ダストウォール:財団X本部・屋上 2097年4月13日9時25分
「来たな、ブルーバード」
大きな風が吹き、大きめのジャケットを着崩した男性はタバコをふかしながらその姿を見た。
藍も変わらず、青髪に蒼いスーツにカウルそして蒼い鳥を象徴にしたマスク『ブルーバード』の姿を
「すみませんメルト、遅れてしまいました」
「っかー!いちいち謝んな君は俺たちDW市民のヒーローで平和の象徴なんだよ
頭を下げるな顔を上げろ、自分の身を犠牲に市民の命守ってんだもっと誇れ」
持っていたタバコを向けながら、メルトはブルーバードに説教を垂れた。
「すみません」
「はぁ、別にいい気にすんな俺も暇しててタバコ吸いに来てるし」
「・・・それはそれで、あの子に怒られると思うんですが大丈夫なんですか?」
「まぁ、ココ数ヶ月は禁煙してたからな口うるさく言われなくなったのもある・・・って今回はそんな話をするために呼んだんじゃねぇよ」
メルトはタバコを灰皿スタンドに押し当てて火を消し咳払いをすると室内に通じる扉を開けた。
「数日前に君が確保した強盗連中の尋問が終わった」
「随分と早かったですね」
「まぁな、10日に尋問が始まって昨日終わった所だ少し荒っぽい手も使ったが」
「そうなると、尋問を行ったのが誰か予想できますね」
ブルーバードはエレベーターのスイッチを押してその名前を言った。
「尋問を行ったのはヴォイドさんですね」
「あぁ、本当はアクセルにも対応を願ったんだが・・・」
メルトはブルーバードの方をチラと見て「誰かさんの任務の後始末とかがあったからなのもあるがな」と言った。
「それに関してはごめんなさい」
「まぁ、そればっかりは仕方ねぇ まさかタンクローリー撃つとは思わねぇだろ」
「随分と大きな被害を出してしまいましたね、後始末をしてくれるアクセルさん達には頭が上がりませんよ」
「実戦部隊で処理もしてくれるからな、俺達と違って現場に出る数少ない部隊だからな」
エレベーターが到着し、目の前にある扉が開き二人は乗り込みメルトは地下階層のボタンを押した。
「それで、長くなってしまいましたが結局何か分かったんですか?」
「あぁ、ヴォイドの情報によると連中は『ブラック・ハート』に所属もしくは息がかかった連中だった」
「じゃぁ何人かはただ誘われただけということですか?」
「早い話だが簡単に言えばそうなるな、唯一所属していたのは『ファーリー・クラーク』最後まで車内に残ってたアイツだ」
「私に銃口を向けてきた人ですね」
「君、そんな危機的状況を良くもまぁ何度も潜り抜けてこられたね」
ブルーバードは少し微笑みながら答える。
「先代の血が流れてますから」
「そうだったな、その先代はどこに所属する訳でもなく孤高のヒーローとして戦っていたけどな」
「まぁ、私も今となっては先代の考えに納得が行きますけどね あの頃は財団も存在してませんでしたし時代も『ヒーロー』の存在を否定していましたからね実際先代は限界まで鍛えていたのでとても強かったですし」
「実際、そんな奴が居るなんて思ってもいなかったんだろうよ」
「それもまた、時代の影響なんでしょうけど」
メルトは「そうだな」とポツリといい深い溜息を吐いた。
それと同時にエレベーターの扉が開いた、二人はエレベーターを出て暗い廊下を歩き始めた。
「また話が逸れたな、とりあえず資料をココに保管しているんだ」
「? 上に何か言われたんですか?」
「いや、少しな・・・」
ブルーバードはメルトの曖昧な解答に首を傾げながら彼の後をついていく。
やがて薄暗い一室に案内させられた。
「それで、今回の尋問で分かったことなんだが連中はどうやらこの街を終わらせる大きな作戦を練っている、詳細はヴォイドが再度尋問を行う予定だ」
「《ブラック・ハート》もいよいよ焦ってきてるみたいですね、唯一その《大きな作戦》がなんなのか気になる所ですが」
「それに関しても、追ってヴォイドが尋問を行う予定だ」
そこまで言ってメルトは、人差し指を自身の口に当てホワイトボードに文字を書き出した。
『この会話は何者かに盗聴されている可能性がある』
「!」
『この一室を選んだのは、財団の持つ監視カメラが設置されていない階層だからなのといざという時にガレージから緊急脱出ができるから、ココを選んだ』
「ヴォイドさんも激務で忙しいでしょうに色々大変になりますね」
ブルーバードは、咄嗟の判断で相槌を行いつつ机上にたまたまあったメモ用紙にボールペンを走らせ『それもまた、ブラック・ハート絡みですか?』と質問をし続けて『分かっていたのなら、尚のこと何故ココに案内したんですか?』と書き出した。
「そうだな、ヴォイドには専門外・・・もとい元専門のことでもあるからな苦労をかけるが《ブラック・ハート》その全貌と目的を上層部も知りたがっているからなこればかりは仕方ない」→
『恐らくは連中に関係している人物、或いは潜入中のスパイと思われる。ココに呼び出したのは黒服連中の監視を逃れるためだ、未だに俺も君も上層部や一部の派閥からは目の敵にされている、そんな中で追跡&監視されるのはごめんだ』
「そうですね、上の人達もですがアクセルさん率いる実戦部隊の人達にも情報を回さないとですからね」→
『じゃあ、迂闊に情報を漏らせば私の正体を知っている人もいるかもしれないんですよね?財団本部でもマスクは外したりしていませんが、私だけじゃなくてあの子も危険に晒してしまうじゃ無いですか』
「当然、それが俺たち組織の義務だからなそれだけ情報は大事なんだよ」→
『そうだな、だがあくまでも連中がどこまで俺たちの情報を掴んでいるのかは分からない。それこそどこぞの世界最強の探偵みたいな情報網があれば一発なんだろうが、そこまで正体に固執しているようには思えないし油断さえしなければ連中を壊滅させるまでは安泰だろう』
『分かりました、今はお互いに耐えましょうそれとこの話は私達の間だけで共有しておきましょう、それから資料は目を通しておきたいので私が貰います』
ココまで書いてブルーバードは一つ溜息を吐いて質問をした。
「そう言えば預けていたバイクは直してくれましたか?アレが無いと任務の際に不便で仕方ないんですよ」
「あぁ!君の相棒だったな、ココ連日はカウルで移動していたと新聞記事で読んだよ大変だったろう」
「えぇ、とっても大変でしたよ でも最高の相棒であるメルトが居てくれたので苦労はしませんでしたよ」
「言ってくれるね我がヒーロー!ココの近くにあるガレージに停めてあるんだ、案内するよ」
そう言いながら、メルトはホワイトボードに書いた文字を綺麗に消しブルーバードの書き散らかしたメモ帳とボールペンを回収する。
「コッチに地下駐車場があって────」
そう言いながら二人は会議室の電気を消して廊下に出た。
───────
数時間後、何者かが会議室に侵入しコンセントプレートを外し盗聴器を外していた。
「・・・メルト、ブルーバード、多分気づいているな仕込んでいたコレに」
その人物は吐き捨てるようにそう言うと、どこかに電話をかけながら会議室を出た。
