コレクション機能トライアルですが、漫画・小説・イラスト横断には便利かもですねコレ
ドレスデンに赴任してひと月と少しが過ぎた。 ヴァイスマン姉弟――特になかなか心底を見せない弟との距離があの例の悪戯返しで縮まって以来、昼はもちろん、夕食の席にも誘われるようになった。 フロイライン・ドクトールの手料理と円やかな赤ワインのもてなしを受け、得難い機会に都度感謝をする。 異国での「奇跡」の「石盤」の解析という誰も予測できない任務といったこともあり、完了までの期間は一定程度の困難が伴うことを想像していた。 だが、肝心の石盤を脇に置けば、今のところこの姉弟の存在によって良い意味で裏切られている。 豊富な知識に基づいて交わされる彼らの会話に学ぶことが多いのはさることながら、何より二人の心持ちや態度に信用できるものがあった。 欧州でのありがちな東洋人への差別的な視線を感じないどころか、敬意を示して歓迎をしてく…
「ドイツ人2名の査証と入国許可?…この時期に穏やかではないな」 1945年2月13日夜、國常路大覚はベルリンにある在独日本大使館にいた。 ドレスデンでの研究に日本側からの応援として任務の身にあり、月例での定期的な報告は命じられている。所管の親衛隊全国指導者の事務局からの帰り、自国大使館への立ち寄りも定期的な事柄の一つだった。 報告の可能な範囲での研究の経過を済ませたあと、徐に「個人的な相談」として大使へ切り出したのである。 「は…」 「よもやのんびり物見遊山でもあるまい?何が目的かね?」 「申し訳ありません…我が国で産業のために貢献できると思うので有能な研究者を引き抜きたいというのが本意です。技術指導のための長期滞在許可を都合していただけないでしょうか」 詫びながらも國常路は図々しく告げた。理由について半分は嘘…
「――相変わらず寝坊助だな、貴様は」 「…中尉は変わらないね」 口調だけは呆れるように告げた、七〇年来の友人の口振りを耳にし、深く安堵する。 数秒は掛かったものの皺が刻まれ貫禄を増した中尉―國常路大覚の顔を見て、「今」が置かれている最新の状況であることを理解した。 先の爆破から再建されたと思しきヒンメルライヒ号の寝室の、見覚えのある天井。 「拾ってくれたんだね、ありがとう」 「元の身体ではないのがよく理解できないところだがな」 脇の椅子に腰掛け、口元に微かに笑みを浮かべつつ、不思議そうな表情を見せる旧友。 上体を起こし、部屋の脇の鏡へやや遠いながらも目をやる。アドルフ・K・ヴァイスマンの魂のまま、見知らぬ少年の身体に収まっている《伊佐那社》の自分が見える。体内に取り込んだ無色の王は赤の王の力で消滅し得たものの、…