみたいと思ったことはあった。けどあの速さに追いつくのって無理じゃない?と謎に現実を見た私はカラスになって眺めるくらいならあるな~それもエモいな~と考えてしまったという、という…………こんなことになるなら考えたりなんてしなかったのに……!
「大きさ的にカラスやと思いよったけど、遠かけんあんまり自信なかってんね。けど無依ちゃんの毛先の色って光に照らされると目立つけんさ」
「イヤ!イヤです!もう推理するのやめてください!!」
結局粘り負けてカラスになり恨みつらみの嘴攻撃をしてしまったのは悪くない。エネルギーが吸われたんじゃないかってくらい私はヘトヘトだったしホークスは活き活きしていた。
あと2日あるなんて信じられないくらい濃い一日が幕を閉じた。



























福岡の知り合いがいない東北民です。 摩訶不思議です。 けど東北関西両方の訛りを一時期喋っていたらしく周囲(特に学校)では(゜゜)←こんな顔された すまん何処で覚えた言われても記憶ねぇっす 三者面談で出される程 酷かったらしい……スマン