Novel1 years ago · 4.9k chars · 1 pages

ざまあも破棄も不成立となった卒業式

ゆな@ぼちぼちとゆな@ぼちぼちと

風邪ひいて休むしかなく、暇潰しに婚約破棄もののコミカライズ漁っていたらそのテンプレに湧き上がってきた疑問を打ち込んでみたらあっという間にできあがりました短編です。 恋愛とはしてますが恋愛メインではありません。婚約破棄もののテンプレに巻き込まれたモブ視点でお送りします。 文句や批評は一切受け付けておりません。

あの日の卒業式は最悪の卒業式だったと私は今でも語ることができる。

 王族貴族も通っている名門魔法学校、私は友達と一緒に入学した。低級貴族の身からしてもとんでもない豪華さと煌びやかさに驚いたものだ。
 しかしそれ以上にやばかったのはある国の第二王子周りの恋愛模様だった。全部友達からの又聞きになるのだが、中々濃かったから鮮明に覚えている。
 まず第二王子には婚約者である令嬢がいるのだけれど、その令嬢との関係は側から見ても上手くいっていなかった。周りの厳しい目から一時的に離れて学校にいる時は束の間の自由を満喫したい第二王子と将来の為に勉学とマナーをもっと意識すべきと自他共に厳しく真面目な令嬢だった為に令嬢が第二王子に説教し、第二王子がそれを疎ましくしてるのが多々あったとのこと。
 そんな第二王子の側に一人の女子生徒が寄り添うようになった。身分的には私たちとそう変わらない低級貴族の子であるが容姿は非常に可愛く、皆の注目を浴びやすい子だった。その子は身分差など存在しないと言わんばかりに第二王子に声をかけ、可愛さをふんだんに使った甘えた媚びで一気に距離を詰めた。
 それだけ聞くと男狙いの性悪女でしかない、いや、実際そうなのだがこいつ、演技力は高かった模様。第二王子の取り巻きもその可愛さで落としつつ、他の人に対してもぶりっ子を崩すことなく容姿フル活用で味方を作るという徹底ぶり。もっとも通用しなかった人達もいて、そちらは第二王子達の不真面目さが悪化したとキレて令嬢殿の味方につくようになっていた。
 令嬢は凛とした態度も説教も崩すこと無く、何度もマナーを守れ、節度を保て、婚約者のいる男に手を出すなと忠告を繰り返していた模様。その姿にお姉様と呼んでる女子が多かったそうだが友達曰く「向こうも向こうで人目気にせずやり合うから空気が凍る」状態にしてたそうで、その時は心底別のクラスで良かったと思った。
 ……尚、その令嬢も先輩であり婚約者の兄である第一王子と仲睦まじくしてる様子がたまに目撃されていた。令嬢の方はいつも通りだけど第一王子は紳士ぶってたが令嬢に気があるのは目に見えて明らか。令嬢も会う回数増えるほどに第一王子の方に気を許してる様子だったそうだ。こっちもおもっくそ浮気してんじゃねーか、と友達から聞いた時は思ってしまった。
 ここまで来たら普通に婚約解消でいいのでは?と疑問に思ったのだが、何かややこしい事情があるみたいですぐにはできないと先生方が仰っていた。
 そのせいで私達の学年は第二王子と可愛さ女の自由恋愛主義、令嬢と第一王子の身分至上主義、そしてその間に挟まった哀れなモブ達という感じに三分割された。
 自由恋愛主義……は半分逆ハーになってるところはあるが、身分差を超えた恋愛模様は一定数に浪漫を与えるのか第二王子と可愛さ女の恋を応援するものが多かった。そもそも身分というものの縛りに辟易してるものもかなりいた。貴族として見るとだらしなくて頼りないけど今の期間ならいいんじゃないかなぁ。
 身分至上主義はその逆。良くも悪くも自分たちに与えられた身分や職務にバカ真面目、その分責任感とか将来については安心感はある。下々の方からすれば真っ当に仕事してくれる上であればいいので。その分それを他人にも課せることがあるのが玉に瑕。傲慢さを自覚できてない人が多いんだけどパーティとかの企画系で頼りになるのはこっちな印象。
 で、残るのはそのどちらでもない少数派。私と友達もここに該当する。恋愛も婚約も巻き込まないでほしい派ともいう。派閥争いに巻き込まれるときついのよね、色々と。私はまだ別のクラスだったのでマシだったが運悪く嵐の中の三人と同クラスだった友達はかなりゲンナリしていた。わかる、折角の学校生活をドロドロ恋愛政治劇に染め上げられたくなかったよね。
 でもそうはいかないのがこの世の中。対立構造が目に見えて分かってくると娯楽の少ない学校生活の良い刺激になってしまい、その中に混ざろうとする奴も増える始末。
 いくら通ってる生徒の大半が将来実家や国を継ぐ立場だからって全部それに費やせるほどの精神を持ってる人はごく僅か。親のもとから離れて自由に同年代と入れるとなればハメを外したくなるものだ。そしてそれを邪魔されたら腹が立つし、向こうが悪党に見えてくるものだ。そしてそれは逆の視点からも言えること。長く続いた家を誇りに思い、後継としての役目を果たせるようにたくさん学びたい側からすればそんないい加減なもの許容しづらいし、目に余る。なので注意するけどそれで反発されるからこっちも向こうが悪党に見えてくる。
 はい、そうやって対立構造の規模がガンガン膨れ上がっていく。普段はここまで酷くならないのだけど、どちらにも象徴として相応しい人物がいたせいでまとまりができてしまったのが原因。先生達もここまで広まってしまったらどうにもできずにいた。
 そしてやってきた卒業式にて事件は起きた。

 第二王子が令嬢に向かって婚約破棄を宣言したのだ。

 令嬢が可愛さ女を虐めたと抜かしながら罵倒していたが、これは半分正解半分ハズレ。いじめまでは行ってないんだけど令嬢の当たりが可愛さ女にきつかったのは事実。可愛さ女は大袈裟に怖かったと泣いていたけどあれは嘘かまことかどっちだったのか。
 破棄を叩きつけられた令嬢は極めて冷静に婚約破棄の正式な手続きとか王に許可とってるのか状況わかってるのかとか聞いていたけど、第二王子はこの状況でもそういうことばかり言うのが嫌だと怒っていた。
 もうこの修羅場の時点でかなりきつかったのだが、令嬢の反撃ターンがきた。来てしまった。
 理路整然と一個一個ありもしないいじめに対して反論し、客観的に見た婚約破棄や婚約後のことを言ってく様子は令嬢というより裁判官のようでおっかなかった。鬼といっても過言じゃなかった。
 しかも令嬢が口だけで叩き潰した後、第一王子が何故かやってきて婚約破棄したのならばと令嬢に何故かプロポーズ。令嬢はそれに応えた。なんでやねん。
 第二王子がお前それ浮気だろと怒ってたけど令嬢が先にしたのはそっちと言い返していた。可愛さ女は親の仇でも見るかのような目で睨んで来る第一王子に怯えていた。
 いや、もう、カオス。令嬢達の勝利の空気になってたけど、こちらからすればどぎつい修羅場茶番劇でしかないので早く終わらせてほしかった。
 そこに終止符を打ったのは第二王子でも可愛さ女でも令嬢でも第一王子でも無く、その時私の隣にいた友達だった。
 彼女は卒業式で繰り広げられたカオスに耐えきれなくなり、爆発したように大きな声で泣き出してしまったのだ。

「もう嫌ーーーー!! なんで最後の時までこんなことに巻き込まれなきゃいけないのよーーー!! 私達、何の関係もないのにーーー!!」

 もうそっからは凄かった。赤ん坊でもここまで出さないぞという声量で泣きじゃくっていた。
 私や周りのクラスメイトが宥めても涙は収まらず、もう愚痴がどんどん爆発していっていた。

「婚約者とか恋愛とか破棄とか自分達で勝手にしなさいよ! なんでこんな時にやるのよ! 破棄もプロポーズも見せつけるって他人へのアピールするのに必死すぎよ! どうでもいいのよ、他人の恋愛ごとなんて! あんた達が世界の中心って思い込むな、バカ! こっちから見たら第二王子も令嬢もどっちもどっちの浮気野郎なんだよ! 王子とか貴族とか知るか、恋愛馬鹿は全員家に帰って乳繰り合ってろ! 私の学園生活は今しかないんだ、邪魔すんなーーー!!!!」

 表裏もない鬱憤大爆発の涙の叫びにより、完全に卒業式の空気が友達のものになっていた。
 婚約破棄劇場からのざまあカウンター劇場していた四人も圧倒されていた。いち早く回復した令嬢が謝ろうと友達に声をかけようとしたんだけど、

「ここで第一王子からのプロポーズをOKした時点でお前もそのアホどもと同じ恋愛脳の大馬鹿だよ!!」

 ……とキレ返されていた。すごい、人ってヤケクソガチギレになるとここまで無敵になるんだと私は感心してしまった。
 その後、我に返った校長先生がどうにか場の空気を掴むと複数名の生徒……主に令嬢達四人と各派閥の取り巻きに出てくように指示を出し、残った生徒達には台無しになってしまったので後日改めて卒業式を行うとアナウンスした。こちらとしても早くここから解放されたかったのでありがたかった。
 ちなみに思う存分大暴れしてしまった友達はそのアナウンス後もしばらく泣いてたが、時間置いて落ち着いた後は王子達相手にやらかしてしまったと顔を青ざめさせていた。みんな思っていたことだから気にするなと慰めたけどあまり効果は無かった。

 そしてやり直された卒業式は特に事件が起こることなく、平穏無事に終わった。
 ちなみに事を引き起こした四人は全員欠席。婚約破棄やプロポーズをやらかした件について対処に追われているとのこと。
 まず婚約破棄とプロポーズについてはどっちも国王陛下が却下を出し、共に不成立。
 第一王子と令嬢は事前に手回しして国王を味方につけてたらしく、この結末になるのは意外だとクラスメイト達がざわざわしていた。気になったので色々聞き取りしにいったところ、なんでも卒業式の友達の大泣きを知った国王陛下が改めて独自に学園の状況について調べさせ、出来上がった報告書の状態に頭を抱えたのが理由とのこと。曰く「第二王子達の視野が狭く思慮も浅はかだったのは確かだがお前達も独善と傲慢がすぎる」ということで、こっちだけ認めたらアウトと判断したそうだ。
 第二王子と可愛さ女も当然破局。それでいて今回の元凶ともいえる可愛さ女は実家からも勘当されて行方知れずに。彼女の逆ハー要員もこのことで婚約関係でゴタゴタが起きまくっているという目も当てられない状況。この辺の修羅場までは把握しきれてないので省略する。ただ、可愛さ女の方は容姿が似た女の子が下町の方で強かに男達相手に働いているのを目撃されたという情報もある。甘やかされて育ったという印象だったが、妙なところで逞しい。
 さて、第二王子はどうなったかというと……令嬢との婚約破棄不成立ということで、令嬢との結婚確定。二人ともかなり嫌がっていたが元々お国のための契約結婚なのと今回やらかした事に対する罰も兼ねてるので、異議は却下された。第一王子も婚約破棄直後にプロポーズをやらかした事をかなり絞られたそうで、今は遠くの地方に飛ばされてそこで政務をやらされている。「幾ら昔から思ってたとしても、ちょうどいい機会が来たからとしても、堂々と人前でやるな。せめてもう少し上手く立ち回れ」と国王陛下は愚痴ってたそうだ。
 こうなるとかなり国の将来が不安になるのだが、そこは本人達のやる気次第なので私はお祈りするしかない。兄達の分まで立派になれとまだ五歳の幼い第三王子に期待が寄せられてるけど、ちょっと無茶振りな気もする。
 ただまぁ、こちらとしては最終的には無事に卒業式をできたことと友達が満面の笑顔で卒業式を迎えられたことが良かったと思えるので、今はあんまり気にしすぎない事にする。
 でも折角なので卒業式の後、迎えが来るまでの間、友達に令嬢と王子達の今後についてどう思ってるか聞いてみた。そしたら、

「どうせそれぞれすぐ新しい恋人を作るわよ。あんだけ恋愛に熱心だったんだから、真実の愛をまた見つけられるでしょ」

 という身も蓋もない皮肉をしてくれた。
 ……確かに大勢の前で婚約破棄も、その波に乗っかってのプロポーズにOKするのも、恋愛大好きじゃないとできないわな。
 それにこの国の王族、側室や愛人を特に禁止してないから新しいお相手を結婚しながら作るのはいけるだろうし。……卒業式でやらかした二人がいつ無事に新しい相手を見つけられるかどうかは知らないけどね。

— End —

Comments 7

おっさんさん9 个月前

なろうのザマァ系もこのくらいの尺度で丁度良いと個人的にも思う

M
miu9 个月前
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機械式時計1 年前
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リユ1 年前

いや、友達も可哀想だが、第三王子が気の毒過ぎ 兄が二人揃ってやらかした以上、躾や教育が厳しくなりそうだし、期待と監視の目がキツイですね 頑張れ、5歳児 負けることなく健やかに育ってくれ

すい1 年前
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中峰 涼華☆投稿は別場へ1 年前

私もよくざまぁ系見てました。モブからしたらそりゃぁたまったもんじゃないな。国王しっかりしてて安心だけど将来不安すぎる💦

芳野秋生@戻ったー!!1 年前

確かに、学生時代が1番自由なのに台無しにされたら、て思うと。

Sakuria
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