(自宅で仕事をする彼、朝から自室に籠り中)
(職場の同僚と通話しながら仕事を進める)
…うん…
……、
…ああ、それでいい
さっき確認した通り進めて
先方には俺の方から伝えておく
…うん…
だからあと、そっちの作業で
遅れてるものがあれば俺、が…
…?
…はあ…
……、
…チッ…
悪い、ちょっと待ってて…
(本日何度目か、部屋の扉がノックされる)
(忙しい所為もあり苛々が募っていく彼)
(通話をミュートにし、盛大な溜息をつく)
(「…ねえ…」とおずおずと声を掛ける彼女)
…なに…
今度は何の用
……、
……、
…なあさっきから何なの、
用あるなら早くして
今取り込み中って見て分からない?
……、
……、
…はあ、またそうやって…
あのさ、頼むから
同じこと何回も言わせないで
そうやって話すの途中でやめるなら
最初から話しかけないで
…俺普段からも言ってるよな?
仕事中は部屋に入って来ないでって
しかも今朝、お前に伝えたよな?
今予定詰まってて余裕ないって
(苛々する彼に気圧され、上手く伝えられな彼女)
(苦しそうな声で「で、でも…」と口籠る)
(効率の悪い彼女に更に苛々が募っていく彼)
…でも、なに
寂しいから?構って欲しいから?
ちょっとくらい
仕事の邪魔してもいいじゃんって?
……、
じゃあ何なんだよ
さっきから何回も何回も部屋に来て、
何かと思えば
「やっぱり何でもない」とか口籠って…
……、
…なあ…
分かんない?お前がこうやって来る度に
仕事が止まるんだよ
お前の所為で
色んな人に迷惑かかってんの
……、
…はあ…
…お前だって社会人だろ、
いちいちこんな事言わせるなよ
……、
……、
…分かったら出てってくれ、
時間が勿体ない
(冷たく吐き捨てる彼、彼女を無視して仕事再開)
(つらそうな表情で、無言のまま扉を閉める彼女)
(扉が閉まる音に溜息をつく彼、通話も再開)
…はあ…
……、
……、
…悪い、待たせた…
えっと…
さっき何の話してたんだっけ
…いや、ちょっと邪魔が入っただけ
もう大丈夫
悪いな、何度も中断させて
…ああ、
どこまで話したんだっけ
……、
…うん…
じゃあ、その作業は
そっちに任せていいんだな?
了解、ヤバくなったら教えて
俺も手伝うから
…?
…ああ、はいはい
仕事も程々にだろ
言われなくても分かってるって
…ん、じゃあ
また夕方頃連絡するから
あとは頼んだ
……、
(彼の性格を分かっている同僚、釘を刺す)
(通話を終えた彼、同僚の言葉にまた溜息)
(彼女に当たってしまったことを後悔)
…はああ…
……、
……、
…程々に、ねえ…
……、
…はあ、何してんだろ俺…
あいつに当たって、
余裕なさすぎるだろ…
……、
……、
…根詰め過ぎたかな…
……、
……、
…はあ、休憩しよう…
……、
…あいつにも謝らないと…
(一度休憩を挟むため、部屋を出る彼)
(直後、足元に彼女が座っていてびっくり)
(膝を抱えた状態で壁に凭れて座っていた彼女)
っ…びっ、くりした…
……、
…え、何してんのお前…
……、
ねえ、何で床に座ってんの
しかもそんな膝に顔埋めて…
……、
…聞いてる?
……、
……、
…なあ、怒ってる?
さっき俺が言ったこと
……、
…その…
ごめん、ちょっと根詰め過ぎたというか…
仕事で苛々してお前にも当たってた
…邪魔だとか、迷惑だとか…
傷付けたと思うし、
たくさん嫌な思いさせたと思う
…本当にごめん…
……、
……、
…ねえ、顔上げてよ
俺に何か用あったんじゃないの?
さっき何聞こうとしてたの?
今それ教えてよ
……、
…?
(自分も床にしゃがみ、彼女に話しかける彼)
(抱えた膝に顔を埋めたままの彼女)
(何の反応もなく、時折ひどく咳き込む様子)
(それ気付く彼、心配で声を掛ける)
…ねえお前、大丈夫?
すごい咳き込んでるけど…
もしかして体調悪い?
……、
…なあ…
俺の声聞こえてる?
返事できる?
……、
……、
…?
…なに、この音…
(彼女の呼吸音が可笑しいことに気付く彼)
(よく聞けばヒューヒューゼーゼー苦しそう)
(喘息発作を起こしていた彼女に焦る彼)
(膝をぎゅっと抱えたまま息苦しさに耐える彼女)
…え、待って…
なにその呼吸の音、
すごいゼーゼーいってるじゃん
もしかして、喘息?
……、
…なあ顔上げられる?
吸入は?まだこれから?
……、
っ…頼む、喋るのつらいなら
一旦顔上げてくれないか
そんな俯いてたら余計に苦しいだろ
ほら、ゆっくりでいいから…
……、
っ…ぇ…
…なんで、泣いて…
…は?
(苦しそうにゆっくり顔を上げた彼女)
(「…な、い…」と泣きながらゼーゼー)
(泣いている理由が分からず混乱する彼)
(困惑しながらも彼女に声を掛け続ける)
…ない…?
ないってどういうこと、
まだ吸入してないってこと?
……、
…は?
無かったの?吸入器?
いや、いつもの場所に入ってるだろ
どこ探したんだよお前
……、
っ…分かった、分かったから
泣くのはちょっと待って
余計に苦しくなるから我慢して、
今吸入器取って来るから…
(吸入器が見付からず苦しんでいた彼女)
(ギャン泣きしそうな彼女を制止させる彼)
(声を掛けながら吸入器を取って戻って来る)
…えっと…
ぁ…なんだよ、あるじゃん…
…?
っあ、待てって
泣くな泣くな…
ほら、持ってきたから
泣く前に吸入するぞ
…はい、手動かせるか?
(彼女に寄り添い、吸入器を持たせる彼)
(苦しい所為か力が入らず焦る彼女)
(見兼ねた彼、一緒に支えてあげる)
大丈夫、一緒に持ってるから…
焦らなくていい
…いい?
一旦呼吸、落ち着けて
…そうそう…
全部息吐き出して…
……、
…はい、吸って…
……、
…1、2、3…
…ゆっくり吐き出して…
……、
…そうそう…
……、
…よし…
口すすぐのは後にしような、
一旦落ち着くまでじっとしてよ
少しずつ楽になると思うから…
…はあ、焦った…
こんな酷い喘息、久しぶりだな
…?
…お礼はいいから、
とりあえずその顔拭かせてくれ
涙の跡すごいから
ったく、いつから泣いてたんだよ…
ほら、こっち見てて
(まだ苦しそうな呼吸を繰り返す彼女)
(彼女の頬に残る泣き跡を拭いてあげる彼)
(そのまま優しく声を掛ける)
…ねえ…
いつから出てたの、喘息
突然調子が悪くなった訳じゃないよな
…は?昨日?
昨日の夜から可笑しかったの?
…全然気づかなかった…
…でもじゃあ何で、
もっと早くに薬使わなかったんだよ
あれだけヒューヒューゼーゼーいって
咳も出てたら、相当苦しかっただろ
(「…見付からなかった…」と小さく呟く彼女)
(その言葉になんでやねんってなる彼、溜息)
はあ?
見付からなかったって、お前なあ…
いつもの場所に入ってたぞ、
あの引き出しの中に
…嘘ついてどうするんだよ、
普通に入ってたよ
……、
…は?お前いつの話してんの
今度からこっちに閉まっておこうって、
自分で場所変えてただろ
忘れたのか?
……、
…っはあ、もう…
大事なものなんだから
ちゃんと覚えておけよ、馬鹿…
…?
…俺は何も凄くないよ、
お前がただ抜けてるだけの話
薬の場所くらい、把握してる
お前に何かあった時にすぐ動けるように、
ちゃんと確認してあるだけ
全然凄くないよ
……、
……、
…ていうか…
場所分からなかったら聞けよ俺に、
手遅れになったらどうするんだよ
(彼女が心配でちょっと怒ってしまう彼)
(「…聞きに行ったよ…」とばつが悪そうな彼女)
…は?いつ聞きに来た?
だってお前ずっと向こうにいたじゃん
聞かれた記憶なんて無かっ、た…
……、
…ぁ…
……、
…もしかして…
俺の部屋に何回も入って来てたのって…
吸入器の場所、聞くため?
……、
っ…はああ…
……、
…そういうことかよ、
だからあんな頻繁に来てたのか
本当にごめん、
ろくに話も聞かないで追い返して…
お前がつらそうにしてたのも
全然気付けなかった…
ごめんな、苦しかったろ
…?
…何で?
なんでお前も謝るの
(仕事の邪魔をしてしまった彼女)
(素直に聞けなかったからと小さく謝罪)
(彼女の言動に納得する彼、つい笑ってしまう)
聞けなかったからって、なに
どういうこと?
……、
っは、そういうこと…
吸入器の場所が分かってないの、
俺にバレて怒られるの嫌だったから…
素直に聞けなくてごめんなさいってことね
なるほど、
だからあんなに口籠ってたのか
…ん?ていうことはお前…
今日初めて場所知ったってことは
吸入、ずっとサボってたな?
……、
…はあ、馬鹿…
症状が出なくなっても、
続けて下さいって言われてるだろ…
もう場所分かったんだから、
今日からちゃんと毎日続けろよ
いいな?
……、
…まあ、とりあえず…
お前が無事で良かったよ、
本当に
手遅れにならなくて良かった
……、
…ん?なに
(落ち着いてきた彼女の様子に安心する彼)
(そっと彼女の頭を撫でる)
(ずっと傍にいてくれる彼を疑問に思う彼女)
(「仕事いいの…?」と小さく呟く)
…仕事…?
あ、忘れてた…
俺仕事中だったんだ
……、
…でも、まあ…
いいよ、休憩したくて
部屋から出て来たところだったから
もう少しお前の傍にいる、
体調も心配だし…
ていうかどう?
体調、さっきと比べて
…ん、そっか
咳も治まってきたみたいで良かった
……、
…じゃあ…
立てそう?
落ち着いたなら口すすぎに行こう
で、こんな床じゃなくて
ちゃんとソファかベッドに行って休むぞ
…うん、手貸して
一緒に行く
いい?せーのっ
(彼女の手を取り、部屋を移動する二人)
(そこで改めて彼女に「ごめんなさい」する彼)
(彼女も「ごめんなさい」して仲直り)


















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