今回は、Ibさんと言う方がpixivに投稿した俺ガイルのアンチ・ヘイト作品「八幡「俺だけが一方的に悪いとは言わせねえよ」を参考に、Ibさんからの了承のもと、今作はあちらの話の雪ノ下陽乃視点として書かせていただきました。詳しい内容についてはあちらをご覧ください。
陽乃「………はぁ。寒いなぁ…」
……少し前だったら、そこまで寒いと思わなかった秋風だけど、今の私にはそれがとても冷たく、とても寒く感じられた…
私の名前は『雪ノ下陽乃』…
千葉にある大学に通って“いた”女子大生。
父は市議会議員で母は建設会社社長。所謂良いところのお嬢様“だった”。
……なんで、さっきから過去系なのかと言うと…
……私はもう、通っていた大学を退学し、更に実の両親から勘当を言い渡されて実家を追い出され、手切れ金こそ貰ったものの、行く当てのない身だからだ…
陽乃「……どうして……どうして、こんな事に……」
力なくそう呟くしかない私…
……いや、本当はどうしてこうなってしまったのかは理解はしている…
あれは、数日前に時間を遡る…
大学の休み時間、私がいつもの様になにか楽しいことないかなぁと思っていると、電話がなった。
相手は私の妹の雪乃ちゃんからだった。
雪乃ちゃんはよっぽどのことがない限り私に電話をしてこないので、珍しいなぁと思いつつ電話に出てみると…
雪乃「姉さん……比企谷君が……比企谷君が…!!」
陽乃「えっ!?ち、ちょっと雪乃ちゃん泣いてるの!?一体何があったの!!?」
由比ヶ浜「あ、もしもし!由比ヶ浜です!実は…」
ガハマちゃんから聞かされた話によると、修学旅行で比企谷君が好きでもないクラスメートの女の子に告白をしたらしい…
正直、最初は信じられなかった。あの比企谷くんがそんなことを…
だけど、雪乃ちゃんは嘘が嫌いなのは子供の頃から見ていて分かっていたし、さっきの雪乃ちゃんの泣き声も、嘘のようには聞えなかった…
つまり…
そう結論付けた私は、雪乃ちゃんを泣かせた比企谷君に対する怒りに震え、絶対にタダでは済まさないと誓い、数週間後、公園のブランコに座る比企谷君を見つけた…
陽乃「ひゃっはろー、比企谷君♪」
八幡「……何のようですか?雪ノ下さん」
陽乃「そんな怖い顔しないで♪たまたま見つけたから話しかけただけだよ……クズ谷君。」
八幡「……そうですか。あなたは、何処まで知ってるんですか?」
陽乃「雪乃ちゃんが泣いてたよ、騙されたって……今なら土下座で許してあげなくもないけど、どうする?」
八幡「……別に騙したおぼえはありませんし、話を聞こうともせず、拒絶したのは向こうです。それに、あなたに関係あります?」
陽乃「……そっかー、お姉さん君の事気に入ってたんだけどなぁ………過大評価だったみたいだね。」
私は、比企谷君に一瞬で近付き、護身術として習った合気道の技で軽々と彼を背中からアスファルトへと叩きつけた。
その後、悶絶している彼に近付き…
陽乃「二度と私と雪乃ちゃんに近づくな!!次はお前を消す!!!………話は終わり。さようなら赤の他人君、もう会う事はないだろうけど。」
私はそう吐き捨て、倒れている比企谷君に目もくれず、振り返る事なくその場を立ち去った。
…………今にして思えば、あの時ほんの少しでもその場に留まって、もっと彼の様子を見るべきであった。
そうしていれば、彼の状態に気付いて真実を知り、最悪の結末を回避出来たのかもしれない…
陽乃「はぁ〜、比企谷君は本当残念だったなぁ〜。」
私は、案内されたサイゼの席でそう溜息を付く。
比企谷君をぶん投げて脅しをかけても尚、気分が晴れなかった私。
ちょうど小腹が空いていたのも相まって、近くにあったサイゼで軽く食事をとることにした。
陽乃「あーあ、彼みたいな面白い子(玩具)なんて、これから見つかるとは思えないし、どうするかなぁ…」
またまた溜息を吐いていると
店員「お待たせいたしました、こちらミートドリアです。」
おっ!待ってました♪
陽乃「ま、今は先の事を考えても仕方ないか。それじゃあ、いっただきまぁす♪」
運ばれてきたミートドリアを早速口に運ぼうとした、その時だった…
???「雪ノ下陽乃さんですね?」
……突然、知らない男の人に声をかけられたのは。
陽乃「えっと……どちら様でしょうか…?」
いきなり知らない男、それにその男の他にも複数の男が、私の座っている席の近くにいつの間にかいて、私は警戒心を露わにしながら問う。
すると…
???「我々は…こう言う者です。」
男の1人が懐から取り出した物を確認した私は……驚愕で固まってしまった…
それは…警察手帳。つまり目の前にいるのは…
陽乃「け、警察…!!?」
驚く私を後目に、警察を名乗った男は淡々と話を進めてくる。
刑事「雪ノ下陽乃さん。貴女に暴行罪の容疑で逮捕状が出ています……署にご同行いただき、詳しくお話を聞かせて貰えませんか…?」
ぼ、暴行罪!!?なんで!!?
………ま、まさかさっきの比企谷君の事!!?
陽乃「……あの!アレはそもそも私が投げ飛ばした男の子が、私の妹に酷いことをしたから、懲らしめる為に…!!」
私はそう説明しようとしたが…
刑事「ですから、詳しい話は署の方でお聞きますので、ご同行をお願いします。」
全く聞く耳を持ってくれず、相変わらず同行を求めてくるけど、冗談じゃない!!
陽乃「……私は逮捕されるような覚えなんてありませんので、失礼します…!」
話にならないと判断した私は、店を出ようとして立ち上がり、刑事の横を通り過ぎようとするが…
刑事「待ちなさい!!」
直ぐに刑事に腕を掴まれてしまう。
陽乃「ち、ちょっと!何するのよ!?離して!!離しなさい!!!」
パニクってしまった私は、刑事の手を振り払おうともがく。
周りの客や店員も、何事かとこっちをずっと見ているし、もう最悪!!
刑事「大人しくしなさい!!」
陽乃「嫌!!離して!!離してってば!!!」
必死に逃れようと更にもがいた結果……私の肘が刑事の顔に当たってしまった…
刑事「……暴行容疑に加えて、公務執行妨害……もう言い逃れは出来ませんよ?大人しく、ご同いただけますか…?」
陽乃「そ、そんな…どうして、こんな事に…」
こうして、私は警察署に連れて行かれる事になった…
陽乃「だから!!私は妹を泣かせた比企谷君におしおきのつもりで…!!」
刑事「はいはい、とりあえず落ち着いて、ね?」
……あれから警察署に連行され、取調室で警察の人に事情を話す事になった私だけど、私が必死になって自分の正当性を主張しても、目の前いる刑事はちっとも私の主張を聞こうともしない…!
そんな刑事の態度にイライラしていたら、刑事は溜息を付きながら
刑事「けど君ねぇ…どんな事情があるにせよ、被害者はまだ高校生だよ?それを碌に話もしないでいきなり背負い投げは、ねぇ…?」
呆れるような態度で溜息を付く刑事に、私は更に苛立ちを募らせる。
陽乃「だからそれは…!!」
刑事「それに……君、彼がその時どんな状態だったか、分かっていたのかい…?」
急に、刑事はそれまでの呆れ顔から一変、険しい表情となって私にそんなことを聞いてきた。
陽乃「……どう言う意味ですか…?」
刑事「……どうやら、何も知らなかったみたいだね。まぁ、知っていたら流石に彼を投げ飛ばすなんて真似はしなかっただろうけど……本当なら刺激が強すぎるから見せたくはなかったが、仕方ない。これを見なさい…」
そう言いながら刑事は何枚かの写真を取り出して机の上に並べた。
その写真に写っていたのは…
陽乃「ヒッ!!?な、何、これ…!!?」
その写真には、複数の殴られたような痣に、ナイフか何かで付けられたような酷い切り傷が付けられた、男の子の背中らしき物が写っていたのだ…
陽乃「……ま、まさか……この写真に写っているのって…!!?」
刑事「……被害者である比企谷八幡君だよ…」
陽乃「っ!!?嘘、でしょう…!!?」
刑事さんから告げられた事実に、私は思わず口を両手で押さえてしまった…
しかし、刑事さんはそんな私を見ながら、更なる事実を告げてくる…
刑事「どうやら彼、比企谷君はね……通っている高校でかなり酷い虐めをされていたみたいなんだ。物を隠されたり捨てられる、無視をされたり陰口をされるのはまだ軽い方だが……他の男子生徒からは殴る蹴るの暴行をされ、更にナイフで傷も付けられたていたそうだよ…」
陽乃「そ、そんな事が…」
刑事さんの話を聞いて、比企谷君の現状を知らされた私は、ショックで言葉が出なくなってしまった…
すると、そこに別の刑事が来て私と話をしていた刑事に何か耳打ちをし…
刑事「……どうやら、君のお母さんがこちらに来たみたいだ…」
っ!!?
母さんが!!?
雪ノ下母「………陽乃。」
陽乃「か、母さん…」
案内された部屋には、すでに警察に呼ばれていた母さんが椅子に座って待っていたけれど、その表情は疲れと怒りが入り混じったような表情だった…
雪ノ下母「……陽乃。貴女、とんでもない事をしてくれましたね…」
陽乃「お、お母さん…あの、これには事情が…それに、私比企谷君が虐められていたなんて知らなくて…」
雪ノ下母「お黙りなさいっ!!!!!」
陽乃「ヒッ!!?」
母さんの怒りに満ちた怒鳴り声が部屋に響き渡る…!
同伴していた婦警さんがどうにか母さんを落ち着かせるが、それでもまだ、母さんの怒りは収まってない様子だった…
雪ノ下母「そもそも、比企谷君が学校で虐められたのは、貴女が文化祭でやらかした事が原因の一つでしょう!!?貴女が文化祭実行委員長であった女子生徒を唆して、危うく文化祭開催を中止寸前まで陥らせていたのは、学校側の調べで分かっているんです!!」
文化祭…
そう言われて、私は心当たりがあり過ぎて顔を青褪める…
陽乃「あ、アレはその、そう言う意味で言ったわけじゃ……それに、アレは雪乃ちゃんにもっと誰かに頼る大切さを知ってほしくて…」
雪ノ下母「言い訳をするのではありません!!!貴女の事情など、比企谷君や他の生徒の皆さんには全く関係がないでしょう!!?それなのに、そんな身勝手な屁理屈が罷り通ると思っているの!!?」
陽乃「そ、それは…」
母さんに正論を言われ、私は何も言えなくなってしまう…
雪ノ下母「……貴女の文化祭での問題発言の結果、比企谷は学校中から白い目で見られるようになったのに、今回の葉山君と雪乃のせいで、比企谷君に対する虐めは更に酷くなって……ただでさえ、入学式の事故の件で一度比企谷君にご迷惑をおかけしたと言うのに、貴女も雪乃も姉妹揃って比企谷君に……本当に情けないし恥ずかしい…!!!」
陽乃「………えっ?隼人と雪乃ちゃん…?ど、どう言う事なの母さん…?」
母さんから出た隼人と雪乃ちゃんの名前…
訳が分からずに母さんに尋ねると、母さんは疲れ切った声で私に事の真相を話し出した…
陽乃「………そ、そんな…嘘だよね、母さん…?」
雪ノ下母「……こんな事で、私が嘘を付くと思いますか?全て、事実よ…」
陽乃「そんな…!!!」
母さんから告げられた真実…
それは、隼人が自分のグループの男子と女子、『戸部翔』からの『修学旅行で海老名さんに告白をする』事に関する相談と、海老名姫菜からの『戸部君の告白の阻止』と言う、相反する頼みをどう解決するか途方に暮れた末、比企谷君に全てを押し付け、更に比企谷君を『告白の邪魔をした最低のクソ野郎』と周囲に吹き込み、酷い虐めへと発展させたと言う…
更に、私に比企谷君への制裁をお願いしてきた2人、面白半分で依頼を受けようとしたガハマちゃんと、ガハマちゃんにお願いされ、流される形で依頼を引き受けた雪乃ちゃん…
それなのに、自分たちは碌に解決策を出さなかった挙句、嘘告白と言うあまり褒められた方法ではないとは言え、問題を解決しようとした比企谷君を一方的に否定して、彼を悪く言っていたのが、事の真相であった…
陽乃「……じ、じゃあ、比企谷は…何も悪くなかったのに、あんな酷い目に遭っていたと言うの…!!?そんな彼に私は…私は…!!!???」
突きつけられた真実は、私を絶望させるには十分すぎる物であった…
しかし、私の絶望はまだ終わらなかった…
雪ノ下母「……陽乃。親としての最後の情けとして、今回の比企谷君への貴女の暴行罪に対する罰則金、それと彼への慰謝料などは私と父さんが何とかしましょう……ですが、その後の事は私達はもう知りません。後は自分でどうにかしなさい…」
………え?
陽乃「か、母、さん…それってどう言う…?」
雪ノ下母「………陽乃。貴女とは
親子の縁を切ります。手切れ金は渡しますが、もうこれからの人生は貴女自身でどうにかしていきなさい。」
……母さんから告げられたのは。
事実上の勘当宣告であった…
……それから少しして、私は両親が支払ってくれた罰金のおかげで釈放された。
でも、暴行事件を起こして前科が付いた私がそのまま大学に通い続けられる筈もなく、結果私は大学を退学する事ととなった…
更に、一度実家に戻されたものの、手切れ金として1000万円を私の銀行口座に振り込んだが、住むところと働き口は自分で探せと告げられて、私は住んでいた実家を追い出される形で出ていく事となった…
陽乃「………これから、どうしよう…」
1000万円を受け取ったとは言え、アパートだの住む場所を早く見つけなければならないし、住む場所を見つけたところで、家賃に光熱費、更には今後の生活に必要な物を買って……1000万円なんて、結局はあっという間に使ってしまい、殆ど残らないだろう事は目に見えていた…
ならバイトなりなんなりして働かなければならないが、既に暴行事件の事や比企谷君の虐めの件がニュースで大々的に報じられてしまい、当然ながら私の名前や顔も広く知れ渡ってしまった中で、働き口を見つけるのは簡単な話ではない…
文字通り、私のこの先の人生は、お先真っ暗だ…
陽乃「………ハハハッ。こんな事なら、もっときちんと調べておけば良かったなぁ…」
雪乃ちゃんが泣かされたと言うだけで冷静さをなくし、もっと慎重に動かなかったあの時の自分を殴ってやりたい…
……そう言えば、雪乃ちゃんはどうなってしまうのだろう…?
雪乃ちゃんにも、今回の事の真実は告げられるだろうけど、母さんは雪乃ちゃんにも怒りを露わにしていたし、一人暮らしは辞めさせられるだろうな…
その後は……
陽乃「………ま、もうどうでも良いや、雪乃ちゃんの事なんて。もう構ってられる余裕なんてないし、雪ノ下の家とは絶縁しちゃったんだし…」
私はそう力なく呟きながら渇いた笑みを浮かべる…
雪ノ下の家から出て自由になる…
それが、私のずっと欲していた願い…
こんな形だけれど、自由を手にする事は出来た…
……けど……
陽乃「………自由を手にしたところで……結局、これから先も、私に待っているのは……地獄しかないじゃん……は、ハハ…アハハハハハハハッ…!!!」
もう、この先心から笑えることなんて、2度とないだろう…
だったらせめて、今のうちに笑えるだけ笑ってしまえ…
待ち受ける地獄の未来を前に、私は暫くの間、狂ったように笑い、泣き続けるしかなかったのだった…
















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