
第二十三話「教えて、じゅん先生」に添えるコメント
カクヨム https://kakuyomu.jp/works/2912051595878461008 小説家になろう https://ncode.syosetu.com/n5101ma/ 【案内人・葛城二華より】 第23話をお届けいたします。 前回の夜の廊下から、少し季節が進みます。中間試験が近づいてまいりました。 朝霧家のダイニングには、年に五回、試験の前になると教科書が並びます。三年前、じゅんさんが夏凪さんに「勉強、見ようか」と声をかけたのが始まりだそうです。翌日には二人、翌々日には六人になり——今ではこの家の暦に刻まれた行事になっております。 今回、新しい人物は登場いたしません。じゅんさんと、六人の姉妹だけの、ダイニングテーブル一つの物語です。 本日は、ゲストをお呼びしております。あの食卓の温度を、誰よりも近い場所から想像できる方——二凛さんです。 【美琴二凛より】 ……お久しぶりです。美琴二凛です。 第20話以来でございますね。今日は、ゲストとしてお声がけいただきました。 第23話は、じゅんが先生になる回です。 ……私、知っているんです。じゅんが誰かにものを教えるとき、声が少しだけ変わること。普段より、ほんの少しだけ、ゆっくりになります。相手の手元を見て、どこで止まっているかを探してから、言葉を選ぶんです。事務所でお仕事の話をなさるときとは、違う声です。 ダイニングに教科書が六冊並んでいる光景を、私は見たことがありません。でも、聞こえてくるようです。陽花さんの「わかんない」と、じゅんの「どれどれ」が。 一つだけ、お伝えしたいことがあります。 あの食卓には、試験が関係のない方も座っていらっしゃるそうです。教科書を開いている方も、閉じたまま置いている方も、端の椅子で別のものを広げている方もいらっしゃる。——みなさん、理由は、それぞれ違って、けれど、きっと同じです。 私がその席にいたら、たぶん、何も広げずに、じゅんの声だけ聞いていると思います。……あ、いえ、それでは勉強会になりませんね。失礼いたしました。 【案内人・葛城二華より】 二凛さん、ありがとうございます。 「理由はそれぞれ違って、けれど同じ」——二凛さんのこの言葉は、第23話をお読みいただければ、おそらく、どなたのことを指しているか、おわかりになるかと存じます。 補足を一つ。 勉強会には、始まりがあって、終わりがございます。教科書が閉じられて、深雪さんの包丁の音が聞こえ始めて、姉妹たちが席を立つ。——けれど、全員が立ち去ったあとの食卓にも、物語はございます。 じゅんさんは、二つの言葉を、二人の方に、別々の温度でお渡しになります。片方は「これからも」。もう片方は「次」。どちらも短い言葉ですが、受け取った方の表情は、きっと長く残ります。 中間試験前の、ある夕方を、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

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