なんでもありな人向け
本人様方への誹謗中傷、ダメ、絶対。
「私」という者は、旅人であった。
私の前には、いつも違う景色が広がっていた。
夢か現かは知る由もない。
次の景色は何だろうか。
今日は雪原が広がっていた。
視界の端で赤いマフラーがはためく。
しばらくボーッと空を眺める。
どれほどそうしていたのだろうか。
誰かがザクザクと雪を踏みしめる音で我に返る。
振り向けば自分とそう背が変わらない子供が、一生懸命に歩いて来るのを見つける。
「チーノ、どうしたん。」
声をかけられた少年がぱっと顔をあげると、水色の髪がふわふわと楽しそうに揺れた。
ch「トントン!母さんがな、お夕飯うちで食っていきやって!せやから、一緒におうち戻ろうや。」
分厚い瓶底メガネの向こう側で、優しげに夕焼け色の目が細められる。
思わず頬が緩むのを感じる。
「せやね、帰ろう。今日は何やって言うてた?」
ch「今日、カレーやって!トントン好きやんな?いっぱいおかわりしてええって母さん言うとったで!」
「ほんま?嬉しいなぁ。」
ほくほくと、暖かい空気が流れる。
友がいる幸せとはこういうものなんだろうか。
夕食を食べ終わり、帰路に着く。
部屋は、酷く散乱していた。
先程とは打って変わり、酷く胸が締め付けられる。
散らばった紙には、素晴らしいと驚嘆するほどの戦車の設計図。
しかしその全てに赤くバツをつけてある。
何もせず、それだけをただ呆然と見つめる。
突然勢いよく扉が開いた。
自分を卑下する無数の針が、目の前の女から発されていると理解するのに数秒もかからなかった。
ギャーギャーと喧しいったらないが、今はまだ耐えるしかない。
「ごめん、なさい。」
発された声は、酷く怯えていた。
夜、誰もが寝静まった頃。
踏み潰されてぐしゃぐしゃになってしまった設計図たちを優しく拾い上げる。
そっとシワを伸ばして、机の上に積み上げる。
それから新しい紙を出してきて、自分なりに設計図を書く。
これを見たらどんな顔をするだろう。
きっと初めは困惑するだろうけれど。
でもこれが、背中を押してくれたら。
彼の歩く、その1歩目を助けてくれたらいい。
「お前なら出来る」
そう書き足して、意識を手放した。
今日は豪華な部屋が広がっていた。
心は凪いで、酷くつまらない。
ガチャリと大きなドアが開いて、執事服のような格好をした子供が入ってくる。
「ショッピ。」
名前を呼ばれた彼は、小さくお辞儀をした。
shp「はい、ショッピです。おはようございますコネシマさん。」
「おはよう。」
最小限に終わらされた会話の後、窮屈な服に着替える。
鏡に向かう目は、氷のようだった。
それからショッピに手を引かれ、朝食を食べるため別の部屋へと向かう。
どこもかしこも装飾まみれでギラギラしていてなんとも汚ならしい。
数分歩いてようやく部屋に辿り着き、食事をする。
不意に、喉に何かが突っかかるような感覚。
咳き込んで、吐き出したものは血だった。
しかし依然として心は凪いでいた。
ドアを開けて入ってきた性悪そうな女にひたすら罵倒されても、諦めたように聞き入れ苦しい呼吸をし続けることしか出来ない。
目の前に散らかされた原稿は、誰のものか。
shp「コネシマさん、すぐ薬を持ってきます。」
悲しげに揺らいだショッピの瞳に、何故か少し罪悪感を覚えた。
呼吸が収まり、少しだけ歩く気力を取り戻した頃。
大きく深呼吸をして立ち上がる。
まだふらつくものの、どうにか少しだけ動けそうだ。
机を物色すれば、先程意識の端にあった原稿を見つける。
グシャグシャで足跡がついているが、ショッピが拾ってくれたのだろう。
読んでみれば、完璧なまでの統治論だった。
冷徹な功利主義ではあるものの、彼はきっと人を魅了する人間になると感じさせるに足るものだ。
そこに少しだけ添削を加える。
どうかこれが、彼の目指す未来に繋がるように。
そう、願いを込めて。
「立ち上がれ」
最後にそう書き足して、意識を手放した。
今日はステンドグラスが広がっていた。
キラキラと太陽の光を吸うそれは、どうやら教会のものらしい。
何となく目で追っていけば、十字架の上に座る人物が目に入る。
「何しとんの、しんぺい神。」
名前を呼べば、彼はゆるゆるとこちらを向く。
sn「何ってそりゃ世界を見てるんだよ、オスマン。」
この男、神を自称する医者である。
真昼間から十字架の上で酒を飲む人間が神とは、世界も随分と腐ったらしい。
「往診行くで。」
sn「はいはぁい。」
ひらりと飛び降りるその様は、まあ神と信じられなくもないけれど。
道中強い力に押されて、泥沼に落ちる。
憎悪の目を向けた村人が見えた。
こんなものは慣れっこで、痛む心すら持ち合わせない。
sn「大丈夫?怪我してない?」
自分とは正反対に、優しく声をかけてくれたしんぺい神は村人から尊敬の念を向けられる。
こうなったのは全て、数年前の疫病のせいである。
あの時、ただ祈ることしか出来なかった無力な自分。
その対になるように、疫病を終息させたしんぺい神。
どこまでも比較されているようで、あまりにも不快だった。
「触らんでや。」
優しさを突っぱねた自分に、落胆した。
積み上げられた本を一つ一つ拾い上げる。
どれも疫病の話ばかりだ。
対処法、隔離法、治療法。
その全てを完璧に網羅してしまうほどの資料の数々。
それは紛れもない彼の努力の証だ。
新しい紙に、足りないものを補う。
彼が次こそ村人を救って、その優しい心を自責の念で傷つけぬように。
歩み寄るため背中を押す、小さな力になれるように。
「思い詰めすぎるな」
最後にそう書き足し、意識を手放した。
今日は森林が広がっていた。
ワクワクと胸踊る感覚に呼応して、忙しなく動き回る。
やがて草木をかき分ける音が近づいて、きっちりとした服に身を包んだ男がやってきた。
「エーミール!待っとったで!はよ、はよ、続きやろうや!」
エーミールはこちらの姿をみとめて、にっこりと微笑んだ。
em「こんにちは、ゾムさん。」
そう言うと、切り株に腰かける。
これでもかという程手に抱えた本を一つ一つ見せながら紹介される。
「それがええ!それ!それにしよ!」
選んだのは、戦術に関する本。
難しいが、一生懸命理解しようとする。
エーミールの説明は丁寧かつ簡潔で、分かりやすかった。
「かえってまうん……?」
日も暮れかけた頃、エーミールは帰り支度を始める。
その背中を見て、寂しげに呟いた。
em「また明日も来ます。それとも着いてきますか?」
首を横に振る。
繋がれた首輪は、誰かのモノである証。
エーミールの背中が見えなくなる頃には主人がやってきて、仕事に駆り出される。
逃げる勇気は出なかった。
周囲に誰もいないことを確認する。
小さな木の棒を持ってきて、真新しい戦術を地面に書き連ねる。
彼は、喜ぶだろうか。
もしかしたら警戒されるかもしれないが。
それでも、これが彼の手を引けたなら。
恐れという首輪を引きちぎる勇気になったら。
この上なく素晴らしいだろう。
「解き放たれろ」
書き足した文字を最後に意識を手放した。
今日は月明かりの照る閑静な街だった。
ひと仕事終わらせた目の前の彼に声をかける。
「グルッペン、これで最後?」
gr「そうだな、帰ろうかシャオロン。」
血を吸って重くなった服。
疲労で若干覚束無い足を引き摺るように歩く。
家に帰ってシャワーを浴びて、それから食堂に向かう。
そこにはさほど量が多すぎない程度の料理と、椅子に座るグルッペンの姿があった。
gr「それじゃあ食べよう。」
「いただきまーす!」
食事は直ぐに終わった。
一見足りなさそうな食事だが、身体は腹八分目を訴えていた。
席を立とうとしたところを呼び止められる。
gr「そうだ、シャオロン。」
「なんや?」
gr「明日、桃源郷にでも行こう。」
「ほんまに言うとんの、それ。」
gr「ああ、準備が整ったからな。」
「ほんまか!やっと……やっとや……!やっと助けられるんやな!?俺の、俺らの……!」
gr「ああ。」
脳裏に浮かぶ、同郷の友。
彼が牢獄に閉じ込められた日、絶望と悲嘆に暮れて座り込んでいたところをグルッペンに拾われた。
gr「事情はわかった、力を貸してやる。」
「!?そう簡単に行けるものじゃないんやぞ!健常者と判断されれば入ることは叶わないし、あいつは……ロボロは鬼やって言われて閉じ込められて……誰も出てこれないって言われてる、あんな汚い所に……1人でッ……!!」
gr「分かっている、だから時間を要する。よく聞け。俺の友達も昔、同じように鬼だからと閉じ込められた。俺もお前と同じ境遇にいる。」
それは衝撃だった。
「……何か算段があるん?」
gr「ああ、まだ時間はかかるが。」
「なら、着いていく。」
gr「そうか。ならばギブアンドテイクとして、俺の用心棒になってもらいたい。」
「腕っ節には自信あるねん。かまへんよ。」
gr「心強いな。ではよろしく頼む、俺はグルッペンだ。」
「シャオロンや。」
そうして、握手をしたのだ。
来る明日に思いを馳せ、眠りについた。
音を立てないよう静かに歩く。
先程彼らがいじっていた支度の中に足りないもの。
それを紙に書いて、そっと荷物の横に添える。
念入りに念入りに、確認をする。
過保護かもしれない。
でも「知って」いるから確認する。
最後に彼らの勇気へ。
その足元を救われぬよう、警告も込めて。
「不条理と戦え」
リストにそう書き足し、意識を手放した。
今日は桃源郷だった。
隣にいる彼に声をかける。
「ロボロ、朝だよ。」
rb「ひとらん……」
まだ眠そうに目を擦るのを見て、仕方ないなと微笑む。
どうせ退屈だし、もう少しくらい寝ていてもいいだろう。
まだ起きていた聴覚が、微かな音を拾う。
激しい爆発の音。
更には誰かの苦しむ声。
分からない、という恐怖に襲われる。
ロボロを守らなければ。
段々と近づいてくる音。
やがて入ってきた人物を警戒する前に、誰よりも早く声を発したのはロボロだった。
rb「シャオロン……!?」
sha「みっ……みつけた!!グルッペン!」
侵入者であろう彼が呼んだのは、これまた聞き覚えのある名前。
続いて入ってきたのは、旧友だった。
gr「……ひさしぶり。」
ぎこちなく震える、低くなった声。
「……よぉ、デカくなったな。」
何を話せばいいか分からない。
でもこの空間は、何年も得られなかった安堵をくれた。
そのせいか安心と共に意識を手放した。
暖かく心地のいいベッドから出る。
きっと今の彼には、友達と仲直りする方法が分からないから。
つらつらとお節介を書き連ねた。
進むために、留まるために。
「もう一度仲良くなれるといいですね」
飾らない言葉が零れる。
直そうとしたものの、意識はもう保たれなかった。
今日は大海原だった。
目的のない船旅は、心落ち着くものだった。
「鬱大先生。」
名前を呼べば、目の前の男が振り向く。
ut「なあに、兄さん。」
その青い瞳は、海を映していた。
「次の獲物は。」
ut「海が教えてくれとる。」
「じゃあ行こう。」
希望に満ち溢れた気持ちだった。
しかし決して大量の宝には心を奪われなかった。
海だけが、波に乗せて安寧を運ぶ。
陸の物は退屈しか運ばない。
だから必要ないし、売って金にしてしまうのが得策だ。
ut「兄さん、これ売りに行く?」
どうやら彼も同じ気持ちらしい。
正直めんどくさいが、あっても仕方ないし行くしかないだろう。
いつの間にか囲まれ、無数の銃を突きつけられる。
金目のものにしかない汚い貴族は、それを奪う海賊を敵視していた。
いつもなら相手にするまでもないが、あろうことか彼らは海を吸ったような鬱の容姿をバカにした。
ああ本当に、陸には碌なモノがない。
「……お前らおもんないわ。」
もの言わぬ屍は、海に投げた。
鬱は始終何も言わなかったが、こちらがかける言葉も見当たらなかった。
水面が月を写して凪いだ頃。
友を思う彼に言葉を残せるものはないかと、船内を探し回り甲板に出る。
目の前には鬱が立っていた。
ut「どうしたん兄さん、眠れへんの?」
「鬱先生……そうなんよ、だから夜風に当たろうかと。」
そう答えると、鬱はじっとこちらを見た。
ut「……ねえ、だれ?」
予想外の言葉に、息が止まったような心地がする。
ut「今日ずっと僕たちの間にいた、キミは、誰?」
糾弾するように荒げられた訳では無い、まるでさざ波のような問いかけの声。
思考を飛ばしている暇はなく、兎にも角にも答えなければいけない。
「……旅人。」
ut「君はどうしてここに?」
「気づいたら。」
ut「なんのために?」
「わからない。」
ut「そう……で、今は何しとったん?」
「コトバを……コトバを、届けないと。」
ut「コトバ?」
?
なんで?
届きはしない。
届かない?
書かなければ。
書いている?
本当に?
何を考えていた?
分からない。
分からないはずがない。
コトバを。
助けなければ。
旅の目的を。
目的?
目的のない旅。
本当に?
旅なのか?
それでも。
でも?
紡がなければ。
紡ぐ?
言葉を?
あるのは文字。
文字?
これは文字か。
なぜ文字を?
正義感?
義務?
おかしい。
おかしくなんてない。
言いきれない?
否、否。
私は。
彼は。
彼らは?
何者か。
そこにあるのは。
生か。
死か?
真実か。
虚像か?
妄想ではないか?
現実だろう。
本当に?
聞こえているか?
感じているか?
見えているか?
訴えているか?
キミの情感に。
問え。
答えは?
分からない。
止まらない。
止められない?
險?闡峨r螻翫¢縺ェ縺代l縺ー縺ェ繧峨↑縺?◎繧後?豎コ縺励※隱ー縺ョ縺溘a縺ァ繧ゅ↑縺丞スシ繧峨?縺溘a縺ァ縺吶i繧ゅ↑縺上◆縺?閾ェ蛻??縺溘a縺ォ閾ェ蛻??貅?雜ウ縺ョ縺溘a縺ォ謠コ繧峨′縺ェ縺?枚蟄怜?繧剃ス懊i縺ェ縺代l縺ー縺ェ繧峨↑縺?ァ√′蠖シ繧峨r菴懊i縺ェ縺代l縺ー蠖シ繧峨r蠖シ繧峨◆繧峨@繧√k蟄伜惠縺悟ア?↑縺上↑繧後?荳也阜縺ョ蝮?。。繧貞ョ医i縺ェ縺代l縺ー蠖シ繧峨r蠖シ繧峨r蠖シ繧峨r蠖シ繧峨r蠖シ繧峨r蠖シ繧峨r蠖シ繧峨r蠖シ繧峨r蠖シ繧峨r蠖シ繧峨r蠖シ繧峨r蠖シ繧峨r蠖シ繧峨r蠖シ繧峨r蠖シ繧峨r蛻昴a縺ッ縺九l繧峨?縺溘a縺?縺」縺溘?縺壹◎繧後↑縺ョ縺ォ縺?▽縺ョ髢薙↓縺句スシ繧峨r閠?∴繧九%縺ィ繧貞ソ倥l閾ェ蛻??縺溘a閾ェ蛻?↓驛ス蜷医?縺?>蠖シ繧峨r菴懊j邯壹¢繧区?縺九↑莠コ髢薙〒縺吶i縺ェ縺?ス輔°縺ォ遘√?隱ー縺?繧阪≧縺倶ス戊??↑縺ョ縺?繧阪≧縺狗衍繧狗罰繧ゅ↑縺?ェー縺区蕗縺医※縺上l隱ー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺玖ェー縺遘√?蠖シ繧峨?閼ウ縺ァ縺ゅ▲縺溘?縺壹□縺?縺九i諤晁??r豁「繧√※縺ッ縺ェ繧峨↑縺?サ頑律繧よ?譌・繧ゅ>縺、縺セ縺ァ繧ょスシ繧峨?縺溘a縺ォ閠?∴縺ェ縺代l縺ー縺ェ繧峨↑縺?>縺、縺?°縺ェ繧区凾繧ょスシ繧峨r謨代∴繧九h縺?↓
「起きてぇや、エミさん……」
泣きそうな声が。
何かが頬を伝う感触が。
大好きな黄緑色が。
微かな血と硝煙の匂いが。
甘い甘いチョコレートの味が。
ただ、ぼんやりと。
ふわふわと。
思考の端で。
ああ、心地よい。
言葉は今日も届かない。
眠っているのか起きているのかも分からない。
ゾムはそっと目の前に座る彼の手を握る。
もう何ヶ月も、こんなことが続いている。
それでも諦めきれはしなかった。
ある日はトントンが来て、戦車の構造について意見が欲しいと語った。
その横でチーノは、今日はカレーだと嬉しそうにした。
またある日はコネシマが来て、自分の統治論を語った。
その横でショッピが、コネシマに下剤を盛ろうと企んでいた。
その次の日はオスマンが来て、最近疫病が流行っているから助言が欲しいと頼んだ。
その横でエーミールへの問診を終わらせたしんぺい神が、ただひたすらにその疫病の薬の改良を続けていた。
自分は毎日、彼と語り合えないかと戦術を練り続けた。
いつか彼が、何か小さな一言でも、助言をくれるのでは無いかと、そんな淡い期待を抱えていた。
とある日にシャオロンが来て、グルッペンの外交交渉の護衛をするのだと喋った。
ロボロとひとらんが偵察中に攫われたのだ、とも。
自分も助けに行きたかったが、エーミールが心配で動く気にはなれなかった。
その気持ちを察したのか、シャオロンは優しく微笑んで頭を撫でてくれた。
グルッペンも訪ねてきて、しばらく基地を空けてしまって申し訳ない、なんて呟いてチョコレートと茶葉を置いていった。
数日後には無事助けられたと帰ってきたロボロやひとらんは、宣戦布告の準備をしてくると話していた。
エミさんに作戦立てて欲しいよ、と酷く悲しそうに訴えて、それから申し訳なさそうにこちらを見て、2人とも同じようにゾムの頭を撫でて行った。
ゾム自身も戦争に参加したかったが、基地からは動きたくなかった。
それ故に下された命令は、基地を守ることだった。
考えてくれたグルッペンの優しさに感謝した。
あくる日には兄さんが帰ってきた。
そっとエーミールに手を伸ばし頭を撫でてからたった一言、帰っておいで、と呟いてはまた武器収集の旅に出た。
大先生は来なかった。
でもインカムで、そこは虚像だと訴えかけた。
そこは、お前の妄想だと。
お前は自分の意識に囚われているのだと。
現実はここだと。
何度も、何度も。
そこに仲間はいないと。
変化のない日を過ごしていたのは、エーミールだけだ。
同じ椅子に同じ体制で座ったまま動かない。
彼の自我は、今ここには無いのだろう。
だって話しかけても反応してはくれないから。
しんぺい神の診断では、脳への多大な負荷による意識の混濁らしい。
全く手のかかる相棒だと悲しんだのも懐かしくなるほどの時間が経ってしまった。
zm「なあエミさん、俺思うねん。きっとエーミールの頭の中では色んなこと考えてたんやろなって。いつも能天気にぽやぽやしてるように見えとってんけどな。確か倒れてもうた日も作戦会議しとったやんな?急に通信が入った時、ほんまに焦ったんよ?知らへんやろうけどな。今もなんか考えとるんやろ?難しいこと。ペ神が言うとってんよ、脳波は異常やけどちゃんと動いとるんやねって。……なあ、何考えとるん?難しいことは抱え込まんでええねん。みんなで一緒に考えて、最適解を導き出せば。作戦立案の責任者はエミさんやけど、みんなちゃんと知識を持っとって、みんな生粋の軍人やねん。考えすぎは良くないですよって、エミさん言うとったやん。」
どうにかしたい一心で、あろうことか傍にあったチョコレートをエーミールの口に突っ込む。
これ、ペ神に怒られてまう。
zm「なあ、こんなことして、俺悪い子やんな?ペ神に怒られてまうやんな?庇ってよエミさん、私が食べたんですぅ〜って言うてや。なあ、せやからさ……起きてぇや、エミさん……」
どうか、届かないだろうか。
なんでもいいから。
ゾム自身の言葉がエーミールに。
意識の波に飲まれた彼を救えないだろうか。
何かも分からず溢れる涙を拭ってはくれないだろうか。
em「おはようございます、ゾムさん。」
そうそう、こんな風に……?
……インカムを、繋ぐ。
zm「だいせんせ〜?」
ut『どないしたん、なんかあったんか!?』
エーミールにインカムを近づける。
em「このチョコ、美味しいですねぇ。」
ut『え、えっ……へ……?』
em「おや、鬱先生の声ですね?」
ut『…………え、ろぼろすん……』
インカムの向こうで、大先生の情けない声とよく通るロボロの声が入れ替わる。
rb『ゾム、代わったけどどうしたん?』
em「今度はロボロさんですか。」
rb『…………そうやで、随分長く寝とったみたいやけど。』
em「そうですねぇ、随分と長い夢を見ていました。」
rb『で?おはようの挨拶も無しに何しとるん?』
em「いかんチョコ食べとって忘れてた。ロボロさん、おはよう。」
rb『……(´Д`)ハァ…おはよう……さてとぉ……?』
直後、響き渡る館内放送。
スピーカーから聞こえてくるのは、ロボロの声だ。
【幹部諸君、至急会議室に集合せよ。】
きっとエーミールにとっては懐かしい暖かな景色が、自分たちに足りなかった冷たい空白を埋めて、包み込むように広がった。
サラサラと流れるように動くペンの音。
書き終えたのか、エーミールはパタンと本を閉じた。
自分たちが救われる夢のような小説を創る、それがエーミールの生き甲斐だ。
「この小説は私の脳だ。ここなら彼らは私の意のまま、そして全てが彼らの思い通り。」
神にでもなったような愉悦。
さて、今日はどんな幸せを描こうか。
【あとがき】
まあつまり、二次創作の意義ってそんなもんだよねって話です。
あ、どうも語り部です。
こんな所に後書きをコンニチハしたのには理由がありましてですね。
フォローしてくださっている方の人数が100を超えたと。
感謝感激雨あられチョベリグって感じなんです。
本当にありがとうございます。
僕のような平凡レベル1億の人間の小説に100人以上もの方が前向きな評価をしてくださったと。
感謝してもしきれぬ程でございます。
もちろん私自身が気に入る話を書いているわけでして、この小説のエーミールさんのようにね。
そう、問題はここなのですよ。
要するに、ご本人様方のキャラクターを元に僕の考えを書かせていただいてる訳でございます。
その意義を問いたくてこの小説を書きました。
どんなに彼らの皮を上手に被っても所詮は僕な訳でございます。
それでも、その僕のイメージに共感してくださる、または少しでもいい小説だと思ってくれる方がいることをとても嬉しく思っています。
これからも全身全霊で、大好きな彼らが生き生きとしている小説を書きたい所存でございます。
もちろん、コメント欄にリクエストを頂ければそちらを元に書かせて頂こうと思っていますので、遠慮なく送っていただけると嬉しいです。
おっと、あまり長話しては嫌われてしまいますね。
それでは、読んでくださったあなたに最高の感謝と敬意を込めて。
語り部




















