俺の名前は矢代秋。
そこそこ陽キャな皆の隣人だ。
そんな俺は、なぜか学校にいる時に異世界転移してしまった。
しかも俺だけでなく、周囲にいたクラスメイト達全員と。
こりゃまた、珍妙な。
でもあれだよな。
よくある異世界ファンタジーの始まりだよな。
こっから魔王討伐を依頼されたりするんだろうか。
現地の人たちと友情を築きながら、冒険しちゃったりするんだろうか。
なんか胸が躍るぜ!
なんて思っていたら、なぜかクラスメイト全員にループ能力がくっついていた。
これって何の冗談?
なんというか、すごく嫌な予感がするんだが。
まあ、便利っちゃ便利だけどな。
異世界なんて常識が違うのが定番だし、危険と隣り合わせなのもセオリー。
保険があるに、越したことは無い。
つっても、全員にってのは、なかなかないよ?ループ。
え?
俺が知らないだけかもしれないけど。
でも、その理由、すぐに分かったよ。
「あいつらまじ、家畜を見る目してるし」
「ほんとほんと、便利な道具扱いしてくる気満々だぜ」
「最悪、異世界最悪!」
これ異世界召喚して一週間後の俺達クラスの意見な。
だってさあ。
ねえ?
この世界、俺達を利用しようとする連中が多すぎるんだよ。
命がいくつあっても足りない、って言葉がこんなにもしっくりくる世界があるとは思わなかったぜ。
だってさ。
異世界召喚の儀式をして、俺達に魔王討伐を依頼してきた王子さんは
「くくく、こいつら薬漬けにして人間兵器にしよ、便利な傀儡にしてやんよ」
だしね。
それにさ。
俺達に訓練を施してくれる魔法使い系お師匠様は。
「ふふふ、ワシの出世の道具になってもらうわい。危険なエリアとかに訓練と称してどんどん放り込も。あと競争心煽って、無茶な訓練もさせたるわい」
って感じだしね。
きわめつけには。
助けにいった村の住民たちは
「ははは、この村はいつも魔物に襲われてるから、ちょうど良い感じに騙して勇者様の一人を常駐させよ。村一番のべっぴんさんと美男子を使って、篭絡したるわ」
という具合だ。
いやあ参った参った。
その度に危ない食べ物を提供されたり、
危ないエリアで魔物に追いかけられたり、
危ない村人に騙されそうになったり、惚れ薬を盛られそうになったり、ベッドにしのびこまれそうになったり、すったもんだ。
しかも仲違いさせようとしたり、無駄に競わせて優劣つけようとしたり、気に入った推しと推しをくっつけて子孫のこそうとしたり、やべー奴らばっかじゃねーか。
王子は「あれ?傀儡になってない?」とか、
お師匠様は「あれ?生きて帰ってきた。しかも無傷じゃと?」とか、
住民は「あれ?王都への不信感を植え付けるために色々話したのに?あと惚れ薬盛ったのに?」とか言ってるけど、
知ったこったねーぜ。
全員酷い自己中やろーだしな。
そういうわけで全員でループしながら魔王を倒した俺達は、王子に向かって剣を向けて、ちょこっとお話させてもらうぜ。
魔王さんの方が常識人で「それは大変だったな」されたのは斬新だった。
俺達のこの異世界ファンタジー、王道に恨みでもあんのかな?
まあ、ともかく。このループのおかげで使いつぶされる事がなくてよかったよ。
「王子、覚悟はいいか?」
「王子様、私達を利用しようとした罰を受ける時よ」
「ざまぁ王子、けっこれだから権力者は」
「ひいいい、助けてくれ!」
俺は笑顔で、王子の肩を叩いた。
親愛なる隣人に向けるように、そりゃもう親しみをこめて。
素直に頷いてくれるまで何度もやり直せるから覚悟しておこうな?






















途中、人間不信にならなくて良かった。